飯田利光

哲学と小説を合体した作品を作ってます。

飯田利光

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最近の記事

【哲学小説】かよわきソマリア人

七海は葛飾から渋谷方面に向けてバイクを走らせていた。今日の予報では渋谷だけは雨が降らないらしい。それはきっと特別な事に違いないと思い、コンビニの仕事を急遽休みにしてピザパンを食べ終わると午後に切り替わる直前に家を出た。七海は大通りをバイクで走りながら自分の過去の思い出を振り返っていた。その中でどうしてもおかしな記憶が浮かんでそれに取り憑かれてしまった。彼女はソマリアの海で仲間達と船に乗っている。照りつける太陽と海の香り、そして仲間達の個性ある表情なんかがとても懐かしく感じられ

    • 【哲学小説】アリサは死なない

      お昼ご飯を食べてからアリサはステーキが食べたいことに気がついた。いま食べなきゃ意味がない感情なのだと思う。机の引き出しから自転車の鍵を取り出して玄関へ向かうと、寝ていたはずの母が起きてきて何かまたお願い事でもしたそうな顔をしていた。たまには拒否するも良しと思いアリサは「ごめん、いま忙しいの」と言い放って家を飛び出した。今日は自転車が快調な気がした。空気がちょうどいい温度で爽やかな風が心地良かった。駅前まで10分の距離を歌でも歌いながら行こうと思いながらも、結局は選曲が決まらず

      • 【哲学小説】シャネルの爆弾

        田島敏夫は恐ろしいことを考えていた。人間が空中に浮くためにはパンプキンソーダを塗したりんごを持って新宿駅で自爆するというものであった。爆弾はシャネルが作ったブランドものである必要がある。先日しょうもない転倒で起こした股関節の脱臼を治療するために入院したのだが、敏夫はその病院を出てすぐにそのまま新宿へと向かった。山手線内は誰もが自分のこれから成す偉業を心待ちにしているように彼には見えた。太陽はまだ沈まない。過ぎゆく高田馬場の景色はまだ存分に明るかった。しかし爆弾がないというのは

      【哲学小説】かよわきソマリア人