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2023/3/18 今週の米国経済まとめ

⭕ 3/10のシリコンバレー銀行の破綻の波及により、今週は世界の市場が混乱にまみれました。
 米国の今週の「金融危機」と「経済指標」について簡単にまとめてみました。


① 金融危機⁈ SVB破綻、CS経営悪化懸念から株価下落、ユーロ圏への影響、ソフトバンクG安値、日本10年国債利回り低下、原油価格下落、NY金先物、BTC高騰


⭕ シリコンバレー銀行(SVB)破綻

✅ シリコンバレー銀行(SVB)が3/10に経営破綻した事が金融セクターに多大な影響を与え、米銀29位のシグネチャー・バンクなども倒産しております。SVB破綻原因として簡単な説明になりますが

(1)コロナ後の量的緩和と金融緩和で市場では「金余り」が生じ、預金金額が2100億ドル(約28兆円と)まで膨れ上がった。

(2)2022年3月からの利上げに伴い、起業向けのスタートアップ資金融資が不調となり、資金運用が米国財務省証券(米国債)や不動産担保債権(MBS)などに偏りはじめた。

(3)インフレ退治の為に2022年後半からのFRBが過去にない急激な利上げを慣行(+0.75%を連発)、その煽りを受け債券の金利上昇、相対的に債券価格低下し大きな含み損を抱える事となった。

(4)今月に入ってからの米国経済指標の結果を受け、3/22のFOMCで+0.5%の利上げが濃厚となった事により、これ以上の損失を抱えきれないと判断し、3/8、SVBは売却可能な有価証券(株、債券など)を、含み損18億ドル(2500億円)を覚悟で売却。それに伴い、自社株式発行で22億ドルの追加増資を発表。

(5)3/9に入り、シリコンバレー銀行(SVB)の株価が急落、前日比60%安となり、SVBの「金利変動耐性の脆弱性」を知る一部のベンチャーキャピタルから投資家へ「早期撤退のアドバイス」がされていた事がSNSで瞬く間に拡散し、信用不安により預金取り付け騒ぎが増長し、資金繰りが不能となり、3/10に米連邦預金保険公社の管理下に入り、名実ともに破綻となりました。

※ ベンチャーキャピタル(venture capital、略称:VC)とは、ハイリターンを狙ったアグレッシブな投資を行う投資会社(投資ファンド)のこと。

✅ 事の重大性を踏まえ、金融危機を回避する為、米国政府はSVBの全ての預金者を全額保護する措置を承認しました。シグネチャー・バングにも適用し、連鎖倒産、取り付け騒ぎの混乱を抑え込む為に全力を尽くしているようです。また、3/12(日)のうちに決定するなど、迅速な対応が見られました。しかし、全額保護とは凄い。

✅ 金融セクター株は軒並み売りが先行し暴落。米国は日本でいう「ストップ安」が無い為、非情なまでに大暴落銘柄が続出。


⭕ クレディ・スイス経営悪化懸念

✅ 3/15にはクレディスイス(CSが一時31%下落。昨年のアルケゴスショック時の巨額な損失(7000億円)を被ったのは記憶に新しいのですが、かねてから「財務上の重大な弱点がある」と言われていたそうです。今回のSVB破綻の影響で、金融セクター全体に大打撃を受け、疑心暗鬼となり、売りが先行しました。
 
 そんな中、3/16午前にスイス国立銀行(中央銀行)からの借り入れで合意したことで安心感が広がり一時40%高と持ち直しました。

 しかし、2021年、約2300億円の赤字、2022年、約1兆円の赤字と依然として経営状態は下降気味で市場参加者の不安はついてまわります。



⭕ 欧州中央銀行 +0.5%利上げ決定

✅ 3/16 欧州中央銀行(ECB)は当初の予定通り政策金利の0.5ポイント引き上げを決定。これでEUの政策金利は3.5%となった。

 SVB破綻をきっかけに、クレディスイスの経営悪化懸念が再燃、金融セクターへも配慮が必要になりました。ユーロ圏のインフレ率は8.5%と依然として高水準で、物価安定と金融安定に対応する必要が生じており、ユーロ圏も極めて困難な状況に追い込まれる可能性があります。


