【読書会】宮本輝『流転の海』第3部『血脈の火』最終章を読む。
こんにちは。
今夜(23/04/10 20:30~)の読書会からは、「会場」をDiscordサーバに移して開催いたします。初参加となる方については、お手数ですが、Twitterアカウントの @Showji_S までご連絡くださるようお願い申し上げます。折り返し、参加方法等をご案内いたします。
さて、今回でようやく全体(=9部)の3分の1が終わります。つまり、第3部の最終第8章と解説(p.467~561)を今日は読んでまいります。以下に、読書の参考となる「レジュメ」をご用意しましたので、ご参照くださるとうれしいです。なお、回の様子は録音して、新しいnoteとして公開もいたしますので、そちらをお聞きいただいてもよろしいかと存じます。
1)主要登場人物
松坂熊吾 本編の主人公。自動車の部品の輸出入で戦前に財を成すが、出征により事業は壊滅。生還し、50にして初めての実子・伸仁を授かる。妻子の健康のため、一時故郷の南宇和に戻るが、再び大阪での事業に着手する。
松坂伸仁 熊吾の長子。作者の幼少期がモデルとなっている。病弱で、授業には集中せず、苦言を呈されているが、市井の人びとには好かれている。
杉野のおっちゃん(信哉) 元警察官。退職後に、熊吾の事業のパートナーとなるが、官僚的な性向が災いしている。洞爺丸台風で、事業が窮地に立っている。
内村 鍼灸師。伸仁の夜尿症癖を治療する。
タクシーの運転手 熊吾親子が乗り込んだタクシーの運転手。おしゃべりが過ぎて不興を買ってしまう。
松坂房江 熊吾の妻、伸仁の母。幸福とは言えない幼少期を過ごすが、聡明な女性。熊吾の嫉妬心に発する暴力を受け、アルコールに手を出すようになってしまう。
西条あけみ OSミュージックのストリップ女優で、伸仁のお気に入り。
警察の人 私服刑事。熊吾の営む麻雀荘「ジャンクマ」が、港湾労働者の傷害事件の温床と睨んでいる。
青木照三 近江丸の船長。やさしい男であるが、猜疑心が強く、酒が入ると妻に暴力を振るう。それが元となって・・・。
呉明華 熊吾の営む中華料理店のコック長。
りょうちゃん 青木の末子。
近江丸の女房 青木の妻。当巻最大の事件を起こしてしまう。
くに子ちゃん・さとしちゃん 青木夫妻の子どもたち。
観音寺のケン 伸仁がなついてしまった若いヤクザ者。近江丸の件の事情に詳しい。
呉芳梅 明華の娘で、伸仁の「ラブレター」の相手。
大男 前章で小柳の住むバラックを素手で破壊した男。
2)あらすじ
昭和29年(1954年)4月、伸仁は小学三年生に成長している。消防用ホースの接着剤のための事務所は、きんつばの工場に改装されていた。伸仁がなついて出入りしていた近江丸が炎上して沈没する。何が起こったのか・・・。
3)主要なポイント
世情の裏にはまやかしがあり、日本の庶民の多くの心は、十年前に終わった戦争から癒されていないが、飢えて死ぬ子供たちがいなくなったことを、やはりありがたく思うべきであろう(p.469)
小学校の三年生にもなって、教養のないやつじゃ(p.471)
漫画よりも面白い本を買うちゃる(略)映画ではあの小説の凄さがわからん。ちゃんと本で読まにゃあいけん(p.472)
このいかにも頼りなさそうなチビは、内面にとてつもなく強靭なものを秘めているのだと思った(p.474)
とんでもない親子だな・・・(p.468)
寝小便なんか、二十歳までもつづくかや。しかし、泥棒癖がついたら、一生治らん(p.501)
真実を語ることが誰のためにもならないことは多いが、だからといって虚偽を行うわけにはいかないのだ(略)「魔がさすという言葉があるが、人間は絶望して疲れると、魔に負ける。魔というやつは、こんにちはと声をかけて玄関から入ってはこんけんのお・・・(p.519)
あんたの目は修羅の目じゃ。修羅っちゅうやつの本性は、強いものには媚びへつらい、弱い者にはえらそうにして、なんやかやといじめて喜ぶんじゃ。それを修羅という(p.525)
男が何もかもを喋りよる(略)そんな男や(p.537)
人間、転げ落ちだしたら、あっというまや。俺らは、そんなやつらを食い物にする稼業なんや(p.538)
世の中の不幸を、おもしろがって喋ったりするやつは紳士じゃあらせん(p.539)
俺のやったことは犯罪だ。大岡裁きを気取った愚かな薄なさけというやつだ(略)あの夜、俺がつまらない入れ知恵さえしなければ、女は時運がやったことを警官に話したであろう。女の心は、それによって、自らの懺悔による幾ばくかの清澄と平穏を得たであろうし、男の本性を知らずに済んだかもしれない・・・(p.541)
自分は、時と所というものから大きく外れてしまったのではないかと思い始めた。いや、自分のやり方そのものが、時流や環境からはじき出されているのではないのか・・・(p.541)
きんつば屋で地道に生きるのが一番じゃ(p.543)
熊吾は、自分が守ってやらなくてはならない人間は多いと思った(p.544)
あの夜、地の底に沈むような絶望が奇跡のような安堵に変わった瞬間、熊吾は橋の上で火焔に照らされている伸仁の目や頬に、他の人間にはない何かを見つけたと思った(略)俺の息子は大切なことを為すために生まれてきたのに違いないと感じたのである。俺は、そんな子供の父親だ、と(p.544)
あんなにしっかり者の女が、またどうしてそんなつまらない男のいいかげんな言葉を真に受けたのであろう・・・(p.550)
そうだ、そうなのだ、要するに、この松坂熊吾という人間は横着なのだ。種を撒いても刈り取ることがない(p.551)
4)追記
※4月11日以降に、追記がされる場合があります。その際には、改めてURLをツイートいたします。
今回の「レジュメ」は、以上といたします。これを持ちまして、第3部『血脈の火』は完結となりました。おつきあいいただきましたことを深謝いたします。次の第4部からも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。ときどき課金設定をしていることがあります。ご検討ください。もし気に入っていただけたら、コメントやサポートをしていただけると喜びます。今後ともよろしくお願い申し上げます。