僕の非常につまらない、大真面目な悩み。

 僕は生まれてからずっと迷っている事がある。迷い、と言うよりは、“困っている”と言った方が正しい。それは『性別で区切られる場に、僕はどちらの性別として在るべきなのか』だ。

 僕自身は男性であるが、“身体”の方は女性だ。例えば書類の性別欄なんかは、僕は迷わず「女」に丸をする。それはあくまでもこの書類に書かなければならないのは「身体の情報」だと認識しているからだ。肉体と心がちぐはぐな僕が困った場面——『性別で区切られる場』とは、例えばお手洗いや更衣室、温泉等である。

 例えば、僕の心は男だから、男子トイレに入ったとしよう。しかし肉体は女性なので、完全に変態である。間違い無く確実に誤解を招く。では逆に、体が女性だから、女子トイレに入ったとする。しかし中身の“僕”は男性なのだ。堂々と痴漢行為をしているに等しい。かといって多目的トイレは、他に必要としている人がいるかもしれないという心配で入れない。僕は“肉体的には”超健康なのだから。
 最悪だったのは、学校の身体測定だか健康診断だかの時に、急に交代してしまった事だ。当たり前に周りは全員女子。身体測定なので薄着である。その中に中身が男性の“僕”が急に放り出されたのだ。罪悪感が凄まじく、「俺、もう出頭した方がええんちゃうか……?」と思う程であった(勿論、肉体は女性なので、本来は全く間違った事はしていない)。全く周りが見られない。周囲の顔以外を視界に入れる事を、自分自身が許せなかった。心と身体の性別が食い違う事を屈辱的に感じる事も多々あるが、その時はそれよりも、とにかく周りに申し訳ない気持ちで一杯だった。

 そう、僕はこういった場面においては、“男として在っても変態”、“女として在っても変態”なのだ。もうどちらをとっても変態でしかないのだ。命に関わる事ではないし、罪に問われる訳でもない。非常につまらない、それでもとても大真面目な僕の悩みだ。


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