わたあめ工場「Vampup」に行ってきた~推しをメインに語る~


入口で推しのタペストリーにお出迎えされる幸せ

        実に3年振りの推しの舞台を観劇した。
     12月3日 渋谷CBGKわたあめ工場さんの「Vampup」。ヴァンパイアとライカン、闇の中でしか生きられない2つの種族が冷戦を続ける世界で、各々の種族のあり方に違和感をもつ青年と少女が出会って恋に落ちたその時から、世界は大きく変わり始める、という物語。
    わたあめ工場さんの作風は、大人向けダークファンタジー。異世界の住人たちの世界に観客が迷い込んだような作り込みが素晴らしい。

  推しである政野屋遊太さんの今回の役は、ライカン族のアレクシオ。戦闘民族と呼ぶにふさわしいライカン族にあって、誰よりも戦いを楽しみ、生まれついてのハンター気質。長であるドロテアに気に入られる一方、手荒く扱われてきたので、強さが極まった男。

  もうなんですか、この限界ヲタクがひれ伏して拝みたくなる設定は。ありがとうございます、ありがとうございます。

   さておき。
   ライカン族はヴァンパイアとは違い、戦いに生き、異性のパートナーを持つにも強い男、強い女が高い価値を持つ。冷戦下にあっても好戦的で、ヴァンパイアも喰らいつくしそうな勢いだ。
   アレクシオは、ライカン族の特性に忠実で、生まれついてのハンターの凶暴さも見せながら、更なる強さを求める男。生まれる時代と場所が違えば、強者として歴史に名を刻む英雄になったはず。
   しかし、対立するヴァンパイアと全面戦争となる「鮮血月」を前に、不死の体とヴァンパイアの血肉によって、血に飢えた獣になってしまう。
   ルーヴェンとエリザベートの恋から始まった世界の変革を前に、同胞からも恐れられる怪物へと変貌した彼は破滅を迎えてしまうのだが、政野屋さんの演技もあって、その結末すらアレクシオらしい、と思えてしまう。
   戦いを喜びとし、強さこそが存在意義のライカン族にあって、彼は誇り高いライカンの男と自負していた。不死の身体を得ること、生け捕りにしたヴァンパイアの血肉で怪物へと変わってしまうことも、誰よりも強くあろうとした男にとっては、必然の選択であって、後悔などないのだ。
   その魂が死後向かう先が、天国でも地獄でも、彼は戦うのだ。それが、アレクシオという男の生き様なのだから。

   それにしても、荒ぶる拳や足技に載せて、繊細かつ大胆な感情表現が素晴らしかった。品川のご当地ヒーロー・クレイヴァルスの映像作品で、両親を目の前で殺された絶望と悲しみから、力を振るうことに走ってしまう青年役を見てから、「この人のお芝居をもっと観たい!」と思い、出演作品の上演会場に頼まれてもいないのに現れ、「ファンです!」という謎の珍獣に追い回されることになった政野屋さんには、大変申し訳ないと思っている。
   でもさ。戦闘狂から、自分にしか見えない色彩の幻に戸惑いながらも生きていく青年まで出来る素晴らしいアクターを、もっと世に知られてほしいし、その活躍を見たいじゃないか。
   今回の「Vampup」はDVD化も決定しており、舞台を観た人もそうでない人も、アレクシオの勇姿を観るチャンスがある。
   是非、アレクシオを見届けてほしい。

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