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撃たれた

「走らないのか?」
このアラシマの言葉に補足をすると、
「走らないと死ぬけど、走らないのか?」
である。
 
「いや、アラシマさん、走れないんです、これで…」
ノリオは撃たれた右のふくらはぎを見せた。
 
スタローンみたいなアラシマは軽々とノリオを背負うとすぐさま走りだした。
アラシマ達の後ろでは仕掛けた爆弾が順番に爆発して火の手が迫っている。
さながらランボーである。
 
ノリオは数年ぶりにアラシマと組んでの仕事だった。
粛清対象がいるビルに侵入して目的を果たしたところまでは良かったが、警備の生き残りに右足を撃たれてしまった。すぐに相手を仕留めたが、計画通りに建物の外へは逃げられそうになく、観念したところにアラシマが助けに来てくれたのだった。
 
「久しぶりに組んだのに迷惑かけてすみません…」
背負われながらノリオは自分が情けなくてたまらなかった。
 
味方の集合場所に到着すると、ノリオはソファに寝かされ、応急処置を受けた。
「情けないやつよのう」
と横のソファから声がした。
 
「ヤコ!」
が高い、ヤコ様と呼べ」
以前と違ってボブヘアだった。ノリオの好きな映画「アサシン」のブリジットフォンダを思わせる。喋らなければ。
「お前、相変わらず残念なキャラだな」
「笑止! 貴様こそ、その体たらくでよく生き延びおったな」
「お、お前! よくそんな事言えるな」
「何がじゃ」
「お前が警備の人間を全滅させてるはずだっただろうが」
「その通りじゃ」
「一人残ってたんだよ、そいつに撃たれたんだよ!」
「弘法も筆の誤りというではないか」
「誤りなんだから謝れよ!」
「許せ!」
そういうとヤコはぷいっとどこかに行ってしまった。代わりにアラシマが様子を見にやってきた。
「調子はどうだ」
「ヤコのやつ、自分がミスったのをなんとも思ってなくてムカつきます」
「あいつはあいつでお前に悪いと思ってるみたいだぞ」
「どこがっすか」
「次の任務の出発を遅らせてお前の様子を見にきたみたいだ」
「でも、あいつのせいで死にかけたんですよ」
少し間を置いてアラシマが言葉を発した。
「裸だったしな」
「アラシマさん、それはいつものことです」
ノリオがそう言うとアラシマは珍しく、「いっけね」みたいな表情をしてごまかした。それだけでノリオの気分は晴れたのだった。

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こちらは、創作大賞に応募した作品の中の三人です。
読んでいない方は、なんのこっちゃになりました。
そして締め切り遅れました。部長、許せ! いや、すみません!💦

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