日本人が声楽を学ぶ大事な第一歩の話

今から書くことは、書いてしまえば当たり前、
そう思われる方もいらっしゃるかもしれないが、
実際にはそれが出来ている例を知らない、
という話でもある。

たまに出来ている人もいないことはない。
しかしそれは、偶然であったり、
本人の努力や幼少期の環境など、
様々な偶然や必然の重なった結果であり、
必然的に再現可能なものではないようだ。
なぜなら、同門の人が出来てはいないから、
師匠によって達成したことではない、
ということがわかるのである。

よくある声楽を習い始めた最初の頃といえば、
種々の母音を使った発声練習に加え、
コールユーブンゲン、コンコーネ50番、
というソルフェージュや練習曲を与えられ、
そう遠くない時期に「イタリア古典歌曲」
というものを与えられてこなしていく、
そんな感じで進んでいるのではなかろうか。

まあそれでも良いと私は思う。
但し、そこにいる初学者の生徒が、
イタリア語やドイツ語といったヨーロッパ言語を
母語として育った人であるならば、である。
その人の血筋は関係ない。
母語としてペラペラ喋れる言葉が何語か、
それだけが問題である。
たとえ日本人の血が有史以来混じっていなくても、
日本語を母語として育ち、
イタリア語もドイツ語もネイティブとして
喋れないのであれば、国籍がどうだろうと、
ここでは「日本人」として定義する。

ここに一人の日本人初学者が入門してきたとして、
上記のカリキュラムで進めようとするのは、
まともな歌手を育成する手段としては、
全くの誤りであると、私は断言したい。
その方法では、ヨーロッパ起源の声楽技術は、
その師匠のレッスン以外の要因がない限り、
一生習得出来ない。

では何が必要かといえば、
イタリア人、ドイツ人etcという、
ヨーロッパ人と同じスタートラインに
その初学者を立たせてやる、
同じ前提条件を揃えてやることが必要なのである。

ここまで述べてきたことで、
賢明な読者であれば、何を必要とするのか、
理解しておられるのではないだろうか。
その答えは、イタリア語をイタリア人のように、
発語することが出来る能力、である。

特に初期においては母音。
aなりoなり、イタリア人と同じ部分を使い、
同じメカニズムで発語出来て、
その発語のまま発声練習をしなければ、
イタリアバロック期に存在した、
ベルカントを起源とする声楽技術は学べない。

日本人でしかない初学者を相手に、
最初のレッスンで発声をさせたり、
歌まで歌わせているのは、ほぼあり得ない。
イタリア人と同じ母音を獲得するまでは、
一声たりとも歌声を発させてはならない。

今後、有料記事にて、
具体的な話を書いていこうと思う。
これは、最初に出来るようにしておかないと、
何年、下手すると何十年と損をし、
得られたはずのキャリアを得られなくなる、
そういう重大な問題であることを、
皆さんにはご理解いただきたいと思う。

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