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2022年の観劇を振り返る

観劇記録

とりあえず見たものをジャンルごとに列挙、回数はそれぞれ1~10くらいです。

宝塚
🌙今夜、ロマンス劇場で/Full Swing  
⭐️王家に捧ぐ歌
🪐NEVER SAY GOODBYE 
🌸TOP HAT
🌸冬霞の巴里
❄️️夢介千両みやげ/Sensational 
🌙ブエノスアイレスの風
⭐️めぐり会いは再び/グランカンタンテ
🪐FLY WITH ME 
🪐カルト・ワイン
🌸巡礼の年/FE 
❄️ODYSSEY
🪐 HiGH&LOW THE PRIQUEL/カプリチョーザ
⭐️モンテクリスト伯/グランカンタンテ
⭐️ディミトリ/ジャガービート
❄️蒼穹の昴

大劇場公演はギャツビーだけ中止で見られなかったので残念、、、。

ミュージカル
フィストオブノーススター 北斗の拳 (初演)
ヴェラキッカ
SINGIN' IN THE RAIN (来日公演)
笑う男
カーテンズ
メリー・ポピンズ
CROSS ROAD 
RENT (来日公演)
スワンキング
アラバスター
ダブルトラブル SeasonB 
流星の音色
ミス・サイゴン
ピピン
エリザベート
キンキーブーツ
バイ・バイ・バーディー
ヘアスプレー
文楽
一月一部 寿式三番叟/菅原伝授手習鑑
      二部 絵本太功記
四月一部 義経千本桜
      二部 摂州合邦辻
      三部 嬢景清八島日記/契情倭荘子
十一月一部 心中宵庚申
四季
バケモノの子
キャッツ
その他(能・狂言・歌舞伎・ストプレ・朗読劇)
冬の観能の夕べ  鵜ノ段/酢薑/三輪 
八月納涼歌舞伎 二部 安政奇聞佃夜嵐/浮世風呂
神州無頼街
スプーンの盾
セールスマンの死
室温
M.バタフライ

49演目78観劇、自分史上最多観劇数を圧倒的に2倍以上更新していて震えています。東海圏に住むと東京にも大阪にも行きやすくて良いですよね(白目)

せっかくこんなにあるので、個人的演劇大賞を選んでみました。ちなみに私自身の2大推しは宮野真守さんと真風涼帆さんですが、お二人の出演作は今回はここに入っていないのでわりと純粋に作品としての評価だと思います。(推しが出た作品が良くなかった訳ではなく、観劇回数が他より1桁多くなり比較しにくかったためです)

六花的演劇大賞2022

総合:カルト・ワイン
演出:スプーンの盾
音楽:ヴェラキッカ
歌唱:ミス・サイゴン
俳優:セールスマンの死 段田安則さん
          流星の音色          新妻聖子さん
          笑う男                真彩希帆さん
          エリザベート       山崎育三郎さん
好き:シデレウス

どどん。注釈として、音楽部門は今回初演のオリジナル作品の中から選出。好き部門はそのまま、1番刺さった好きな作品です。以外1つずつ振り返っていきます。

【総合】カルト・ワイン

今年私が見た作品の中では圧倒的に最も良かった舞台作品、カルトワイン。観劇後すぐに書いたこちら

の記事では公演中止の報せ(および円盤収録も中止されただろうと思われる状況)によってかなり感傷的になっていますが、あれから約5ヶ月ほど経ちカルトワイン以外にも多くのチケットを失った今、やはりカルトワインは名作だったとそう思います。

スパイスの効いた演出と華やかでキャッチーな曲、息つく間もない物語の展開。音程やら滑舌やらの心配をせずにただただその歌唱力演技力に圧倒されて劇場を出て、「素晴らしいミュージカルを観た、素晴らしい観劇体験だった」としみじみ思う帰路。あの多幸感を忘れることは出来ないと思いますし、あの多幸感を求めてまた劇場に通いつめてしまうような、舞台オタクとしての原体験になる作品でした。私は既に舞台オタクですが、私の中のミュージカルの基準のひとつであり最高峰のひとつとして今後ずっと数えられると思います。

【演出】スプーンの盾

演出部門大賞として挙げたのがこちら、プレミア音楽朗読劇 VOICARION ⅩIV 「スプーンの盾」。ナポレオンの料理人カレームに纏わる物語を4人の声優による朗読と生バンドによる演奏で上演します。

