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一緒にいたいけど、一緒にいられない夜

夫がコロナになった。

友人や職場の同僚が感染した話を聞いていたから、いつかは来ると覚悟していたが、ついに来てしまったか。

妊娠中は免疫力が下がるというし、ただでさえ体力が無くなっている今、感染するのは避けたい。

土曜の昼下がり、バタバタとホテルを予約し、当面の荷物を持って家を出た。

数日間ホテルに滞在し、予定していた用事や仕事が終わってから、夫の実家にお世話になることに。

夫の実家では、義父が遠くから送迎してくれたり、義母が栄養満点で美味しいご飯を振る舞ってくれたりと、至れりつくせりの生活だった。

結果、普段よりむしろ健康になって一週間ぶりに帰宅したのだった。

ー その2日後。

コロナの症状と思われる高熱や頭痛は随分前に治っていたが、鼻水だけは滝のように流れていた夫。

丸一日外を出歩いた次の日、咳も始まり、何だかぐったりとしていた。

最初のうちは、治りかけだと思いあまり気にしていなかった私だが、だんだんと悪くなる症状に不安になる。

ただし、正直これ以上家を離れるのはストレスだった。
ホテル暮らしも義実家暮しも、のびのびと非日常を楽しんでいた面もあるが、やっぱり家に帰りたいといつも思っていた。
慣れた場所に慣れた物があり、誰にも気を遣わなくてもいい環境が恋しかった。

私はこの不安とストレスを夫に話し、今回は夫にホテルに移動してほしいとお願いした。

いつもは私より用意周到で「念には念を」な夫だが、この時ばかりは「本当にホテル隔離をしないとだめなのか」「この部屋で寝る場所や食べる時間を分けることで対応できないか」とのことだった。

それでもやはり不安だし、この狭い2DKで隔離するのは無理があると伝え、結果夫がホテルに移動することに。

度重なる体調不良で精神的に弱っている夫は、しょぼんとしたまま家を出た。

一通り洗濯や消毒を終え一安心するものの、今回に関しては自分の主張に自信がなかった。元々先入観が強いタイプで、病は気からを体現したような人間だと思っている。
だからこそ、少しの不安でも拭っておきたいと考えたのだが、今回はやりすぎだったかもしれない。

妊娠している以上、私の意見や気持ちが優先される。たとえ夫が正しかったとしても、男という立場上意見を飲み込まざるを得なかったのかもしれない。

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一晩のホテル生活を終え、帰ってきた夫。
相変わらず咳や鼻水の症状はあり、夜になると熱も上がってきてはいたが、一晩悩み続けていた私に最早前日のような不安は無くなっていた。

一応マスクをしながらも、同じ部屋でゴロゴロしながらおしゃべりして、幸せだなぁと感じる。

妊娠前は自分の免疫力に自信があり、予防などは周りから心配されるほどしていなかった。2人の生活も、会いたい時には会って、行きたい場所には身軽に行ってきた。

子供という、手もかかる上に1番に優先しなくてはいけない存在ができるということは、一緒にいたくても一緒にいられない夜が増えることかもしれない。

私は里帰り出産し、そのまましばらく実家で子育てをする予定だ。その間夫は神奈川に残り、仕事を続ける。
私が復職したら、どちらかが単身赴任や出張で、一時的に遠くに行くこともあるかもしれない。
今回のように家族の誰かが風邪をひいて、でも大事な予定があれば、隔離することもあるだろう。

今回の件は、これから始まる子供中心の生活への、軽いジャブだったかもしれない。
私と夫、2つしかなかったファクターに、子供というさらに大事なものが加わる。
それぞれの要求が複雑に絡まる中で、家族にとって1番の選択はなにか、これまで以上に考え相談していかなくてはいけない。


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