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社畜が骨折したら、引きこもりになった件。⑪~労災か、有給か、それが問題だ~

労働災害(労災)を申請したことがありますか?
私は、社会人になって数十年、名前だけの遠く離れた存在でした。規約が従業員であれば誰でも読めることを知ったのでさえ、3年ほど前です。しかも、特定の事項を探し出すには分厚いファイルを借りるか、その場で読まなければなりませんでした。前回お話しましたが、人は何か違ったことをすると、善悪関係なく目立ちます。負い目はない、あくまで純粋な興味からなのに「のどか、ケガでもしたの?」と詮索されそうで、最初の一歩を踏み出せずにいました。その時に第三者の目を振り切って知識を得ておけば・・・・・・受傷した今、後の祭りです。

こちらも前にお話しましたが、会社から「労災にしますか? 有給にしますか?」と電話で問われたとき、即答できませんでした。私が労災を申請すると決断できたのは、骨と骨が癒着(くっつく)まで3週間~1ヶ月かかり、最低でもその期間は仕事ができないと、容赦のないドクターストップを宣告されたからでした。今振りかえってみると正解だったと納得できていますが、もし、有給で申請していたとしたらと、想像するだけで血の気が引きそうです。

それぐらい知っていると知らないでは差がでてしまう労災。ここで改めて労災とは何なのか、何が必要なのか、何に注意するべきなのか、原典をもとにまとめたものを追いながら、私の事象に当てはめてみたいと思います。

労働災害(労災)とは、労働者(従業員、社員、アルバイトなど)が業務上、もしくは通勤によって被った負傷、疾病、死亡などをいいます。
労働災害に関して被災労働者が行うことが考えられる手続きには、労災保険の給付申請、民事手続、刑事手続があります。
労災と認められれば、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付のような補償を受けることができます。

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まずは、受傷当日から診断書を受取るまでですが、太字になっているキーワードを押えながら、私の受傷経緯を改めてご覧ください。

2024年1月6日午前10時頃、業務中、左上腕骨大結節(肩関節)を骨折。原因は、転倒による壁への激突。私自身の不注意、見落としを疑われるも、事故前後の記憶が曖昧なことから不明のまま調査継続。同作業をしていた仲間はいたものの、事故への直接の関与や、悪意ある接触および言動などの過失は見当たらない。2024年1月6日同日、職場から2キロ圏内の整形外科医を受診。2024年2月5日まで約1ヶ月の自宅療養を要する見込みの旨の診断書を受取る。

太字になっているキーワードが異なっていたら、どうなっていたか分かりますか? 実は、この状況次第で、労災が降りない、労災どころか民事・刑事裁判が必要になるなど天国と地獄、真っ二つに分れてしまうのです。その違いをひとつずつ追っていきましょう。

貴方が受傷したのは、業務中、通勤中、業務時間内の休憩中、それとも・・・・・・ 

労災保険は、従業員(パート、派遣)、社員、アルバイト、職種、形態に関係なく、その会社で働いているかぎり適用されます。ただし、労災はあくまで労働者を無事に復職させるための保険なので、原則、業務もしくは通勤中に発生した事象に限られます。

私のケースは、業務中で、重度の瑕疵(たとえば、飲酒していた、勤務前から体調不良だった、制服や持ち物など規定のものを正しく身につけていなかった、上司や同僚の命令を違反した、仕事から逸脱した言動をしたなど)はないものの、”故意に自傷する”を疑われ、”無意識によるもの”と判断されるまで、何度か電話による事情聴取が行われました。

しかし、瑕疵にみえない瑕疵があったため申請を取り消されたケースも少なくありません。いくつかケースを挙げるので、どこがダメなのか考えてみてください。

  1. 休み時間中に飲み物を飲もうとしたところ、プルタブの開閉に失敗したまま口を付けてしまい、舌に深い傷を負った。

  2. 通勤帰り、会社近くのカラオケボックスに寄り、1時間近く滞在。その後、最寄り駅から自宅近くまでのバスに乗ろうとしたとき、バスのステップに足を滑らせ、足首を痛めた。

  3. 自宅から最寄り駅までは徒歩で申請しているが、寝坊をしたため自転車で最寄り駅に向かう途中、ぬかるみにタイヤを滑らせ負傷した。

  4. 台風の暴風雨により社屋のガラスが割れ、負傷した。

分かりましたか?
それでは、解説をどうぞ。

1つめは、”プルタブの開閉に失敗したまま”がアウトです。これは私のケースでも疑われた”自傷行為”です。ただ、休憩中でも仕事に過剰に追われていて焦っていた、すぐ隣で誰かから飲むように強要されたなど特別な理由があった場合は認められるそうです。

2つめは、”カラオケボックスに寄り、1時間近く滞在”がアウトです。労災が認める、立ち寄っても認められる場所は、日々の食材や日用品の購入、職業訓練校や専門学校、選挙や裁判、病院、要介護認定を受けている近親者の介護など、やむ得ない事情があるか、自販機で飲み物やたばこを買う、公衆トイレによるといった些細なものに限られます。

3つめは、”寝坊をしたため自転車で最寄り駅に向かう途中”がアウトです。通勤経路で申請した以外の手段で事象を発生させるのはもちろん、通勤経路から逸脱(定期券外のルートで電車を乗り継いでくる)する行為は、滞在時間に限らず認められないケースがほとんどなので要注意。休業補償をする任意保険や自転車保険で賄う覚悟がないのなら、素直に遅刻しましょう。

4つめは、”台風の暴風雨により社屋のガラスが割れ負傷した”がアウトです。理不尽な話ですが、暴風雨から身を守るための屋内が用意されていた時点で、それ以上の災害は想定外のものとして認められません。例外は、建物や窓そのものに欠陥があった、地形的に災害に遭いやすいことが最初から分かっていたなど、自衛、防災を怠っていた場合に限られます。

なので、受傷した時間別で覚えておきたいポイントは4つ!!

  1. 業務中は、重度の瑕疵がなければ、ほぼ大丈夫。物的証拠で完全防備。

  2. 休憩中は、生理的(トイレ、水分補給)なことは、うっかりミスがなければ、ほぼ大丈夫。ただし、タバコや仕事とは関係ない部署へ無断で行ったときなど、業務とは直接関係ないことだとアウトかも。

  3. 通勤中は、中断(不用意な場所への立ち寄り)、逸脱(経路以外の場所へ行く、交通手段を使う)がなければ、ほぼ大丈夫。物的証拠にプラスして、第三者の証言があると更に有利に。でも、出張中の滞在先付近での飲食やトラブルは、状況によってアウトになりやすいので自制を。

  4. 想定外の自然災害は、会社も被災者、お互い様とまずは冷静になりましょう。原因を探すのは、ある程度の日常を取り戻してからでも十分間に合います。

それほど難しくはないけど、うっかりミスだけは気をつけましょう。(自分からブーメランとは言いません)
ただ、受傷時までに知っておきたい知識はまだあるので、次回は労災や社会保険に関するシビアな距離とお金の話をお話したいと思います。つづく。

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