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私の成人式

2020年1月13日、記事を書いている今日は成人式です。

周りには晴れ着姿の若い人が、今日は私が主人公と意気揚々歩いています。

本当に素晴らしい光景です。

もちろん私にも成人式を迎える日はありました。なんだか表現が曖昧なのは、私の成人式は今日の主人公たちとは少し違った形の成人式だったので、感謝の気持ちを込めて書こうと思います。

もう20年以上前のことですが、なんの疑いもなくその日を迎えようとしていた私は、当時バレエの職業訓練に入っているかのようにレッスンに励んでいました。

そして、その日を迎えるために親にはスーツを買ってもらい、昔の仲間には久しぶりに会う約束をして、ほんの少しだけ楽しみにしていました。

成人式の1週間くらい前だったと思いますが、いつものように新宿村スタジオから先生が住んでいる渋谷まで、先生の鞄を持ちながら一緒に帰っていました。

「そういえばヤスも成人式か。行くのか?」と、思いもよらない質問に一瞬迷いが出て、答えるのにほんの数秒かかっているその隙に「ちゃんとレッスン来るんだろ?」

その迷いはさらに迷走し始めました。

自分の人生の中で、鳩が豆鉄砲食らったような顔になったのはこの時だけだと思います。

成人式に参加せずレッスン

職業訓練のようなバレエのレッスンをしていたので、答えは一つです。

「はい、レッスンに来ます」

言ってしまいました。その日の帰りの先生との食事は本当に不味かった。頭の中では「やっぱり成人式には行きたい」それを言うことしか考えてなかったので、何を食べているのか分からない状態だったと思います。

諦めた私は次の日に、親にスーツを買ってもらったお礼とお詫びを伝え、仲間には成人式には行けないことを伝え、なんだか微妙な気持ちで過ごしていました。

そして成人式当日、住んでいた中目黒から新宿までの道のり、同じ歳の人達は晴れ着姿に、今日は私が主人公と意気揚々闊歩しています。

その横を同じく成人式を迎えるはずだった青年が、ジャージ姿で小走りで通り過ぎていく。みんなが羨ましかったし輝いて見えた。

でももう決めたことだったので、見て見ぬ振りしていつも通り職業訓練に励みました。

そしていつも通り先生にご馳走になって、いつも通り鞄を持って渋谷まで帰りましが、なぜかその日はいつもとちがう方向に「ちょっと来い」とハチ公広場に向かって歩かされました。下を見て歩いていた私に先生が一言。

「ヤス、これどう見える」

顔を上げ見渡すと、その景色は成人式を終えた同じ歳の人達が、みんなでお酒を飲んだ後なのか、仲間同士肩を寄せ合い楽しそうに上を向いて笑っている顔しか見えませんでした。女の子たちの金色の帯や、首に巻いているフワフワしたストールが夜の渋谷のネオンに反射して本当に綺麗で羨ましかった。

みんなが羨ましすぎて言葉を詰まらせていると、

「お前今日はよく来たな。今日の景色よく覚えておけ。本当ならここでみんなと楽しく過ごしているところだけど、お前はみんなが楽しんでいる時も苦しんでいるんだから絶対に夢は叶うよ」と。

先生と離れてから悔しいのか嬉しいのか涙が止まりませんでした。

それからというもの、私は成人式になるとあの景色や感情が今でも鮮明に蘇ります。

夢が叶ったかどうかはまだ分かりません。まだまだ夢の途中かもしれません。でも、あの時の記憶はこれからの人生で繰り返し必ず思い出されます。

あの思いがあったからこそ今の私がいます。

初心忘れるべからず

芸事に携わるものとして最高の言葉です。毎年必ず初心に戻れるのもあの日のおかげです。

今日2020年1月13日、今日も当時のあの日の青年に戻っています。

私は毎年成人式を迎えます。これが私の成人式です。

先生ありがとうございました。





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