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〜訪問看護師として想う日々のあれこれ。訪問看護師たねあかし〜

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長年、訪問看護師として働いてきた、私自身の仕事観、考え方、私を支えるものなどの話です。
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#エッセイ

組織はリーダーの器以上にはならない。

6月から訪問看護ステーションの管理者になった。 風が私のところに吹いてきたので、その風を捉えて乗った。 当社はサテライト事務所も含め、看護師・リハビリの訪問スタッフは100人を超える。 今まで副管理者としてサポートしてきたけれど、管理者となると話が違う。 お受けするにあたり、いろいろ考え悩みもし、責任に対する重圧や不安もある。 実際、正式に引き継いだ6月からはいろいろなことが一気に押し寄せて来た。 管理者の役割とは、リーダーの役割とは何? 訪問看護の勤務が長いせいで、今

「風の時代~」の心の軽やかさ

先日、職場のスタッフがテレビ局の取材を受けた際、私も少し参加させていただく機会があった。 職種は違えど彼女とは入職以来の知り合いで、職場でたまに顔を合わせるとどちらからともなく声を掛け合うような関係だ。 年齢が違うのでプライベートで一緒に過ごすことはないが、彼女の過去の経歴と活躍は折に触れ耳にしていた。 モデル、バックパッカー・・・トライアスロンの選手。 そして訪問リハビリスタッフとして、「元気」を利用者さんに届けている。 「どうして始めようと思ったのですか?」 インタビ

「私がこれからの人生でやりたい事」2つのうち、叶いそうだった1つが延期になった話。

訪問看護を始めて、かれこれ20年くらいになる。 私は「ただ長く現場での経験がある」ということだけでなく、日々変化していく医療や価値観にに対応できる知識が欲しいと思ってきた。 そして訪問看護師を始めた頃から「訪問看護認定看護師教育課程を受講したい」という思いを常に温めてきた。訪問看護業務実績が3年以上でないと受験資格すらない。カリキュラムは645時間、実習あり、終了後認定試験ありの長丁場だ。 結婚・転居・出産・子育て・子どもの受験や進学・仕事、といったもろもろの状況の合間を縫い

ドラえもんにお願いして、タイムマシンで過去に戻ったとしたならば。

「チャレンジすべきか、あきらめるべきか、それが問題だ。」 以前からチャレンジしたいと思っていたが、 今回、私はずいぶん迷った。 やらない言い訳・できない理由がいくつでも浮かんでくる。 出願準備が大変だから。 試験勉強をする暇が無いから。 仕事が忙しいから。 家庭のことや子どものことで大変だから。 疲れているから。 会社に許可を取らないといけないから。 仕事との両立は大変だから。 挙げるときりがない。 「だから、あきらめよう。」と自分で自分に言い訳を探した。 だけど、私は受

1杯のコーヒーのような、看護。

今回の退院時カンファレンスは2時間に及んだ。 私はカンファレンスの後、病室で待つYさんにご挨拶をし 「それでは、次はご自宅でお会いしましょうね。今日はありがとうございました。」と病室を後にした。 病院玄関を出た頃には、すっかり日が落ちていた。 自宅退院をされ訪問看護を希望される方の支援として、入院中に病院に伺い、退院に向けてのカンファレンスを行うことがある。 病院の主治医・病棟看護師・理学療法士・ケースワーカー、ケアマネジャー、訪問看護ステーションスタッフ、訪問診療の医

昨夜は綺麗な三日月だった。

ここのところ、台風や雨、多忙の為の私自身のゆとりの無さも手伝って、夜空を見上げる機会がなかった。 昨夜、夜に外出したこともあり、久しぶりに夜空を見上げた。 雲のないひんやりとした夜空に、綺麗な三日月が浮かんでいた。 それからしばらくして、スタッフからMさんの訃報が届いた。 私が、夜空を見上げていたちょうどその頃、Mさんは旅立たれたそうだ。 ・・・ 私はサテライト看護部門開設準備のため、途中でMさんの担当を外れることになってしまったが、その後もずっと気になっていた方だっ

