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5.ヨーロッパ帰りのお味噌汁

私は一度だけ、海外に行ったことがある。
大学の卒業旅行で行ったヨーロッパ3カ国周遊ツアー。
大学生の頃からカメラにハマった私は、2台のカメラと写ルンですを携え、わくわくしてヨーロッパへ飛び立った。

1カ国目のイタリア。ローマやフィレンツェで、沢山の遺跡や素敵な建造物を巡った。コロッセオやトレヴィの泉、バチカン市国などの定番スポット。
アートが好きな私としては、美術館巡りもとっても楽しかった。
目に入るもの全てが非現実的で、キラキラしていた。

ただしかし、私が元気もりもりだったのはイタリア滞在中の途中まで。
夢にまで見たベネツィアに行く前日、海外の食が合わなかった私は熱を出し、ご飯が食べられなくなってしまった。
ツアー客40人弱のうち、体調を崩したのは私たった1人。
私には海外の味付けが合わず、
こってりお肉やパスタ、パンなどを連日食べていると気分が悪くなってしまったのだ。
唯一食べれたのはフルーツやヨーグルト、ゼリーやプリンなど。
あぁ、お米が恋しい。

その後のドイツの巨大ソーセージも中々にきつかったのだが、
フランスのモン・サン・ミシェル近くで食べたふわふわオムレツと、パリのデパート「GALERIES LAFAYETTE」のフードコートで食べたハンバーグはまだ美味しく食べられた。

でもやっぱりお米とお味噌汁に梅干しの組み合わせが恋しい…
私は赤だしのお味噌汁にお米を入れて、梅干しと一緒に食べるのが子どもの頃から大好きなのである。
「赤だし」であることと、なめこや豆腐を入れるのもポイント。

帰国する数日前、親にメールをした。
「帰ったらすぐにお米と赤だしと梅干し用意しといて」

2週間ほとんどまともな食事はとれなかったけれど、冷えピタとポカリ、あとは気合いで全行程を乗り切った。
食べなければ気分は幾分良い。
ベネツィアのゴンドラも、しっかり堪能した。
モン・サン・ミシェルでは夢中でシャッターを切った。
お土産もしっかり手に入れた。

帰国の日。家までスーツケースをゴロゴロ、急いで走った。
頭の中は赤だしの味噌汁でいっぱい。
白米、味噌汁、梅干し…それを唱えながら家路を急ぐ。

「ただいま!…味噌汁は!?」

「あるで」(母)

机の上にはほかほかの白ご飯と赤だしのお味噌汁が並んでいた。梅干しもちゃんと横に添えられている。

夢中で食べた。本当に美味しかった。数分で完食。
あぁ、私が求めていたのはこれである。
ビバ、日本食。ビバ、お味噌汁。

体重を測ったら、3kgと少し痩せていた。
あれから4年が経ったが、懲りずにまた海外に行きたいなと思っている。フィンランドとチェコが第一候補。

次はしっかり日本食を持参して、異国の地を巡りたい。



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