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タクシー

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宿泊していないホテルを三人の男達がチェックアウトするまでのしばしに命がけで繰り広げる雑談
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#中編小説

タクシー・1

「嶋田畜農養育園出身のマルキドホマレですね、徳川晩期、当時咎人から人気をとっていた風光明媚で米が佳く、つまりは酒がいい、女賊もいい、あの悪太郎どもが憧れた流刑島は中部の縊れお仕置き地区にほど近い括れ部落で発見された野生種が発端の栽培物で、只今小僧さん躙り込みと共に香る裏日本系の、若やいではいるがやや陰気に湿った軽い黒煙臭は、雌の幼鳥つむりに冠した黄なる硬きトサカが為、炭は左胸、右腿のどっちつかずです、実に分かりやすい、わたしこの桃源島で畜農の養育に服務する嶋田さんとは懇意でね

タクシー・6

   世界中の選って有能な幾多の若者達がこのドグマをド盲ら信心し、堂々と胸を張り公明正大に強盗を働き、各種の相場を乗っ取り乗っかり辱めた後、感謝をするどころか蔑み、どしどし人を掠め危めしては、人に会っては人を殺しだ、有り難いと思え、などとはすっかな仏教徒のように放言し、その人生の色をすっかり結構な具合に塗りかえたのです、そんな、素晴らしい、などというヘソが沸かしたお茶をすずしい顔で啜りながらの序でみたいな表現では全般的な激痛に頭の芯を抜きたくなるほど苛立つ、正にビヨンデ・デ

タクシー・7

  先に背中そして胸っ側と丁寧ながら勢いよく皮を剝がされます、これを担当するのは商人の皮ばかりをどっさり剥いた西大陸東部の専門家で、マーチャンダイズ性脳炎に罹り本邦の難病特別枠を濫用してやってきた、幼い頃から残忍非道な皮剥きには慣れていますが、温和で情け深い典型的な後漢民族の内気な男です、剝がされた皮はボディにほんの少し繫がったままワイヤが切られ、雄鶏は痛い痛いと夢中で皮を引きずり駆け出す先五十℃のトン辛子湯を溜めた池へ落っこちます、尚さら痛いので必死で上がろうとするのを七

タクシー・8

    さすがに粘着性の毛穴は僅かながら表現されていますが、本物を知る私は失敗作と云っておきましょう、オセンチックな作品はそう安易に出てくるものではありませんね」 「お二人とも講釈が誠に新内節めいた妄想で驚きました、〝利胆〟の集いでは恥知らずの上、分からず屋な想像の力を総動員し上手より誇らしくハレ舞台に登場した宍、臓腑の、ここでは炭ですが、その出自が抱える地理的条件からはじまる幾多のコンディッション、徒や疎かにできない食餌の献立、加えて教育係の一般教養、製鶏哲学、管理者、