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〜訪問看護師として想う日々のあれこれ。訪問看護師たねあかし〜

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長年、訪問看護師として働いてきた、私自身の仕事観、考え方、私を支えるものなどの話です。
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#新人看護師

「やめること」を選ぶ時

12月31日。 2020年は、今までに無い様々なイレギュラーを経験した年だった。 「やめること」を選んだこともそうだ。 今年、私が入学準備をすすめていた「2020年度 認定看護師教育課程」はコロナの影響で開講中止となった。 *~*~*~*~*~ 認定看護師は、訪問看護師を始めた頃から長年の目標だったが、結婚・転居・出産・子育て・子どもの受験や進学・仕事と機会をうまく捻出できず、そのままになっていた。 年齢・体力・タイミング的にもこれが最後の機会と、昨年1年かけて準備し受

「無知はひとをころす」ということを覚えておきなさい。

「ねえ、まか。『無知はひとをころす』ということを覚えておきなさい。」当時高校生だった私に、先生が言った。 当時、高校生の私には先生の言葉が理解ができなかったが、30年以上経た今でも折に触れ、心の奥底から意識へ浮かび上がってくる言葉の一つだ。 その言葉と共に、先生の容姿もなぜかはっきりと覚えている。 小柄で色白、黒縁の眼鏡にショートヘア、襟付きのチェックのシャツにアースカラーのチノパンツ、聖書の授業が専門なのになぜかいつも白衣をフワッと羽織っておいた。 女性だったけれど、女性

昨夜は綺麗な三日月だった。

ここのところ、台風や雨、多忙の為の私自身のゆとりの無さも手伝って、夜空を見上げる機会がなかった。 昨夜、夜に外出したこともあり、久しぶりに夜空を見上げた。 雲のないひんやりとした夜空に、綺麗な三日月が浮かんでいた。 それからしばらくして、スタッフからMさんの訃報が届いた。 私が、夜空を見上げていたちょうどその頃、Mさんは旅立たれたそうだ。 ・・・ 私はサテライト看護部門開設準備のため、途中でMさんの担当を外れることになってしまったが、その後もずっと気になっていた方だっ

ライスワークとライフワーク

訪問看護を希望して入社し1年半頑張ってきたけれど、想うところがあり退職を決断したスタッフから、先日、退職届を受け取った。 「看護師として働くことを見直したい。」 「でも、生活するためには働かなければ。」 思いがぐるぐると何周もしているようだった。 私が訪問看護に関わる様になって20年あまりになる。 今までたくさんの看護師さんと一緒に仕事をしてきた。 今も訪問看護師を続けている人。いろいろな事情で訪問看護から離れる人。 仕事を選ぶ理由、続ける理由、辞める理由は人それぞれだ。

大切にされていることを、大切にしたい。

Mさんは消化器系のご病気で、病気が分かってから1年以上、ずっと奥様と二人三脚で闘病をされてきました。口からの食事がとれない為、24時間の持続点滴は欠かせません。 先日、知的で穏やかなMさんにしては珍しく、スタッフとの電話の際Mさんが語気を強めたやり取りをされたと聴き、私は少し気になっていました。 抗生物質の点滴の追加指示が出たため、私は久しぶりにMさんのお宅へお伺いしました。 他愛のない話の後、私が抗生物質の点滴の準備をしていると、Mさんがぽつりぽつりとお話ししてくださいま

訪問看護師に、なりたい。

4月。 新しい年度が始まりました。 訪問看護師を目指す看護師さん6人をお迎えしました。 私が面談をさせていただいて、当社で働くことを選んで入社してくださった看護師さんたち。 ・学生時代から訪問看護を目指していて、臨床経験を積んだので念願の訪問看護師として働きたい。 ・以前から興味があり、結婚と転居を機会に訪問看護を始めたい。 ・お子さんを出産後、看護師として復帰の際のチャレンジとして働きたい。 ・病院のような夜勤が無い訪問看護に転職し、子どもの為の時間を作って子どもに

「ふつうのこと」がふつうにできる

昨年、訪問看護師を対象とした、県立子ども病院での1日病棟実習に参加させていただいた時の話です。 私自身が実習生として教わる立場は久々で、少々緊張感を感じながら、実習病棟に向かいました。 私の小児病棟のイメージは、 「大人の病棟とは違って、お子さんばかりの病棟なので少しにぎやかなのだろう」 と思っていたのですが、うかがった病棟ではとても静かに静かに時間が流れていました。 ・・・・・・・・・・・ 私が担当させていただいたKくん。 人工呼吸器を使用されています。 今

訪問看護師が足りない。

先日、行政の福祉課と市内の訪問看護ステーションの意見交換会で、「訪問看護師の量的拡大」について、それぞれの訪問看護ステーションさんの実情を伺う機会があった。 要するに 「おたくの事業所は、訪問看護師が足りてますか?」 「訪問看護の広報や事業所の案内、看護師の募集はどうしていますか?」 という事だ。 市内ステーション15ヵ所ほどの管理者クラスの、私よりも人生の先輩の方々が勢揃いの中、各ステーションの実情は3つぐらいのパターンに分かれた。 ○チラシ等で募集しても訪問看

在宅看護実習

今年度も看護学生が在宅看護実習に来ています。 当社では、毎年20名ほどの学生さんを受け入れていて、2、3名のグループで、5日間の実習を行います。 訪問看護ステーションでの実習以外にも、病院での「退院支援」実習もあるとのこと。 ・・・・・・・・・・・・・・ むかしむかし、私が看護学生の頃はまだ、在宅看護実習はありませんでした。 私は、「訪問看護がやりたい!」という一心で病棟勤務を経験した後、この世界に飛び込みましたので、今の学生さんは、学生時代に在宅看護を学問として学び

眠れない夜に〜

オンコール当番の夜。電話が鳴りました。 「夜分にすみません。父のことで相談です。どうしたら良いかわからなくて・・。」 電話口では、心配そうで、そして、夜に電話した事が申し訳なさそうな娘さんの声。 私は娘さんとのやり取りの後、今からうかがって様子を看させていただく事を提案しました。 「本当ですか!来ていただけるのなら、お願いします!」 娘さんの声が少し明るくなりました。 (うかがって、対処ができて、何とかなりますように) 私は内心ドキドキしながら、利用者さんのお宅へ車

くやし涙

訪問看護部門の中でも、あまり感情を表に出さず、冷静に淡々と仕事をこなすKさんが事務所に戻ってきたとき、珍しく涙をためていました。 どうやら悲しいのではなく、くやし涙のようです。 主治医の先生とこんなやり取りがあったようです。 彼女の受け持ちの利用者さんは微熱が続いており、経過観察していたのですが、血液検査の結果炎症反応が悪化していました。 ご家族も微熱が続いている事、検査結果が悪くなっている事、 「このままでは身体が弱ってしまうのではないか」と心配をされていました。

今の職場を辞めたいと思っている看護師1年目のあなたへ 〜手紙〜

先日採用の面談をさせていただいたあなたへ ********************************************* 先日は面談の機会ありがとうございました。 総合病院の病棟に勤務されてからの事や、訪問看護への想い等がお話しできて良かったです。 あと、希望されて現在の部署に配属され勤務したものの、中々上手くいっていないという点を含め、入職1年目で訪問看護への転職を考えておられることが個人的に気になっており、メールさせていただきました。 1時間ほどの面談