狭い舞台の最前列に4人のキャスト、中列にバンド、後列には端から端までいっぱいの調理器具、そしてセットに吊るされた数え切れないほどのスプーン。クリスマスに家族が集まる暖炉のような、あたたかく優しい世界観の見えるセッティングを見ただけでも、心がときめきます。そしていざ物語が始まれば賑やかな厨房の風景が照明・特効・SEによって生き生きと表現され、たくさんの調理器具も踊っているように錯覚するほど。

舞台上で本当にパイ生地を練ってしまうミュージカル「WAITRESS」のような作品も大好きですが、想像の余地を残す朗読劇に的確にSEや特効が入るとこんなにも鮮やかに世界観を感じられるのかと感嘆しました。強く再演を願っている作品です。

【音楽】ヴェラキッカ

音楽が印象的だったのがミュージカル「ヴェラキッカ」。タイミングの良い事にYouTubeで舞台映像が公開されているのでとりあえずこの曲を見てください。

キャラクターだけでなく声質・発声も個性的なキャストが多くサウンドが散らかってしまいそうなところを、暴力的なまでのキャッチーさで纏めあげている1曲です。カレーは何を入れてもカレーになるように、スウィングすれば誰でもヴェラキッカになれます(何を言っている?)

全編でスウィングジャズ調が採られている他に切々と愛を歌うブルースもあればバチバチ絶唱デュエットもありしっとりワルツを踊ったりとバラエティも豊かで、どれも曲として完成されているのに芝居、感情の流れに沿ってぴったりとハマっています。

物語は独立しているもののTRUMPシリーズに連なるためシリーズ初見ですと物語に入り込めない可能性はあるのですが、日本のオリジナルミュージカルのキラーソングの少なさに憂うミュージカルファンの方々にはぜひ見て頂きたい作品です。円盤あります。

【歌唱】ミス・サイゴン

当然の結果と言える歌唱力大賞。端から端まで安心感しかない歌声に、こういうのが良いんだよ……と噛み締めながら観劇しました。

レミゼは小学生から観ていたのにサイゴンは今回初見だったのですが、作品としてはあまり刺さらなかったというか……エンジニアの存在の意味を飲み込みかねていることと、演出的にシーンが間延びしてしまっているのをパフォーマンス力でどうにか持たせているような印象を受けました。(なにせパフォーマンス力が圧倒的すぎる)

そして、ここが東アジアでほとんどが東アジア人キャストによる上演だから受け流されてしまっている部分があまりにも多いのでは無いか、というひっかかりが大きかったです。M.バタフライを観た時とも近いひっかかりは、欧米人の東アジアへのまなざしを同じ東アジア人である私が観劇によって追体験していることへの居心地の悪さでしょうか。これを往年の名作としていつまでも上演し続けることについて、再考が必要なのではないかと私は思っています。

【俳優】セールスマンの死 / 段田安則さん

過去と現在、夢と現実を行き来する靄のかかったような舞台の中で、上滑りする母親の声やウェイターが去るのを待つ視線、見栄を張ろうとして吸い込む息、そんなふとしたものが恐ろしいほどリアルで、私自身と連続した話なのだと認めざるを得ないようで辛かったです。

最近、歳を重ねたときに相応に歳を重ねた役を演じられるのは貴重なことだという思いがあり、その最たる例だったので段田さんをピックアップしました。

【俳優】流星の音色 / 新妻聖子さん

ミュージカルを観に行ったらメインカップルの歌より水音が大きく聞こえるという珍妙な体験をしました。「水と光のエンターテインメント 流星の音色 」と改題することをお薦めしたいです。

脚本・演出面で言いたいことが山ほどあり良作だったとは残念ながら言えませんが、新妻聖子さんの歌と芝居には溺れるほど泣かされました。女王としての責任、母親としての愛情と怒り、恋する少女だったときの哀しみ、様々な立場に揺れる想いが圧倒的な質量で迫ってきて、感動という言葉ではとても足りません。

【俳優】笑う男 / 真彩希帆さん

作品としては、グウィンプレンの人となりについて結局よく分からないまま終わってしまった感があり消化不良でした。その後韓国版の映像を少し見たところ(場面によるかもしれませんが)グウィンプレンが完全な「道化」として描かれているようでしっくりときたので、韓国版の演出でもう一度見てみたいと思っています。

真彩さんの異質なほど透き通った声がデアの澄んだ心をあざとくなく表現していて、1人で劇場の空気を変えてしまう瞬間を幾度も観たように感じました。

【俳優】エリザベート / 山崎育三郎さん

宝塚版の映像を8バージョンほど見て曲は良いけど好きじゃない、と思い続けたエリザベートに東宝かつ生観劇でリベンジしたのですが、完全に虜にされて帰ってきました。どうしても登場人物(人外も)を美しく描いてしまう宝塚に比べ東宝はシシィのエゴイストぶりがはっきりと感じられて納得感があります。

