人魚のいた島②

    ねえねえ、見てよ。
   ほら、みんなの絵を描いたんだよ。コルネリアさま、マリエッタさま、レナート、オネスト。レナートの頭になんか生えてるって?ほら、レナートってすぐ怒るよね。だから描いちゃった。みんな、ぼくの家族だからね。
   ジェンマとフェドーラ?
   うーん。おねえちゃん?家族かもしれないけど、ちょっと違うけど違わない。なんだよ、ちゃんと描くからそんな怒るなよ。

   ねえねえ。
   マリーンてさ、あれからどこ行っちゃったのかなぁ。なんか、変わったおとなだったよね。コルネリア様とも、レナートともフェドーラともちがうんだよ。
   おとなってさ、コルネリア様みたいにすっごく落ち着いてる人とかさ、オネストやレナートみたいに難しい仕事してる人ばっかりだろ。
   マリーンてさ、石畳の数かぞえてみたり、子どもみたいだったよね。なんだか、島にあるもの初めてみるみたいで。もしかして、島の外から来たのかな。
   だったらさ、色んなところ見せてあげたかったね。海と空がひとつになっちゃうくらいきれいなのが見られる丘とかさ。 
   ごはん、一緒に食べたかったなあ。ズッパディペッシェ、すごくおいしいっておしえてあげたのに。マリーン、魚きらいなのかな。だったら、今度は魚じゃないもの作ってあげようよ。
   ぼくが熱が出てる間に、マリーンはいなくなっちゃったって、フェドーラが教えてくれたけど。コルネリア様は、マリーンのことを話すと、むずかしい顔するんだ。

「マリーンは、自分のふるさとに帰ったのです。私たちが、もっと冷静に振る舞うことが出来たら彼女はこの島で、私たちの隣人としてすごせたかもしれません。」

   帰っちゃったんだ。遠くへ。
   どのくらい遠くなんだろう。また会えるかな。
    また会えたら、ぼく、この島のことたくさん教えてあげたいし、おいしいごはん、修道院のみんなと食べたいよ。
   ほら、出来た。
   ぼくとジェンマ、フェドーラとマリーン。
   みんなで、お船ごっこしてるんだ。どこまでも遠くへいける船に乗って、いつかマリーンのところまで行きたいね。


(続く)

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