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掬う、救われた③

迷う子育て。成人した長男のことを悩んでいたけれど、もう
成人したしいいんじゃない?と思った時に出会った町田そのこさんの
「星を掬う」という本。

まだ、本題に入らず(笑)

私が小さいとき母の実家でお正月を過ごしていました。
年に1~2回会える年上の従妹。
母の兄。ちょっと不良っぽくてかっこいい。
ばあちゃん大好き。じいちゃんは・・・・あんまり好きじゃなかったけど
でもまあ、いつもお酒飲んでいるだけで特に私は被害をうけなかったのでまあいいか。
そして、シロとポチという犬。
集まることが楽しくて楽しくてたまりませんでした。

大人はみんなお酒が大好きでべろんべろんになるまで飲んでいました。
二日酔いがひどすぎて3が日の間全く起き上がれない母の姿を
見た記憶があります。私と従兄弟はひたすら外で雪の洞窟を作って遊んでいました。

そんな楽しいお正月の一コマの中で、一つだけ嫌な場面がありました。
それは母の兄、私のおじさんのことです。
母の兄は気が小さくて優しくて、自分の母である私のばあちゃんのことは大好きだけれど、父親であるじいちゃんとは全く合わない。
お酒が入った二人。大晦日。とくればもうその先は「酔っぱらった親子喧嘩」が始まるわけです。仲裁するようなしないような母とばあちゃん、みたいな構図です。

私はその姿を見るのは嫌でしたが、素面になったおじさんはとっても面白かったし本当に優しい人だったので、家族の中で評判は悪かったけれど好きだった。

でも、そのおじさん夫婦が離婚してしまい、従兄弟は奥さん側について行ってしまったため、ある日突然「もう会えないから」と言われて私はそれから従兄弟と会うことはできなくなってしまったのです。
一人っ子だった私は日ごろ特に寂しさも感じず育ったけれど、でも従兄弟がとてもかわいがってくれて、スキーやスケート、泳ぎ・・スポーツに関することはなんでも彼らが教えてくれた、私にとってかけがえのない人たちだったのだけれど、彼らにお別れも言えずそのあとなんの連絡もとれない関係になってしまったことだけはとても悲しいことでした。
大人の事情なので深追いはせず飲み込んだけれど、おじさんの話は時折耳に入ってきました。
とにかく困った奴だということ。
40歳を越えてもまともに仕事をしない。お金に困るからばあちゃんのところにお金の無心にくる。じいちゃんとおじさんの折り合いは最悪なので、じいちゃんに内緒でばあちゃんがなんとかする。そこに母も巻き込まれる・・・。
それが何十年も続いたそうです。
祖父母と同居するようになったので、少しは耳に入ってきたのですがまだ子供だった私は詳しいことは知らず。祖父母が亡くなり、そのおじさんも亡くなったと風のうわさで聞いた時に、母が教えてくれました。

母の話では。
どうしておじさんがそのようになったかというと、昔からお母さん(私のばあちゃん)が大好きで、またお母さんからも随分甘やかされていた。
お父さんとはずっと折り合いが悪かった。お父さんの虐待まがいのことがあったから、母もばあちゃんも同情せずにはいられなかった。
高校の時に勉強部屋と称して離れの部屋を作ったころから、そこが溜り場になり悪の道へと転がっていった。でも小心者なのでワルにもなりきれず、かといって順風満帆な道も歩まず。困ったらお母さんに泣きついてどうにかしてもらうという人だったとのこと。
妹である母はそんな兄と、兄を甘やかす母を冷淡に眺めていたが、
母と同居することで、その波動みたいなものに巻き込まれてしまったとのこと。

私が高校生ぐらいの時もそのような話が続いており、傍目から見て
とても自分自身に厳しいばあちゃんが、なんでそんなにおじさんに対して甘やかすのか全くわかりませんでした。
お金ちょー-だい!って40歳を越えた息子から電話がかかってきても無視すればよいのでは?と言うと、母は「・・・だよね・・・」とつぶやき、
ばあちゃんは「だってかわいそうな子なんだもの」と言っていました。
ばあちゃんは犬でも猫でも子供でもなんでも見たら「かわいそう」って言う人で「え?何がかわいそう?どういうとこが?」と常々思っていました。

かわいそう、談義は別にするとして、
とにかく「あの子はかわいそうだから面倒をみてあげないといけない」という考えに憑りつかれているようでした。

じいちゃんのお葬式でも「息子に連絡とらなくていいだろうか」と言ったけれど、やっと縁を切った頃だったので母が「もういい加減にしてくれ」と言って黙っていました。
ばあちゃんがもう長くないと分かった時に、私が「ばあちゃん、何かしたいことない?」と聞いたら「息子に会いたい」と言いました。
私は情にほだされて「今ならどうにか探せるかも」と思っていましたが
その時も母が「冗談じゃない」と言って、ばあちゃんの願いは聞かれることはありませんでした。

そんなおじさん。
困ったことがあると母に泣きつく→母はいくつになっても「息子は父親と折り合いが悪い、昔からかわいそうな子だった。運も悪いし」と言って
手を差し伸べる、というかお金を差し出す→泣きついたらお金が出てくる打ち出の小づちのばあちゃんから離れることができないおじさん。まともに働くわけがない→ばあちゃんと妹に縁を切られる→行方不明・・・

結局、晩年同じような境遇の人と日銭で細々と暮らし、最後は病気で亡くなったそうです。

「星を掬う」は何処に?!つづく

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