禁止で環境をコントロールするということ

皆さん、こんにちは
2020年10月12日23時頃、スタンダードにおいて「創造の座、オムナス」の禁止が発表されました。

これは9月25日から数えてわずか17日のことです。
当然、SNS(といっても、私はツイッターぐらいしか見てませんが・・・)ではWotCに対する不満が爆発しています。

私自身、紙でのスタンダードはプレイしていませんが
・アリーナでスタンダードをプレイしている
・紙ではレガシーをプレイしているが、最近環境への不満が大きい
という2点がありますから、このウェーブに乗っても差し支えないでしょう。

個人的な不満の羅列になってしまいますが、今回の禁止制限について、思うところを書いていきます。

1.わかりきっていた結果であった。
2020年9月28日に「自然の怒りのタイタン、ウーロ」の禁止が発表されました。

画像1

これに対するコミュニティの感想としては「やっぱりな」というものでした。
ウーロはその時点のスタンダード環境において明らかに強すぎるカードであり、禁止になるのは時間の問題であるということはわかりきっていたので、この禁止自体は妥当な内容でした。しかしながら、この時だれもが思っていたことがあります。それは
「オムナスはどうなるんだ!?」
というものです。当然私もそう思いました。
タイミング的にゼンディカーの夜明けの発売直後であるという理由から躊躇したのは明らかで、当たり前の終点にたどり着く時間を無意味に遅らせただけに過ぎないということに対して本当にいらだちを覚えています。

2.発表のタイミング
1に関連した内容になりますが、ウーロが禁止されるにあたって、こんな発表がありました

https://twitter.com/mtgjp/status/1308595163313262593

これは、ウーロが禁止される5日前に発表されたものです。
もちろん、禁止を実際に発表する前に告知をすること自体はいいと思います。プレイヤーとショップに対してリスクヘッジをする猶予を与えることになるわけですから。
しかし、この発表と告知のタイムラグにこそ問題がありました。
あと数か月もして記憶があやふやにならないうちに書いておきますが、この時の時間経過は
1.アリーナでゼンディカーの夜明けのアーリーアクセススタート
2.配信者の間でオムナス+ウーロがぶっ壊れであることがわかる
3.ゼンディカーの夜明けリリース
4.スタンダード環境が一瞬でオムナスに染まる
5.禁止制限告知(2020/9/23)
6.オムナスアドベンチャー誕生
7.ウーロ禁止(2020/9/28)
というものでした。
この流れにおいて重要なのが[6.オムナスアドベンチャー誕生]であり、このオムナスアドベンチャーにはウーロは使用されていませんでした。
そのため、禁止発表前に「オムナスを使うがウーロを使わないデッキの完成形」が存在する結果となり、ウーロ禁止後もオムナスが蔓延る要因となりました。
(もちろん、弊害がたくさんあることは承知の上で)[5.禁止制限告知(2020/9/23)]の段階で告知ではなく実際にウーロを禁止していれば、そのあとの(オムナスアドベンチャーが開発されるまでの)ごくわずかな時間、プレイヤーはスタンダードを味わえたと思いますし、オムナスアドベンチャーの出現によって結果的にオムナスが暴れたとしても、コミュニティとしてはまだ受け入れられる余地があったとは思います。
あるいは、禁止制限告知をした後も継続的にスタンダード環境を監視しオムナスアドベンチャーの存在をしっかりと把握したうえでウーロ禁止と同時にオムナスを禁止するというシナリオもあり得たはずです(オムナスアドベンチャーは環境を一瞬で染め上げたので、禁止制限告知と発表の間に十分判断できたはずです。)

3.大規模大会の意味
今回の発表は、大規模大会の直後に行われました。
もちろん、出場者のことを考えれば大会直前の禁止は避けるべきだということはわかります。しかしながら、大会の直後に禁止が起こるというのも、「見る側の人間」としてはいろいろと思うものがあります。
硬直化した環境(あるカードが禁止待ったなし)の状況では、
・禁止待ったなしのカードがあるので「どのデッキが勝つか」のわくわく感がない
・大会直後に禁止になるなら「うまい人からデッキのノウハウを吸収しよう」というモチベーションがわかない
という問題が発生します。
まぁ端的に「禁止が出ない環境を用意しろ」っていうことになるわけですが、そうならないようにうまくやってほしいなと思うわけです。
(リミテッドの部分を用意するとか、過去のチーム戦みたいに複数デッキを用意させて、デッキ間での使用カードの制限を設けるとか・・・)
あんまりやりすぎると「うまい人からデッキのノウハウを吸収しよう」がなくなるので難しいところですが・・・
いずれにせよ、カラデシュぐらいまではプロツアーを眠気と闘いながら見ていた人間としては、もう少し「明日お店にいってプレイしたい」と思えるような配信になるような環境になってほしいと願うわけです。