⭕ ソフトバンクG株価下落


✅ SVB破綻による金融危機、巡り巡って日本のソフトバンクGにも及んでいます。ソフトバンクGはハイテク企業ではなくて、投資会社です。

 ソフトバンクグループ株は16日の株式市場で5日続落し、約9カ月ぶりの安値を付けた。新興企業向け融資大手の米シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻で、スタートアップのエコシステムが打撃を受け、ファンド投資を本業とする同社のビジネスモデルに暗雲が垂れ込めている。
  
 いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は、「世界は金融不安に直面、それが金融危機になるのではないかと疑心暗鬼だ。リセッションが起こると新興企業に打撃となり、資金調達もできなくなるとの連想から、まるで新興企業の缶詰のようなファンドを運営するソフトバンクGに影響が出ているのだろう」と話した。

出典元 Bloomberg 3/16

⭕ 日本10年債利回り低下


✅ 3/10、SVB破綻が公表された瞬間に、安全資産として日本10年国債の買いが強まり、利回りが一時0.27%まで急激に低下。さらに、クレディスイスの経営悪化懸念が安全資産の円買い加速の要因となり、一時131円台まで円高に。

出典元 Trading ecnomics

⭕ 原油、金先物、ビットコイン


✅ 原油価格がOPECプラスの減産調整などで永らく75ドル前後を死守していましたが、金融危機、市場の混乱、景気後退懸念から3/16に70ドルを一気に割り込みました。エネルギー関連株は下落。

出典元 nikkei225


✅ NY金先物、資産価値保存の為に買いが先行し高騰。18日には大反発。

出典元 nikkei225

✅ BTCにも資金流入

出典元 nikkei225



② 経済指標まとめ


(1)2月 消費者物価指数 CPI 3/14

⭕ インフレ率(前年比)
総合 結果+6.0% 予想+6.0%
コア 結果+5.5% 予想+5.5%

⭕ CPI指数(先月比)
総合 結果+0.4% 予想+0.4%(2月指数 300.840 1月指数 299.170)
コア 結果+0.5% 予想+0.4%(2月指数 304.070 1月指数 302.702)

✅ 前年比は市場予想通りとなりましたが、指数対比では先月比+0.4%、コア指数では+0.5%と上昇しており、実際には物価は上昇しております。住居費、家賃の上昇が著しく、原油価格の落ち着きもありガソリンは下落安定、しかし電気代は上昇。

✅ SVB破綻の件もあり、今は金融業界に動揺を与えたくないと考えているFRBとしては、今回の結果は判断が難しい材料となってしまいました。


(2) 2月 生産者物価指数 PPI 3/15

⭕ 生産者物価指数 (前年対比)
総合 結果4.6% 予想5.4%
コア 結果4.4% 予想5.2%

✅ 総合指数の前月比では-0.1%(予想+0.3%)と予想外に低下し、FRBにとっては大きな進歩、朗報となりました。生産部門ではやはり、景気後退を既に織り込んでいる感触を受けました。


(3) 2月 小売売上高 3/15

⭕ 小売売上高(前月比)
総合 結果-0.4% 予想-0.4% 先月+3.2%

✅ 市場予想通りとなり、2月は減少。飲食(-2.2%)ガソリン(-0.6%)の価格低下が売上高に大きく反映されているようです。1月が大幅増だった事を考えれば、実際には売上高はまだ右肩上がりトレンドと言えます。


③ 利上げマップ 3/18


✅ 今週の金融危機を迎え、+0.5%の目は完全に消え、+0.25%か現状維持かで交錯しています。また、利下げ時期の予想が相当前倒しになっております。まさに先週と今週では世界が変わった様相です。

CMEのFedWatch ツール
CMEのFedWatch ツール

④ まとめ

⭕ 先週と今週では世界観が全く変わりました。

⭕ 今週の経済指標はほぼ市場予想通りとなった為、3/22FOMCはインフレ退治よりも、金融セクターへの配慮が最優先となる見通し。

⭕ 今週の金融危機により、預金者は「銀行への不安感」という言葉を覚えてしまい、預金引き上げは多少なりとも加速すると思われます。銀行は資金調達面がタイトになり、結果的に引締め効果が生まれる為、金融セクターへの配慮を含め、今回は利上げ保留となる可能性も出てきたた。

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