【読書会】宮本輝『流転の海』全巻読書会(12)~第2部『地の星』第6章
こんにちは。
先週は、一回「番外編」として、2007年頃の宮本輝さんへのロング・インタビューをご紹介しました。今回から、平常のペースでの運営に戻します。よろしくお願いいたします。
第6章の概略
政夫とタネのためのダンスホールが2か月で完成した。その間、熊吾はほとんど家にはおらず、和田茂十の選挙戦の指揮を執っていた。
熊吾に再び暴力を振るわれた日、房江は本気で別れようと決意して酒をあおった。
伊佐男が訪ねてきて、茂十が余命いくばくもないことを告げる。
房江は、ここが安住の地ではないとの思いを抱くようになる。
政夫が転落死。
第6章の個人的ポイント
酒に酔っている心で思い起こすと、別段たいしたことのない人間の営みにすぎないと思えるのだった(p.294)
私は夫が、じつのところ、とても焦っていることを知っている(p.302)
自分のやったことは忘れて、されたことばっかり根に持っちょる。ウマちゃんもそうやった(p.306)
ふいに、ここは自分たちの安住の地ではないという思いを抱いた(略)一日も早く神戸の御影に戻ろうという気持ちになった(p.320)
ひょっとしたら、本当の私は、親分肌で、わがままで、賑やかなことが好きな剽軽者ではないのだろうか(略)夫よりも先に酔ってやろう。酔えば、私は楽しくなり、本来の私らしさを飾らずに出せるかもしれない(p.326-27)
生きててもらいたいやつにかぎって早死にしよる。こんなやつは早よう死ぬほうが世のため人のためやっちゅうやつは長生きしよる。どういうわけかのう(p.328)
いっぺんこわれたもんを組み立て直すのは、新しく作るよりも骨が折れるもんなんじゃ(p.331)
この、いかさま師・・・。房江は夫の横顔を見て、胸の内でそうつぶやいた。どうしてとっさに、このような策略を思いつけるのであろう・・・(p.340)
わしは死んでも松坂熊吾じゃ。戒名なんか絶対つけるな。あんなの坊主の商売じゃけん(p.341)
不運は不運として乗り越えていかにゃあいけんぞ(p.342)
夫は本当のことを言っていると思った。珍しく、本当のことを言っている、と。この善意の人を、私は好きだ、と。いかさま師だが、善意のかたまりの人を好きだ、と(p342-343)
私は夫に勝ったと思った。そして、また思った。政夫は政夫らしく死に、タネはタネらしく残された、と(p.343)
それを幸福と言わずして何と言おう。三十年後・・・。なぜか、房江のなかで三十年後という数字が浮かんだ。三十年後に、この唐沢家に来てみせる(略)房江が、遠い未来に為すべきことを心に描いたりしたのは、遠い未来に、たとえささやかではあってもひとつの目標のようなものを定めたりしたのは、生まれて初めてであった(p.354)
閉会後の追記
※後日、余力があれば追記いたします。
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今回は以上といたします。お読みくださいまして、ありがとうございました。それではまた!
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