加速するアノニマスヒューマン

さて、今年の8月に書いたこちらの記事、コンビニエンスヒューマンの追記をしていきたいと思う。こちらの記事を以下のようにくくった。

このように、今後の商業空間はコンビニや大手チェーンのみになり画一化されていくのだろうか。アノニマスな買い手とアノニマスな売り手によってのみなされる商取引が主体になるのだろうか。全国的に地方からこの流れが加速しているのは間違いないと見える。効率的な大資本が肥大化していくことが避けられない以上、首都圏にこの流れが波及するのも時間の問題であろう。首都圏にあふれる個性的な商業空間は今後減少し、大資本による「見た目多様な」画一的チェーンストアに取って代わられるはずである。おそらく地方のロードサイド文化はその一歩先を行っている。

2020年12月現在、首都圏においてもコロナウイルスに関連する飲食店の不振により、主要駅前のテナントですら空室が目立つという状況が生じているようだ。比較的資金に余裕のない個人商店や小規模チェーンだけでなく、大手チェーンですら撤退していると見られる。

この「街が緩やかに死ぬ」というのは良い表現だ。これを20年ほどかけて行ったのが東京以外の日本の地方である。どうやら東京も今までの地方と同じような目にあっているようなのでざまあみろという気持ちがないと言うと嘘だがそれは置いておいて、この状況について考察してみたい。

大手資本によって首都圏ですら商業空間が画一化されると上で述べたが、昨今の状況がこれを加速させていることは明らかである。それどころか大手資本すら引き上げている有様だ。

ではこれで首都圏の主要駅におけるテナントが廃墟になるかというと、それはありえない。不動産収入が減少し、苦しくなった地主から手放すことはあれど、プレイヤーが変わるだけで本質的には状況は変わらないだろう。むしろ体力のある資本が好機と見て資本を投下するだろう。この状況が永遠に続くわけではないので、感染の収束とともに元に近い状況に戻っていく。

ここで翻って地方に目を移すと、コロナウイルスの感染など対岸の火事と言わんばかりに何事もない。下記リンク先に感染者の累計があるが、累計で1000人未満の地方において、コロナウイルスは最早他人事と言ってよい。人口は10倍以上の差があるが、感染者数は100分の1以下なのである。

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data/

満員電車のような過密状態が皆無であり、自家用車によるドア2ドアでの移動が主で、かつそもそも人口自体少ない。さらに感染者の多い首都圏などに移動することもなく、大半の住民にとって地域で生活が完結している。首都圏への人口流出とモータリゼーションによって破壊された中心市街地とロードサイド文化によって感染拡大が抑えられているのは皮肉なものだ。自治体の進める「にぎわい創出」とやらはウイルスを蔓延させるだけで最早意味をなさなくなってきた。

では今後首都圏から感染の少ない地方に人口流出、あるいは資本の移動が起こるかと言うと、私はそうは考えていない。2011年の東日本大震災の後にも同じことが言われたが、あれから10年が経過し、首都圏への集中はますます進んだ。要因は複合的であり、一概に理由を決めることは難しい。同様に今回の事態が収束した後も同じような経緯をたどる。今の私をはじめ、テナントが撤退し賃料が下がったタイミングで首都圏進出を考えている地方のチェーン、個人などは多いはずだ。

以上を踏まえ、以下のようにまとめたい。首都圏から短期的に個人店舗、チェーンストアが減少するかもしれないが、事態の収束とともに地方、または体力のある資本から新しい資本が供給される。結果、首都圏は元に近いかたちに戻るが、地方の過疎化はより一層進むだろう。もちろん、大手資本のロードサイド文化を除いてである。ロードサイド文化は救世主であり、これは不滅なのだ。今のところは。


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