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タクシー

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宿泊していないホテルを三人の男達がチェックアウトするまでのしばしに命がけで繰り広げる雑談
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#連載小説

タクシー・1

「嶋田畜農養育園出身のマルキドホマレですね、徳川晩期、当時咎人から人気をとっていた風光明媚で米が佳く、つまりは酒がいい、女賊もいい、あの悪太郎どもが憧れた流刑島は中部の縊れお仕置き地区にほど近い括れ部落で発見された野生種が発端の栽培物で、只今小僧さん躙り込みと共に香る裏日本系の、若やいではいるがやや陰気に湿った軽い黒煙臭は、雌の幼鳥つむりに冠した黄なる硬きトサカが為、炭は左胸、右腿のどっちつかずです、実に分かりやすい、わたしこの桃源島で畜農の養育に服務する嶋田さんとは懇意でね

タクシー・2

ハナにはヒトの、ワタ、キモと限った事でもなく各部のシシで人種、性別、人となりを当てっこしたのが〝ききぎも〟だが人権なる不思議が流行ってこの遊びは鳥獣で代替した陰萎な麻雀に堕した。それでも当節破廉恥な趣味人、本寸法の気概で何憚らず表通の音がガガンボの鼻歌程に聞こえる裏通りをゆくが、ツムリ具合のまともな部を見繕って質におくところは全うの頃とかわらない。 この家は鶏の利肝屋だが肉が焼けても客に出さない。生肉に漸次火が廻り焼き鳥になりその後だんだん炭になる。なってから持って来る。

タクシー・3

「さて、二つ目ですよ、いやいやこのゾクッとするちょいと嫌なケム、炭っぷりからして鳥肌、皮でしょうな、ヤクザ者というよりチンピラですね華南からのイタリア移民、うん、シチリンではないな、サルジミタ島アリカリから東海岸をしばらく北へ入った村はずれのハンパ極道でしょう、元は福建省武夷山の大きな茶農園の三男で、ガキの頃から手くせ足くせ極めて悪く、抜け参りにはグレまくりというやつで、二度目の七つの歳には早くも見習いのとれた不良で通ってたんだね、家は村の庄屋でもあり示しがつかず、この子は頭

タクシー・4

これはまずいというところをきっかけに二人海を渡り南へどんどん逐電したんです、あてずっぽうにボロニャン迄やって来て南京街の用心棒になったがこの彼めっぽう女好きがする、間もなく東洋メニアックなボスの女に喰われて今度はめっかった、男の留守中に遊んだ折、間抜けな事に親分にもらったばかりの財布を忘れて中に入れた女からの誘いの手紙を見られたんです、ボスは奴の両手両足をへし折らずには勘弁ならぬと大いに怒ったところを、この娘をそちらへ納めるので何とかどれか一本で手打ちに願いたいとぶるぶる震え