4.次の環境にも不安がある。
禁止カードが設定されると二番手のデッキが環境を染め上げてしまうということが、ここ1年ほど継続して繰り返されている現状に対して正直不満を持っています。
もちろんWotCも、そのあたりを学習して先んじて禁止カードを設定しているわけですが、「メタゲームの自浄作用」が働かない状態では「禁止カードを出さないといけなくなるまでの時間稼ぎ」ができないのが実態です。
このような状況では環境トップのデッキを順番に規制していく(=禁止カードを乱発し続ける)ということになってしまうわけです。
で、どうしてメタゲームの自浄作用が働かない環境になってしまったのかということを考えると、端的に「脅威に隙が無さすぎる」という現在のインフレの結果だと思っています。
脅威というものはすべて弱点があるからこそ、そこに付け入る隙が発生してメタゲームは回っていきます。
例えば
・強いけど、重たい(=唱えるまでにアグロデッキにライフを0にされてしまう)
・強いけど、出たとき何もしない(除去されてテンポを失う)
・強いけど、手札消費が激しい(リソース勝負を仕掛けられたときに負ける)
と、言ったように、何かしら弱点があることが、特定の脅威が環境を支配しない安全弁なのです。
ここ1年ほどのぶっ壊れカードである「オーコ」「ウーロ」「オムナス」の3人を見てみると
・軽いor支払ったマナをすぐに回復できる(オーコ、ウーロは3マナ。オムナスはフリースペル)
・カードアドバンテージのロスがない(オーコは鹿を作ることですぐ除去されても最低限の仕事はしますし、ウーロとオムナスはドロー付きです)
・ライフを責められても大丈夫(オーコの食物、ウーロとオムナスのライフゲイン)
と、弱点がありません。最も効率的な除去をオーコやウーロやオムナスに当てることができたとしても、カードアドバンテージを失い、マナも同等程度に消費し、稼いだテンポでライフを詰めて勝利に近づくことさえ出来ないわけです。
そのため、弱点の無い脅威が環境を支配することになり、弱点の無い脅威が複数存在する、あるいは継続的に提供される開発体制である場合は環境を支配している脅威を排除しても、次点につけている弱点の無い脅威が台頭するという繰り返しになってしまうわけです。
これを避けるためには脅威に弱点を用意し、特定のカードに対して効率的な回答を印刷すべきです。
そうすれば、脅威の弱点を突く回答が流行り、それを避けるために別の脅威が流行るというメタゲームの推移が発生します。
現状では、エルドレインの王権からゼンディカーの夜明けにまでスタンダードのカードをみても回答となるカードは(少なくとも脅威と比較して)弱く作られており、当面メタゲームの推移というものに期待できません(あったとしても、弱点の無い脅威をどれだけ効率的に使う方法が編み出されるかという競争でしかないでしょう)。

5.WotCが何を考えているかわからない
1~4の不満を合計したものよりも、この不満のほうが正直大きいです。
オーコ禁止の時は結構長めの声明が出ていましたが、それ以降の禁止カードの発表の声明文は
「このカードを使ったデッキの支配率と勝率が無視できない状態になったから禁止するよ」
とだけしか書かれていません。
・この後もカードデザインの傾向は続くのか
・この失敗からどのような反省を得て、次のカード開発につながっていくのか
・そしてそれが反映されるのはいつごろか
などなど、プレイヤーにとっては(mtgを愛しているからこそ)今後どうなっていくのかということは心配と同時に知りたい内容です。
それが全くと言っていいほどWotCから発信されることがない状況が約1年ぐらい続いているのが現状です。
mtgが単なるDCG(デジタルカードゲーム)であれば、例え環境が荒廃したとしてもワイルドカードで補填をすれば(信頼をなくしても)プレイヤーに対する経済的損失に対しては(すべてとはいかなくとも)対応できていると取れなくもないでしょう。
しかしながら、ここまで禁止カードを乱発しておきながら、紙のカードを購入したプレイヤーに対する配慮は無いわけです。
紙のカードを買ったプレイヤーに補填をするのは現実的には難しい問題もありますから、即座に解決策を提供しろとまでは言いませんが、せめて「私たちも心苦しく思っています」ぐらいのコメントは出してほしいのです。
単に「このカード禁止するねー」とだけ書かれた発表文には納得できないのです。
カードを禁止するという行為は信用を失う行為です。もちろん、環境を荒廃させるのも信用を失う行為です。
その信用は「楽しい環境を提供する」ことと「誠意を見せる」の2つしかないわけですから、せめてこの環境に対してどう考えているかぐらいは伝えてほしいものです。


以上、終わりです


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?