私が根は声優さんのオタクなので声質に深い意味を見出してしまいがちなのですが、育三郎さんは黄泉の世界そのもののような支配的な声と死に誘う甘美で悪魔的な声が両立していて、生で聴いていても実在が信じられないような特別なトートでした。「死を愛する」ということの意味がやっと分かった気がしました。

【好き】シデレウス

今年最も刺さった作品としてピックアップしたにも関わらず、配信でしか観劇できておらず冒頭の観劇リストにも入っていません。が、圧倒的に好きなので好き部門大賞です。一生引きずる作品大賞とも言えます。

あまりにも好きなので贔屓してこれだけ内容の説明もするのですが、こちらは韓国ミュージカルの日本初演で、クラシックな楽曲と美しいセット、“手紙”を使った演出が印象的な3人芝居のミュージカルです。

17世紀当時、タブー視されていた「地動説」に関する研究を始めた2人の学者“ガリレオ”と“ケプラー”、そしてガリレオの娘・修道女“マリア”は、地動説を唱える研究のリスクと闘いながら、時代の混乱を代弁していく。
INTRODUCTIONより抜粋 http://musical-sidereus.jp/

ガリレオとケプラー、ガリレオとマリア、そしてケプラーとマリアの関係性が刺さりポイントだと思うのですが、私個人としてはガリレオという研究者の生き方そのものがとてもとても刺さりました。私自身が研究者に対して抱いている憧憬そのものの姿をしたガリレオ、そのガリレオが憧れる研究者の姿をしたケプラーという構図がたまらなく好きです。

ガリレオ役の石井一彰さんの音価をきっちり守るスタイルが厳格な数学者らしく、ケプラー役の小野寺勇人さんの純粋さが眩しく、マリア役石川由依さんの柔らかいお芝居はいっそう悲しくさせて、本当に美しいトリデンテでした。それから、日本語と韓国語の語順が近く翻訳しやすいのか、歌唱指導の功績かは分かりませんがフレージングに違和感がほとんどなく入り込みやすかったことも大好きなポイントです。

その他 印象的な作品 

入賞作品については以上です。その他、入賞には至らなかったものの印象的だったものをピックアップしていきます。

フィストオブノーススター 北斗の拳

初演の方です(再演は日数が少なすぎて行けませんでした)。原作漫画もアニメも全く内容を知らずただ「すごいらしい」という噂だけ聴いて怖いもの見たさで行ったのですが、マンガ的な演出とワイヤーアクションとワイルドホーン楽曲がちぐはぐにならずに成立している状況(カオスではある)そのものが面白く、オリジナルミュージカルとして特筆すべき仕上がりだったと思っています。

はっきり言って主演の歌唱力はそこそこでしたが、「一人の力では敵(ラオウ/福井昌一さん)に敵わないがみんなの力(コーラス)に助けられて勝てる」というようなストーリーだったので納得感があって良かったです。そもそもあれだけのアクションでこれ以上は望むまいという感じなのですが。

個人的に本作のMVPはバット役の渡邊蒼さんで、普通に小柄な大人の役者さんとしてこの方のお芝居好きだなあと思いながら観ていたので終演後に18歳(一応子役枠?)と知ってひっくり返りました。主役のような覇気があって、ケンシロウよりはむしろバットとリンの物語だなとも思っていたので原作の第2部?はそうだと聴いて納得しました。再演もいいけどぜひ続編を観たい。

神州無頼街

2020年に上演予定だったのが延期され、2年越しに上演された新作いのうえ歌舞伎。私の最推し:宮野真守さんが出演されていたので足繁く通いました。1月からゲキシネとして映画館でも公開されるのでぜひ見てください。

内容とは関係ないのですが今年は初めて歌舞伎を生で観劇する機会もあり、演出的な賑やかさや見栄切りもそうですが、それよりも「型から入る」ということがいのうえ歌舞伎の「歌舞伎」らしい部分なのかな、とふと思いました。ミザンスがきっちり決まっていてそこに後から芝居が追いついていって、さらにそれを越えた先に「その人の芝居」があるような。 

冬霞の巴里

ゴシックな衣装やメイクなど、宝塚らしからぬ世界観が注目を集めていた指田珠子先生の新作ミュージカル。話題作だったようにも感じましたし、人を殺すときに体から赤いスカーフを引き出す演出が、ミュージカルジャックザリッパー(韓国版)で好きだったものと同じだったので個人的にもとても記憶に残っています。

