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「Ӑ」の像とチュヴァシ語の未来

チュヴァシ語の文字 Ӑ の像がついに除幕されました。この像の設置に向けた動きが進んでいるというニュースが、去年の夏に報じられていました。

なんか見たことがある形だなと思ったら、トヨタのマークにちょっと似ていますね。この像は、チュヴァシ語の文字ができて今年で150年になるのを記念したものだそうで、先日行われた除幕式には、チュヴァシ共和国の首長も参加したそうです。

除幕式の様子は、以下の動画(チュヴァシ国営放送のチュヴァシ語ニュース番組)の最初の方で見ることができます。

この像が設置された場所ですが、チュヴァシ共和国ではありません。その南、ウリヤノフスクというところです。ウリヤノフスクは、チュヴァシ語の父イワン・ヤコブレフの出身地で、チュヴァシ人も多く住んでいます。外大の先生も、チュヴァシ語の調査で訪れています。

像になるあたり、Ӑ の文字はチュヴァシ語アルファベットのシンボル的存在なのでしょう。チュヴァシ語の文字はロシア語と同じくキリル文字ですが、ロシア語にはない4つの文字があります。それらのうち、アルファベット順で最初に来るのがこの Ӑ になります。

表している音は、日本語の「オ」と「ア」の間くらいの、曖昧な音です。チュヴァシ語で「チュヴァシ」を意味する чӑваш という単語にも出てきます。チュヴァシ語については、以下の記事で簡単に紹介しています。

像が設置されたのは良いことですが、チュヴァシ語の衰退が進んでいる状況に変わりはありません。親が自分の子どもにチュヴァシ語を教えようと思えるような、子供や若者たちがチュヴァシ語を学ぼうと思えるような対策が必要でしょう。しかし、残念ながらそのような対策は取られていなさそうです。

「チュヴァシ語はなくなり、この像は残る」という未来にだけはならないように願っています。

(トップ画像の出典:https://chuvash.org/news/29253.html)

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