Bombay Sapphire よりTanqueray
ハタチを過ぎてから、当分の間、ビールが一番好き、でも、日本酒は飲むという感じで過ごしてきた。25才くらいからは、ワインが加わった。カクテルは、ほとんど飲みたくなくて、ただ、透明のお酒は好きになってしまった。
それは、GIN。
「労働者のお酒だよ」という彼は、お手伝いさんがいるお家で育った人で、それに反するように、振る舞ってた。必ずオーダーするのは、GIN RICKEY。トニックが苦手なところは、わたしも同じ。レモンが香る、透明で、炭酸が効いてる、夏の飲み物みたいなGIN RICKEYは、BARで飲むのには、過ごす時間の長さに合う、ちょうどよい飲み物だった。
ここ最近、葡萄が原料のお酒ばかり飲んでいる。先日、お昼にお気に入りのレストランに寄ったとき、中途半端な時間だったから、軽く、稚鮎のエスカペッシュを食べて、クレマンを飲んだ。
このクレマンを飲むために、ここに来る。
一番辛いレストランだけど、レストランで働く人たちは、心地よい距離で、接してくれて、何より、クレマンが、本当に美味しくて、ひたすら飲むことに専念してしまう。
まだ、太陽は高く、暑い日だったので、あと1時間くらい、と心を決めて、クレマンを飲み続けていた。ふと、前を見ると、美しいブルーのボトルとグリーンのボトルが目に入った。
BOMBAY SAPPHIRE とTanqueray。
BOMBAY SAPPHIRE は友達が好きなGIN。彼女は、トニックで割った飲み方が好きで、たまに、「スッキリしたのが飲みたい」と、Tanquerayを飲むことがあった。彼女は、Mint julepも好きで、わたしは、彼女から、Mint julepという飲み物を教わった。
3杯クレマンを飲んだあと、帰る前の1杯としてTanquerayのソーダ割りを頼んだ。想像していた以上の、キリッとしたGIN RICKEY。よく、GIN RICKEYを飲んでいた頃の記憶がフラッシュバックして、少し、涙が浮かんできた。
甘くなく、切なくなく、スキッとしている。ほんのり苦い香りがして、男らしさがあるのが、GIN。クラブソーダで割れば、会話が続く限り、一緒の時間を過ごす相棒になり、そろそろ切り上げよう、というときには、ロックに切り替えて、名残を惜しむようにゆっくり飲む。終わる時間が来ないようにと願いながら、一緒にいる時間を濃密に過ごす。
まだ、もう少し、一緒に飲みたい
「ベルモットは香るくらいのドライマティーニを」
幸せな夜は、最後に飲むと決めている、ドライマティーニ。オリーブは、3つ。3 sipで飲み終わるように。