見出し画像

ジャンプ+で読めるモナコの漫画賞「MAGIC国際マンガコンテスト」の受賞作!

今回はモナコの漫画賞「MAGIC国際マンガコンテスト」の受賞作品についてご紹介します。
以前、X(旧ツイッター)を眺めていたときに知ったこの漫画賞。
受賞作品がジャンプ+で公開されているんですよね。

モナコのマンガ、アニメ、ゲームのイベントMAGIC(Monaco Anime Game International Conferences」)。このイベントで募集している漫画賞が今回紹介する「MAGIC国際マンガコンテスト」です。
2017年から開催されており、残念ながら2024年は中止されたようですが、2023年の第7回までの受賞作品をジャンプ+で読むことができます。審査員にはジャンプで活躍されている漫画家さんや、週刊少年ジャンプやジャンプ+の編集長さんも参加されていたそう。

ということで歴代の受賞作品をみていきます!


▼2023年(第7回)

大賞:Elena Vitagliano(エレナ・ヴィタグリアーノ)『頭蓋骨のミリアム、願いを叶えます』

作者はイタリア出身、イギリス在住。「B4 studio-artist&Creators」という漫画アートスタジオの共同創設者。
イタリア・ナポリにあるファンタネッレ墓地という何千もの頭蓋骨が積み上げられている実際に存在する墓地が舞台。その墓地の管理人をしているミリアムは、墓地を訪れる人々に安置されている頭蓋骨に対してリスペクトの心を養ってもらい、さまよえる魂がやすらぎを得る助けとなるべく、ガイドの仕事をしている。イタリアの死生観が垣間見れて面白い。

準入選:2147(にじゅういち・よんじゅうなな)『ブックヘッド』

平凡な日常をおくっていた会社員がある朝、目覚めると頭が本になっていたという、タイトルそのまんまな不条理マンガ。周囲の人間からは普通に扱われるが、願望が本に書き込まれ実現するという不思議な能力まで手に入れてしまう。そんな主人公がその後にとった行動は…? なんとも不思議なマンガです。

▼2022年(第6回)

大賞:Theodore EKANE(テオドール・エカネ)『WATHALAND ウォッチャランド グランド・マスター誕生』

作者はカメルーンのガルア出身。
人類の最も偉大な発明「パンチ」を発明したホモファイタスが築いた格闘の国ウォッチャランド。日本の鎧風のハイテク技術で闘技場を圧倒する格闘家の前に、国民の嫌われ者が現れる…。王道格闘マンガ。

準入選:Enjelicious(エンジェリシャス)『RE:COILリ コイル』

作者はフィリピン出身。
ザネッティファミリーのドン・レオナルドは、娘の結婚の手紙を受け取った直後、仮面の集団に襲撃される。かろうじて生き残ったが、なんと少年になっていた。しかも警察署で出会ったのは警部となっていた娘のレティシアだった。凸凹親子コンビは仮面の集団の正体を暴くことができるのか。
オノマトペをカタカナで書いており日本MANGAリスペクトがすごい。

特別賞:Loick Ngue(ロイック・エンゲ)作、Kouadio Ahigo(クアディオ・アヒゴ)画『TRUE IKIGAI トゥルーイキガイ』

作者はフランス出身。
無気力に生きる中年男性アキラは、テレビ中継のサッカーの世界試合で高校時代にともにサッカー部だった友人が日本代表として出場しているのを見る。自分との違いに鬱屈としたものを抱えて酔いつぶれてしまうが…。熱血サッカー青春マンガ。

▼2021年(第5回)

大賞:Seldon(セルドン)作、Toan Tran(トアン・トラン)画『IMAGO イマゴ』

作者はフランス出身。
失踪した妻を追う刑事が出会った奇妙な殺人事件。殺されたのはマッドサイエンティスト。殺人犯は彼の娘でテレパシーの人体実験を施されていた。人の心を読む能力で捜査を攪乱させる娘。果たして刑事は事件の真相を解き明かすことができるのか。読み応えのあるミステリー作品。

準入選:優理恵(Valerie Yugay)『Watch out! Magicaa ウォッチアウト! マジカァ』

作者はロシア出身。
魔法の源「マジカァ」が満ち溢れた島。200年に一度のお祭りに湧く街に異変が生じていた。伝説の魔法生物ミスを追う街の記者であるシェオは、不思議な呪文泥棒リンデルが何者かに追われているところに出くわす。魔法の呪文が生き物に具現化されていて、とても可愛い。 

▼2020年(第4回)

大賞:Charles Compain(シャルル・コンパン)『ドリーマーズ』

作者はフランス出身。
ハンディキャップを追った10代の子どもたち100人が集められた夢の国。子どもたちは半数に金を、半数にその金を奪う力が与えられ、観客を楽しませるためのサバイバルゲームがおこなわれていた。そんな悪夢のような世界に招き入れられた双子の姉弟オロールとピーターは…。ピーターが手に入れる0.5秒だけ体の一部を最強にできる能力の表現が面白い。

準入賞:Kine Guiot(キン・ギョ)『トリュフ ピッグ』

作者はフランス出身。
人間の心が放つネガティブな物質「ネガニウム」を見ることができる鼻眼鏡と、ネガニウムに反応する振り子を持った女子高生ルー。3か月前にネガニウムを纏っていた友人アンナが死に、その死の原因を追っていた彼女が出会ったのは、ネガニウムをコントロールできる謎の人物バール。ルーは果たして学校に蔓延するネガニウムの正体を解明することができるのか。タイトルは、トリュフをかぎ分けるブタのようにネガニウムを探しまわる主人公というところからきているんですね…。

