短編小説【がれき】 後書き
GWの中日、
灰色のパーカーを着た10代後半くらいの子が、
暗くなった公園でブランコを漕いでいる。
背後の歩道を歩いている僕には気がついていないみたいだった。街路樹と砂場の向こうで、蛍光灯の無機質な光に照らされた、音のない世界。
周りを見渡してみるけれど、誰もいない。
誰かを待っている風でもない。
僕の歩いている脇道にはこれといった街灯もなくて、車が通らなければ彼からは僕は見えないはずだった。それを何度か確認して、少しの間立ち止まった。
ブランコの脇に自転車が停めてあった。カゴには何も入っていない。
その間も、彼は大きくブランコを漕いでいる。
これは小説にしなれけばと思った。
ブランコを大きく漕ぐのは、
何かを吹っ切ってしまいたいから。
悲しいことがあったから。
許せないことがあったから。
ここから逃げてしまいたいから。
きっと何か、理由があるのだろうと思ったから。
誰もいない公園でひとりブランコを漕ぎたくなる夜なんて、僕はその理由が知りたい。
でも、話しかけるのは怪しいし出来ないから、代わりにこうして小説にしてしまうんだ。
小説の中の彼は、僕が夜の公園で見かけたその子とは別物だけど、そんなことがあったんだよって、読んでくれたあなたに伝わったなら私は嬉しい。
最後まで読んでくださりありがとうございます。読んでくださったあなたの夜を掬う、言葉や音楽が、この世界のどこかにありますように。明日に明るい色があることを願います。どうか、良い一日を。