春眠

 もう直ぐ日付も変わろうとする頃に、天気予報通りの雨は、垂直方向の同じリズムで暗い空から途切れなく落ちている。

 さあさあと降るこの音に混じってどーんと遠雷が響いている。今週に入ってから、猫たちがよく眠るようになった。そして外出から帰ってくるとずっと私の側から離れない。彼らは大事なことをお前は忘れてどこへ行くのだ、春を迎える準備はそれで良いのか、と、声を出さずに口だけ開けて話す。

 春の訪れは特別なものだ。木々の枝に芽吹く勢いと、幼い鶯の歌の練習が始まる。おりしも東大寺修二会は明日で満行を迎える。ライブ配信のパソコンの上に陣取った猫の寝言とともに、春が訪れるのだろう。

冬はもう去っていくのだと、前を向いたまま後ろで腕を振ってみた。

2021年3月13日

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