芥川

本に関する投稿

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『羅生門』解説 芥川龍之介

『羅生門』は、芥川龍之介が1915年に発表した短編小説で、古典的な日本文学の一つとされています。この作品は、平安時代末期の荒廃した京都を舞台に、人間のエゴイズムや道徳的な葛藤を描いており、芥川の他の作品同様、鋭い心理描写と象徴的なテーマを特徴としています。 あらすじの概要 物語は、平安時代末期の京都、羅生門という大きな門で始まります。この門は、かつては都の玄関口として賑わっていましたが、物語の舞台となる時代には荒廃し、死体が放置される場所となっていました。物語の主人公であ

    • 『注文の多い料理店」解説 宮沢賢治

      『注文の多い料理店』は、宮沢賢治による短編小説で、1924年に初めて発表されました。この作品は、幻想的でありながらも哲学的なテーマを含んでおり、読む者に深い印象を与える一方で、宮沢賢治のユーモアと独特の世界観を楽しむことができる作品です。 あらすじの概要 物語の舞台は、深い山中です。二人の若い紳士が西洋風の服装をして、狩猟のために山へ入ります。彼らは猟犬を連れており、山中で獲物を追っていきますが、次第に迷子になってしまいます。森の中をさまよっているうちに、腹が減り、疲れ果

      • 『キッチン』解説 吉本ばなな

        吉本ばななの『キッチン』は、1988年に刊行された日本の現代文学の代表的な作品で、家庭の崩壊や孤独、喪失、再生をテーマに描かれています。この作品は、吉本ばななのデビュー作であり、彼女の作家としての地位を確立するきっかけとなりました。物語はシンプルながらも奥深く、読者の心に響くテーマや感情を巧みに描いています。 あらすじの概要 『キッチン』は、主人公の「桜井みかげ」という若い女性の視点で描かれています。みかげは両親を早くに亡くし、祖母に育てられますが、物語の冒頭でその祖母も

        • 『吾輩は猫である』解説 夏目漱石

          夏目漱石の「吾輩は猫である」は、1905年に発表された日本文学の名作であり、日本の文豪である夏目漱石の代表作の一つです。この作品は、一匹の猫の視点から人間社会を風刺的に描いた長編小説で、特に明治時代の日本の社会や文化、思想に対する鋭い洞察と批評が込められています。  1. 物語の概要と特徴 「吾輩は猫である」は、名前のない一匹の猫が語り手として物語を進めていくユニークなスタイルで書かれています。この猫は、ある貧しい教師の家に住み着き、人間の生活や社会を観察し、鋭いユーモア

        『羅生門』解説 芥川龍之介

          『ノルウェイの森』解説 村上春樹

          「ノルウェイの森」は、村上春樹が1987年に発表した長編小説で、日本文学の中でも特に有名で、世界中で多くの読者を持つ作品です。この小説は、青春、愛、喪失、そして生と死のテーマを中心に展開され、村上春樹の独特な文体とともに、読者に深い感動を与えます。  1. 作品の背景 「ノルウェイの森」は1960年代後半から1970年代初頭の日本を舞台にしており、その時代の文化や社会的背景が物語の中に深く反映されています。1960年代の日本は、急速な経済成長と学生運動の活発化という特徴的

          『ノルウェイの森』解説 村上春樹

          『私は私のままで生きることにした』

          「私は私のままで生きることにした」は、韓国の作家キム・スヒョン(김수현)によるエッセイで、自己肯定や自己受容について深く考えさせられる内容です。この本は、現代社会に生きる人々に向けて、自分らしさを大切にし、自分の価値を見出すことの重要性を訴えています。 1. 自己受容と自己肯定 キム・スヒョンは、本書でまず自己受容の重要性について語っています。自己受容とは、自分のありのままを受け入れることです。多くの人が、自分の欠点や弱点を隠そうとしたり、社会の期待に応えようと無理をした

          『私は私のままで生きることにした』

          「限りなく透明に近いブルー」解説 村上龍

          村上龍の『限りなく透明に近いブルー』は、1976年に刊行された村上龍のデビュー作であり、第75回芥川賞を受賞した作品です。この小説は、1970年代の日本社会、特に若者文化の象徴として描かれ、多くの衝撃を与えました。  1. 作品の概要と背景 『限りなく透明に近いブルー』は、ベトナム戦争末期のアメリカ軍基地の町である福生(ふっさ)を舞台に、薬物とセックスに溺れる若者たちの生活を描いています。物語は、主人公で語り手でもある「僕」(リュウ)を中心に展開され、彼の周囲にいる友人た

          「限りなく透明に近いブルー」解説 村上龍

          「青年」解説 森鴎外

          森鴎外の『青年』は、1910年(明治43年)に雑誌「中央公論」に連載された作品で、明治時代の日本の知識人や青年たちの葛藤や成長を描いています。この作品は、森鴎外の代表的な長編小説の一つであり、彼の文学思想や時代背景が色濃く反映されています。 1. あらすじの概要 『青年』の物語は、主人公・小泉純一の成長と葛藤を中心に進行します。純一は九州の小さな藩の出身で、東京の医学専門学校に通うために上京してきます。彼は熱心で理想主義的な性格であり、当時の日本の知識人たちの思想や文学に

