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大空の弟。(長め)

今日、12月7日に「大空の弟」という曲がドラマ内で演奏されました。
この曲に関しては本当に語れる事が少なくて。当時の思いを想像で話す事しかできません。
2019年に吉本の企画で神野美伽さんが笠置シヅ子さんを演じる舞台「ハイヒールとつけまつげ」が大阪で上演される事になり、その中で取り上げたい曲の譜面のリストがあがってきました。この舞台で取り上げる曲がなかなかにマニアックで。
私も知らない曲がかなりあって、楽譜庫に譜面が無いものもいくつかあったけれど、リストにあった「大空の弟」はありました。

大空の弟が入っている譜面

有名な曲はいろんなパターンの楽譜が入っていてかなり分厚いのですが、この封筒はとても薄くて。しかもこの封筒使い回したものである形跡。
この「大空と弟」はまったく誰も知らない幻の曲というわけではなく、笠置シヅ子さんの自叙伝にも、自分が歌った戦争の歌はこれとあと1曲でした。と書いてありましたし、私の母も聴いた事はないけれど存在は知っていました。こういう言い方をしてしまうとせっかくの盛り上がりを台無しにしかねないですが、70年以上誰も、服部良一自身もこの曲を演奏しようと思わなかったというのが本当の所かなとも思います。
2019年の舞台はとても素晴らしくて、神野美伽さんが笠置さんの歌を素晴らしく歌ってくださって、笠置さんの波瀾万丈な人生をあらためて知る事ができた貴重な機会でした。東京でもぜひやって欲しいと思いましたが、その年の暮れからコロナ渦になってしまい、いまだ実現には至っていません。

この譜面が出た当時はニュースにもなりましたし、もしかしたらご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。ブギの女王笠置シヅ子のために戦時中こんな曲が作られていたのかというのはとても話題になったし、実際に戦死した弟がいてそのために服部良一が書き下ろしたというのも注目を集めていました。この譜面を出してきたときに昭和15年とあって、勉強不足の私は日米開戦前に戦闘で死んだ人がいるという事があまりピンときておらず。よく考えれば中国では戦争があり当然だったんですが。昭和15年っていうのは何かの記載ミスじゃないかとか。いろいろ考えながら譜面を眺めていました。とにかく謎に懐疑的な私。笑
今回朝ドラをやるにあたって、あらためて笠置シヅ子さんの本に沢山触れて、日米開戦前にも戦闘はいくらでもあり、弟さんは日米開戦を待たずに戦死をされていました。

少し前に朝ドラバージョンの「大空の弟」は聴かせていただいていたのですが、正直なところ自分の中でこれが服部良一の作品としては??と思う所も多くて。おおよそらしくない。これっていい曲なんだろうか。と思っていました。
曲の背景はとてもドラマティックだし、実際弟さんが戦死された笠置さんのために服部良一が書いたという事もドラマを盛り上げる大きい要素になるんだろうな。
ぐらいな実に実に浅くて薄い思いでこの曲を見ていて。あの曲がどうやって使われるのかは多少の不安を持って見ていたという私がいたんです。今となっては全方向に土下座したい気持ちではあります。

今日の放送を見て、まずドラマの制作者のみなさん、そして趣里さんの演技に心打たれ、感謝の気持ちでいっぱいになりました。曲は譜面だけがあっても意味はなく、演奏され、聴いてもらって初めて魂を吹き込まれるわけで。演奏してもらってナンボだと私は思っています。それは服部良一もそう思っていたと信じています。
大事に楽譜だけ抱えて持っていたって何の意味もありません。今朝のドラマを観て、まさにそれを痛感しました。恐らく「大空の弟」は舞台用に書かれた曲だと思われます。譜面を見ると間奏に「手紙を読む」というト書きが書いてあり、そこで何かしらのセリフがあったようです。ト書きにはそのセリフは書いていなかったので、内容は今となっては分かりません。

ドラマで羽鳥先生が渡した譜面もこんな感じでしたよね。

今回テレビバージョンで演奏されたピアノの伴奏。あれもほとんどオリジナルです。封筒の中にはピアノの伴奏と、写真のボーカル用譜面だけが入っていました。今回の朝ドラ「ブギウギ」のオリジナルへのリスペクトは本当に足を向けて眠れないほどの感謝ですが、今回もそれを強く、いつも以上に感じました。

ドラマのファンとしての感想ですが、今日の放送で行われた2人のコンサートは
あの当時のすべてのミュージシャンの思いが込められたメッセージだと思いました。そしてこの時代にあらためて戦争へのメッセージが決して強い言葉ではなく、詰まっていた気がします。
あらためて「大空の弟」という曲を聴いてみると、メロディはまったく軍歌調ではありません。ドラマでは六郎君のからの手紙は亀の事ばかりで、歌詞にある内容とは全く違います。実際は実に悲しいメロディなのにあの歌詞であれば演奏は当局からOKが出ている。でも今の私たちにはあれが反戦の歌だと思える。すごいシーンだったと思います。そして「大空の弟」にあらたに魂を吹き込んで多くの方の気持ちを動かしてくださった事に心から感謝します。そしてドラマってすごい!
12月に発売になる「福来スズ子傑作集」というアルバムにも「大空の弟(ブギウギver.)」として収録している事も発表になりました。恐らく聴いてくださる皆様はこの曲を聴くとドラマのシーンを思い出してくださる方が多いと思います。そうやって1つの曲にいろんな想い出や想像をあたえてくれました。

放送前に実は「ねーねー、大空の弟って名曲??」って短く隆之君にメール打った私がおりまして。そこに彼から実に分かりやすく、明解な見解が返事として戻ってきました。
そこで私のいろんな気持ちは消し去るんですが、もしかしたら明日(8日)のNHKのテレビで話すかもしれないので、ここではいったん黙っておきます。

(ドラマ終了後の追記)隆之君が言った見解。「この曲は服部良一が笠置シヅ子に贈ったレチタティーボだと思うよ。」でした。私はこの曲がそのあとまったく歌われなかったのは、この曲が笠置さん以外歌う人はいない事、戦争が終わった事。などが理由としてあったんだと思います。ドラマや舞台は別として、この曲を誰かが歌う事などまったく考えられなかったんでしょうね。

そして忘れてはいけない、そのあとに歌った「ラッパと娘」決められた枠からはみ出ないのにあのパフォーマンス。先週ぐらいからずっとスズ子の中にあった自分の歌に対しての漠然とした悩みもあそこで昇華されているのもすごかった。


まとまりのない、勢いでしか書いてない文章を最後までお読みくださりありがとうございました。(誤字脱字は気がついたら直します)

最後に大事な大事な追記。
服部隆之よりドラマを観てくださったみなさまにメッセージです。
「大空の弟」ブギウギバージョンはフルサイズではなく、オリジナルはもっと長く、テレビ用にエディットしている事をぜひ知ってください。
軍歌調のところ、語りは含まれていないんです。


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