宮田笙子選手を追い込むディストピア社会

パリ五輪に臨む女子代表の主将でエースの宮田笙子(順天堂大)が、「数回、飲酒・喫煙をした」行動規律違反を受けて代表辞退をするに至ったというニュースに戦慄している。

体操の宮田笙子選手が五輪辞退…喫煙と飲酒、20歳以上でも代表活動中は原則禁止 7/19(金) 20:30配信 読売新聞 https://news.yahoo.co.jp/articles/155f876e95da3691e2a9dc5dbdaee0a92f25ac58

「追い詰める必要がどこにある!」“たかがタバコ発言”で波紋を広げた猪瀬直樹氏が宮田笙子の五輪辞退決着にふたたび怒り!「なぜ名前まで晒して…」【パリ五輪】 THE DIGEST編集部 2024.07.20
https://thedigestweb.com/topics_detail13/id=83225

元々の記事の論調によって、そこに付くSNSやヤフコメのコメントの傾向は異なるが、私の観測では大体9割くらいの人が日本体操協会の決定を積極的に支持している。この事実がなにより恐ろしい。「人の心、ないんか?」と思う。

宮田選手はきっと今失意のどん底にいることだろう。メンタルを破壊されてしまう危険があるのでSNSやテレビ報道を見るのは止めて、ご両親など自分の味方をしてくれる人だけを周りに置いて、オリンピックや体操競技の事をしばらくゆっくり静養してほしい。それでも一生残る心の傷になってしまうだろうが、どうか心を強く持って生きてほしい。

犯罪に対して刑罰を設定しておいて社会の秩序を守ることは必要だ。これは認める。しかし、幼い頃から何年も努力と研鑽を重ねてきた最終目標のオリンピック出場と、19歳で数回だけ飲酒や喫煙をした罪ではその重さが到底釣り合うわけもない。これを「ルール違反を犯したのだから仕方がない」「今回の失敗を糧にして4年後がんばってね」なんて言ってしまえる人はマジで「人の心、ないんか?」と思う。

大体、飲酒や喫煙は基本的に本人の健康管理の問題であって、他人に迷惑をかけるような犯罪とは本質的に異なる。「飲酒・喫煙をしたらオリンピック出場資格が剥奪される」なんて、本人はまさかそこまでとは思ってもいなかっただろう。1回目に違反したときに「次回また同じ違反を犯したらオリンピック出場資格を剥奪します」と明示的に警告し、2回目の違反からその処分を適用するべきだったと思う。

全国の公立中学高校が荒んでいて、非行中学生・高校生が当たり前に飲酒・喫煙していた昭和の時代にくらべたら、令和の今は粗暴な人が激減して昔より良い時代になったのは間違いないのだが、その治安の良さを生み出しているのは週刊文春、ガーシー、SNSなどで普段から目にしている「炎上」への恐怖だ。そこにモヤる。

みんな「炎上」が怖いから羽目を外すことができない。やりたい事があっても「前例がないからやめておこう」となる。大人しく、目立たぬように、人と違うことをしないように気をつける。みんな常に抑圧されている。

そしてその抑圧されたストレスは、今回のように軽微なルール違反とか倫理違反を犯してしまった成功者に向けられる。以下ループ。

表面上は治安が良くなっても、みんな抑圧されてストレスを抱えてて、そのせいで性格が歪んで成功者に妬みの感情を抱いてばかり。完膚なきまでにディストピア社会。こんなんでいいのか?

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