▼2019年(第3回)

大賞:TANATACH(タナタツ)、PLAPANG(プラパング)『MARA 異世界の弁護士』

作者はタイ出身。
異世界の訴訟案件のみを取り扱う特殊な法律事務所マーラ。魔界でゴブリン族から無実の罪を吹っ掛けられ訴えられているナーガ族は、弁護士としてマーラ所属の人間ラビに弁護を依頼するが、果たして冤罪を覆すことがはできるのか。モンスターの造形が秀逸です。

準入選:Fabien Ronteix(ファビアン・ロンテ)『GUNTER ガンター』

作者はフランス出身。
悪夢から人々を守るためにエレメントを操り戦うハンター。最強のハンターになることを夢見る少年マロは、ある日、要注意の敵「ロンダ」に出会い片腕を失ってしまう。ハンターの夢を諦めきれないマロが出会ったのは…。マロの師匠筋のおっさん二人がいい感じ。
ファビアン・ロンテはフランスでは、自転車プロロードレーサーのベルナール・イノーの伝記マンガの作画などで知られる漫画家。フランスオリジナルのウェブトゥーン作品を公開しているウェブトゥーンファクトリーではMusketeer Summer Campというフェンシングマンガを配信中。

特別賞受賞作:Charles Compain(シャルル・コンパン)『ぼくらの瞳が同じ色だった頃』

2020年(第4回)に『ドリーマーズ』で大賞を受賞したフランスのシャルル・コンパンの作品。
長い昏睡状態の末に命を落としたホープは、「雲」から人類を危機から救済するためにテレポートと感情移入の力を手に入れた。その代わりこれまでの記憶をすべて失い、役目を終えた時にそれは戻るという約束で。一方、同じように「雲」から地獄行きを宣告されたルナは、彼女を擁護する「積雲」から重力操作の能力を与えられ、その能力で人知れず悪人を裁いていた。絵にかいたようなヒーローと、ダークヒーローとの戦い。感情を試験管に集めて利用するという能力や、よくわからない「雲」の存在、そして予想外のストーリー展開に驚き。

▼2018年(第2回)

大賞:Kim Joanne(キム・ジョアンヌ)『ランタイム』

作者はアメリカ在住。
2050年、エイリアンと接触した一部の人間には特殊能力が開花していた。一方、ニックスホールというすべてを飲み込み消滅させる謎の現象が起きていた。なんか楽し気なバディものに発展しそうなプロローグ的作品。

準入選:Bensaid「Zilo」Leila(ベンサイド「ジロ」レイラ)『ドリームメイカー』

人が「夢」を見ることができなくなった世界、夢を創ることを生業とする人が現れた。ドリーム・メーカーのじいさんのところで、キオは彼の孫という少年アキラと出会う。クオリティ高い。ファンタジックなおとぎ話。
クオリティ高いと思っていたら、作者のZiloさん、フランスの出版社Ki-oonさんからプロデビューされています。海外マンガ情報誌『漫海』第3号のインタビュー記事でも紹介しているのですが、Ki-oonさんで約2年に一回開催されているフランス人マンガ家によるオリジナルマンガのコンペティション「トランプラン・キューン」の第3回において『Birds Children』という作品で優勝。本『ドリーム・メイカー』のリメイク版である『DreaMaker』の単行本が現在2巻まで刊行されています。

特別賞:Tiers Monde&Max(ティエールモンド・アンド・マックス)『NAKO ナコ』

長い間、自然と調和して暮らしてきた村。そこに住む少年ナコは、大人になるための通過儀礼として森の儀式を受けることになっていた。
ジャンプ+掲載分はプロローグ的な内容で今後どうなっていくのかわからない感じです。『ラストマン』のようなバンド・デシネとMANGAの中間のようなデフォルメ感と読み心地。この受賞の後、フランスの出版社Michel Lafonから単行本がこれまでに3巻まで刊行されています。

▼2017年(第1回)

大賞:vinhnyu(ヴィンユー)『ハイパーしりとり』

言葉にしたものを数秒間だけビジュアル化することができる「ハイパーリアリティ」という能力を手に入れた近未来。この能力をもちいたスポーツ「ハイパーしりとり」は、ビジュアル化した物質で攻防戦を繰り広げるという超絶スリリングな言語バトル!かなりハチャメチャなのだが、師弟関係にある対戦者二人の関係性や、日本語へのリスペクトも感じられて面白い。
ヴィンユーさんはGlénat Mangaから『4life』という作品が2巻まで刊行されています。

準入選:Dhafer(ダファー)『the witcher in the city』

村を救う秘薬の研究をしていた友人の大魔法使いが行方不明になり。彼を探しに来たとんがり帽子の魔法使い。魔法使い VS 悪徳警察官とのバトル!

~*~

さていかがでしたでしょうか?
まだまだ粗削りな作品から、商業漫画家として活躍されている方まで、なかなかさまざまな作品が揃っています。さすがに商業デビューされている漫画家さんの作品はクオリティが高いと感じる一方、作画はまだまだだけど物語の設定におおっと思わせるものがあったり。
作者の出身もフランスが多いものの、タイやフィリピン、ロシアやカメルーンなどいろんな国から参加されているのも興味深いですね。
ジャンプ+で配信されているので、気になる作品があればぜひ読んでみてください!





海外マンガの情報発信とお店を続けていくために大切に使わせていただきます!応援よろしくお願いします!