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深夜の信号待ちは雑念と妄想で

 ちょっと遠方へ出かけて用事を済ませた帰り道。夜間は極端に交通量が少なくなる田舎道の交差点をいくつか通る。
 赤信号で止まる。夜更けとあって車は一台も通らない。
 車どころか犬も猫も通らない。狐や狸も通らなければ山ん姥も通らない。何も通らない。
 周りには動くものもないし、暗いからたいしたものは見えない。草むらにカップルでもいればおもしろいが、そんなものはなおさらいない。

 そんな状況下で、ただじっと信号待ちをしている。なんとなく間が抜けている。
 赤信号のひとつやふたつを待てないほど忙しいわけではないが、さりとて、ただアホ面をさらして信号待ちを楽しむほど酔狂でもない。
 信号無視しようかという思いが一瞬脳裡をよぎるが、万が一、もし白バイでも隠れていたらまずいな、などと思ってやっぱり律儀に待っている。
 真面目で律儀な性格は損だ。

 交通量の少ない交差点の信号など、もっと早い時刻に点滅にすればいいのだ。点滅にすれば電気料が半分ですむというではないか。
 信号の待ち時間が少なくなれば車の燃料だって消費を減らせるし、排気ガスだって少しは削減できる。
 深夜の無駄な信号待ちが原因で石油が枯渇したり一酸化炭素が増えたりし、それが国民の不安感を増幅して一揆でも起こされたら政府はどうするつもりなのだ……ああ、心配性は損だ。

 信号が青に変わって車が走り出す。すると、雑念も妄想もすっかり消え去り、晩酌のことを考えたりする。
 能天気は得だ。

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