事件の真相が明らかになるにつれむしろ謎が深まっていき一番最後に核心を突くミステリー的な進行は、基本的にリピーターを想定している宝塚ではとても新鮮に感じられました。また舞台上に余白が多く、台詞でも説明しすぎないので和海しょうさんや紫門ゆりやさんなど上級生の芝居を堪能できました。

バケモノの子

最推し:宮野真守さんが出演されているので大好きな映画バケモノの子のミュージカル化ということで期待と不安の入り交じった、劇団四季による国産ミュージカル。

映画ファンとしてセットなどの作り込みはさすがの四季クオリティでしたし、多々良や百秋坊などクセの強いキャラクターも映画そのままに舞台に現れたので感動しました。ただ外には表現出来ない感情が「こころの闇=念動力」に変わる、という設定なのにミュージカル化にあたりその感情が先に歌として表現されてしまうため物語の奥行きが狭まってしまった感がありました。また殺陣も不慣れ?に感じたことと刀を抜き身のまま腰に帯びていたことが気になりすぎて話が入ってこなかったことなどは残念だったポイントです。

CROSS LOAD〜悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ〜

演出部門大賞にした「スプーンの盾」の作・演出を担当する藤沢文翁さんの過去の朗読劇作品を、ご本人の演出でミュージカル化した作品。音楽や照明演出なども朗読劇のときと同じカンパニーで、ミュージカル自体に不慣れな感はありましたが東宝のバックアップ(塩田明弘先生がスーパーバイザーとして参加するなど)もあり、個人的には好き部門第2位くらいに刺さった作品です。

このnoteにも書いた通り、チェリストの作曲家による楽曲が人間が歌うには難しすぎるのですがバイオリニストのパガニーニの物語にとても似合っていて素敵でした。音響やキャストの実力差など気になった点は正直かなり多いのですが、いつかそれらが改善された再演をされることを願っています。

ダブルトラブル

2人の演者で10役をこなすドタバタコメディミュージカル。前述のCROSS ROADでパガニーニ役をされていた相葉裕樹さんが出演されていて気になっていたところに、何かの劇評で「オタクが推し役者にやってほしいやつ」と読んで観にいきました(結局相葉さんご出演回ではありませんでしたが)

才能溢れる真面目な兄と、愛嬌で乗り切ってきた弟を演じる対象的な2人が老若男女様々な、そして時には2人で同じ役も演じるのでその2人の全てのレンジを使いきって、本当に「その人の芝居」というものがよく感じられる作品だと思います。音楽がシンプルにピアノのみなのも、役による声色の使い分けをより活かしていました。タップダンスや早替え、多くの名作ミュージカルのオマージュもふんだんに盛り込まれ「推し役者にやってほしい」という気持ちはもちろん、この先上演される全ての組み合わせを観たいくらいの気持ちでいます。

ヘアスプレー

「興行として」2022年で1番良かったのではないかと思っているのがヘアスプレー。主演の知名度でチケットを売りつつたくさんある良い役にはしっかりと実力者が配役されていて、日本ミュージカルの興行の正解を見た気がしました。

黒塗りや肉襦袢、その他見た目に関する台詞や演出などに気になる部分は多いのですが、あのようなメッセージを音楽に乗せてポップに伝えられるという点でももっとコンスタントに上演されれば良いのにと思います。個人的には、「容姿や属性ではなく、中身を愛する」というテーマに対してリンクが一貫してトレイシーの「美しさ」に惚れていることが(もちろんそれは内面の美しさの表出なのですが)面白くて好きです。

ディミトリ〜曙光に散る、紫の花〜

宝塚作品で最も印象的だったのがこちら。宝塚らしいセットや衣装などの美しさに加え、作品全体が郷愁を誘う雰囲気でとても素敵でした。

原作本も読んだのですが、リラの花を擬人化?花の精霊として具現化していたり亡くなってしまったキャラクターに印象的な楽曲がありリプライズとして後からも登場させるような演出がミュージカルとして上手くまとまっていたと思います。ジョージア風?なのかハーモニーの積み方が独特でアンサンブルに少し気になる点はありましたが、一方でジョージアンダンス?は壮観でした。

まとめ

2022年は自分でも怖いくらいの観劇数で、目が肥えてしまった分気になることも沢山ありましたが、その分素敵な作品にも沢山出会えて楽しかったです。2023年は真風涼帆さんが宝塚歌劇を退団され、少し宝塚を観る機会も減るかなと思うので文楽や歌舞伎をたくさん観られたら良いなと思っています。

最後に一言、カルトワイン円盤化してください!!良いお年を!!

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