地方の自立を考える#3

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上にgoogleマップによる北海道某市の航空写真を示す。これを見ると市街地が家のある部分と空き地のスポンジ状になっていることがわかる。市街地が衰退するとき、元の面積を保ったままこのようにスポンジ状になっていくのはよく知られたことである。直感的には市街地が衰退するとき、中心部に向かって面積を小さくしていくと考えられるが、実際にはそうではない。(図の場所はJR駅前のとりわけ低密度な箇所である。ここは地権者などが絡んでおり一概に市街地衰退の結果とは言えないのだが、わかりやすい例として選定したことに注意されたい。)

スポンジ化する都市

この市街地のスポンジ化は、従来から言われているドーナツ化やスプロール化とは密接に関連しているが、また異なる現象である。ドーナツ化はモータリゼーションに伴い中心市街地の人口が郊外に流出することを指し、スプロール化は郊外が虫食い状に乱開発されることを指す。スポンジ化は、市街地中心部の人口が失われる点ではドーナツ化と同じだが、郊外にそれらが移転するのではなく、純粋に消えてなくなる点で異なる。また、郊外の新興住宅街でも現在進行形で発生している。これらの場合、空き家として建物が残るため目立ちにくいが住民は確実に減少している。ただし、これらもバブル期の乱開発の結果、元々入居率の低い場所も少なくないので議論には慎重を要する。

このように都市がスポンジ化して衰退した場合、インフラは従来の面積と同じだけカバーする必要があるが、住民減により財源は従来より減少する。そこでコンパクトシティ化という構想が生まれることになる。都市の集積度を下げず、規模を縮めねば自治体の負担ばかりが増えてしまう。日本におけるコンパクトシティは必然の産物であり、欧州でもてはやされているから輸入された概念というわけではない。北陸でこの概念がいち早く取り入れられたのは冬季の除雪という差し迫った課題があるからだろう。

国内人口はもはや何がどうなっても今後は確実に減少する(首都圏以外は)。長期人口のトレンドは政府が発表する唯一正確で確実な統計情報だ。地方都市ではいち早く市街地のスポンジ化が進んでいるが、この人口減少の局面においてこの傾向は今後間違いなく続くだろう。なんらかの施策を打たねば地方の低密度で広がったインフラは猛烈な足かせとなる。そこで平成26年に都市再生特別措置法が一部改正され、都市機能誘導区域というものが策定された。詳細はお住いの自治体ウェブサイトなどを参考にされたい。平たく言うと、各自治体が「できれば人間はこの範囲に住んでほしい、それ以外は原野に還す方向で」という区域を定めたものだ。つまりお上主導で強引にコンパクトシティ化を進めていこうというものだ。

とはいえいまのところ強制力はなく、一部自治体においては市立病院など公営の施設がこの範囲から外れていたりする有様だ。現状ではあまり機能していないようだが、今後は間違いなくこれがコアになって市街地の再開発が進められるだろう。(遠くない将来、この範囲外の土地価格は二束三文になるはずだ)

以上のように、人口が確実に減少する、市街地はスポンジ状に衰退する、お上は強引にでもコンパクトシティを進めたいというのが現状だ。

ではなぜほおっておくとコンパクトシティにならないのだろうか。スポンジ状に市街地が衰退するのだろうか。直感的には、駅や商業施設などの付近に人口が集積しやすそうだが、そうならないのはなぜだろうか。

自動車は救世主か

この原因はすべて自動車である。自動車があるため駅や商業施設から離れていても生活が成り立つのだ。だからスポンジ状に空き地化して衰退した中心市街地ではなく、郊外の新興住宅地に家を持つことができるのだ。(この点ではドーナツ化と極めて近いが、人口の減少傾向と相まって郊外の宅地が増えていない点に注意されたい。むしろ郊外の新興住宅街でこの現象が顕著である)

自動車は大変便利な道具で、現代社会の根幹をなすと言って差し支えない。特に地方におけるその重要さについては以前の記事で述べたとおりである。むしろ、国民の大半が自動車を手に入れることができる現状のおかげで、地方とりわけ中山間地などでも都市部と物質的にはほぼ同等の生活ができるのだ。自動車は僻地にとって救世主なのだ。だがこれは現状の地方都市の市街地においては、上述のように市街地を散逸させる原因に他ならない。

この自動車との付き合い方を考える時期に差し掛かっているのは間違いないだろう。だが現状の40代以上の世代にとって自動車を所有しないことは考えられないだろう。カーシェアリングや自動運転車などが今後どのような伸びを示すのかなど、20代以下の若い世代の意識にゆだねる以外、我々年寄りには手の打ちようがないようにも思える。


<参考文献>

めんどくさいので割愛

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