          「青年」解説 森鴎外

          「幸せになる勇気」解説 アドラー

          『幸せになる勇気』は、岸見一郎氏と古賀史健氏による共同著書で、前作『嫌われる勇気』の続編です。この本は、アドラー心理学の観点から、どのようにして人々が「幸せ」を感じられるようになるかについて詳しく述べています。   1. アドラー心理学の基本理念 『幸せになる勇気』の基盤となっているのはアドラー心理学です。アルフレッド・アドラーは、フロイトやユングと並ぶ心理学の巨匠であり、「個人心理学」を提唱しました。アドラー心理学の根幹には、以下のような考え方があります: 目的論:

          「幸せになる勇気」解説 アドラー

          「銀河鉄道の夜」解説 宮沢賢治

          『銀河鉄道の夜』は、日本の作家宮沢賢治によって書かれた児童文学作品です。この物語は、主人公ジョバンニが銀河を走る幻想的な列車に乗って繰り広げる冒険を描いています。物語の深いテーマや象徴性、詩的な表現などから、宮沢賢治の代表作として広く認知されています。 1. 物語の概要と構成 物語は、ジョバンニという少年の視点から描かれています。ジョバンニは貧しい家庭に育ち、学校でも仲間から孤立しています。彼の母は病気で寝たきりであり、父は遠くの漁場に出稼ぎに行っているため、彼が家計を支

          「銀河鉄道の夜」解説 宮沢賢治

          「ケーキの切れない非行少年たち」解説 

          『ケーキの切れない非行少年たち』の解説 『ケーキの切れない非行少年たち』は、精神科医の宮口幸治氏によって書かれた本で、2019年に出版されました。この本は、知的発達や認知機能に問題を抱える少年たちの実態を描きながら、彼らが犯罪に至る背景やその支援の在り方について議論しています。宮口氏は、少年院や児童自立支援施設での勤務経験をもとに、社会の目に見えにくい問題を浮き彫りにしています。本書は、少年犯罪や非行の問題に対する新しい視点を提供し、社会全体の理解と支援の重要性を訴えていま

          「ケーキの切れない非行少年たち」解説 

          「嫌われる勇気」解説 アドラー

          『嫌われる勇気』の解説 『嫌われる勇気』は、岸見一郎と古賀史健の共著で、2013年に出版された本です。この本は、アルフレッド・アドラーの心理学を基に、人々がどのようにして幸福な人生を送ることができるかについての考え方を提案しています。本書は、日本だけでなく世界中でベストセラーとなり、多くの読者に影響を与えました。以下、この本の主なテーマ、内容、そしてその背景について詳しく解説します。 1. 背景と基本的な概要 『嫌われる勇気』は、哲人と青年の対話形式で書かれています。こ

          「嫌われる勇気」解説 アドラー

          「仮面の告白」書評 三島由紀夫

          三島由紀夫の『仮面の告白』解説 『仮面の告白』は、三島由紀夫のデビュー作であり、1949年に発表された作品です。この小説は、戦後の日本文学においても重要な位置を占める作品であり、その内容は非常に個人的でありながらも普遍的なテーマを描いています。以下、この小説のテーマ、物語の概要、そして主要な要素について解説します。 1. テーマと背景 『仮面の告白』は、主人公の自己認識と自己告白の物語です。作品は、主人公「私」の性的アイデンティティの葛藤と、その内面世界の探求を描いてい

          「仮面の告白」書評 三島由紀夫

          「女生徒」書評 太宰治

          太宰治の『女生徒』は、1942年に発表された短編小説で、思春期の少女の内面を一日の出来事を通して描き出した作品です。物語は、主人公の少女が朝目覚めてから夜眠りにつくまでの24時間の出来事と、その間に彼女の心に去来する様々な思いを丹念に描写しています。この作品は、太宰治の他の作品と同様に、人間の内面の複雑さや孤独感をテーマにしており、特に思春期の少女という特定の視点からそのテーマを追求しています。 1. 作品の背景とテーマ 『女生徒』は、太宰治が自身の文学的探求の一環として

          「女生徒」書評 太宰治

          「河童」書評 芥川龍之介

          芥川龍之介の『河童』は、現実社会を風刺し、社会の矛盾や人間の本質を鋭く描いた短編小説です。物語は、精神病院に収容された「第23号患者」の語りを通して進行します。彼はある日、偶然に河童の国に迷い込んだ経験を語り始めます。この河童の国は、人間社会とは異なる独自の文化や価値観を持ち、そこでの生活を通じて人間社会の問題点が浮き彫りにされます。 物語のあらすじ 物語の主人公である「私」は、登山中に偶然、河童の国へと迷い込みます。河童たちは人間とは異なる生物で、二足歩行をし、言葉を話

          「河童」書評 芥川龍之介

          「白痴」書評 ドストエフスキー

          『白痴』は、ロシアの文豪フョードル・ドストエフスキーが1869年に発表した長編小説で、彼の代表作の一つです。この作品は、人間の本質、善と悪、無垢と罪深さをテーマに、主人公ムイシュキン公爵の存在を通じて、人間社会の矛盾や人間関係の複雑さを描き出しています。『白痴』というタイトルは、世俗的な価値観から見た場合の「愚かさ」を意味しており、ドストエフスキーはこの小説を通して、無垢で善良な人間が世間から「白痴」とみなされる皮肉な現実を浮き彫りにしています。 1. 小説の概要と背景

          「白痴」書評 ドストエフスキー