おこなう側 と 受ける側

思うところがあり、先日「試験」なるものを受けた。 小論文・筆記試験・面談。 合否をかけた、まともなやつ。 試験開始まで、まだ時間がある。 何だか、始まるまで落ち着かない。 待っている間はちっとも時間が過ぎない。 鼓動が速くなるのを感じる。 こんな感じは、ずいぶん久しぶりだった。 *〜*〜* 私は一昨年頃より、訪問看護ステーションの採用にも関らせていただいていており、昨年度は50名程度の看護師さんの採用面接をおこなった。 今年度も、入職希望の看護師さん達とお会いしている。

8月末に産休に入ったスタッフから、出産の報告と、ベビーの写真が届いた✨ *〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜* 握りしめたちっちゃい手のひら。 生まれるとき、 そのちっちゃな手のひらの中に、 握りしめていたものは何だったんだろうね・・・。

大切にされていることを、大切にしたい。

Mさんは消化器系のご病気で、病気が分かってから1年以上、ずっと奥様と二人三脚で闘病をされてきました。口からの食事がとれない為、24時間の持続点滴は欠かせません。 先日、知的で穏やかなMさんにしては珍しく、スタッフとの電話の際Mさんが語気を強めたやり取りをされたと聴き、私は少し気になっていました。 抗生物質の点滴の追加指示が出たため、私は久しぶりにMさんのお宅へお伺いしました。 他愛のない話の後、私が抗生物質の点滴の準備をしていると、Mさんがぽつりぽつりとお話ししてくださいま

訪問看護師に、なりたい。

4月。 新しい年度が始まりました。 訪問看護師を目指す看護師さん6人をお迎えしました。 私が面談をさせていただいて、当社で働くことを選んで入社してくださった看護師さんたち。 ・学生時代から訪問看護を目指していて、臨床経験を積んだので念願の訪問看護師として働きたい。 ・以前から興味があり、結婚と転居を機会に訪問看護を始めたい。 ・お子さんを出産後、看護師として復帰の際のチャレンジとして働きたい。 ・病院のような夜勤が無い訪問看護に転職し、子どもの為の時間を作って子どもに

こんな日は、つらい。

「もう、私、仕事を辞めたい。」 数年間、一緒に訪問看護をやって来た同僚からの言葉。 彼女は訪問看護を志して入社し、一緒にやってきた仲間。 今でも彼女は 訪問看護が好き。 訪問看護は楽しい。 というのに。 力になりたいと願うほど、力になれない。 支えになりたいと願うほど、自分の非力を知る。 誠実に向き合えば向き合うほど、傷つく。 命の重さを知れば知るほど、持ちきれなくなる。 訪問看護って、ほんとはそうじゃない。 自宅で過ごしたい方がいて 訪問看護を必要とされる方

「ふつうのこと」がふつうにできる

昨年、訪問看護師を対象とした、県立子ども病院での1日病棟実習に参加させていただいた時の話です。 私自身が実習生として教わる立場は久々で、少々緊張感を感じながら、実習病棟に向かいました。 私の小児病棟のイメージは、 「大人の病棟とは違って、お子さんばかりの病棟なので少しにぎやかなのだろう」 と思っていたのですが、うかがった病棟ではとても静かに静かに時間が流れていました。 ・・・・・・・・・・・ 私が担当させていただいたKくん。 人工呼吸器を使用されています。 今

訪問看護師が足りない。

先日、行政の福祉課と市内の訪問看護ステーションの意見交換会で、「訪問看護師の量的拡大」について、それぞれの訪問看護ステーションさんの実情を伺う機会があった。 要するに 「おたくの事業所は、訪問看護師が足りてますか?」 「訪問看護の広報や事業所の案内、看護師の募集はどうしていますか?」 という事だ。 市内ステーション15ヵ所ほどの管理者クラスの、私よりも人生の先輩の方々が勢揃いの中、各ステーションの実情は3つぐらいのパターンに分かれた。 ○チラシ等で募集しても訪問看

在宅看護実習

今年度も看護学生が在宅看護実習に来ています。 当社では、毎年20名ほどの学生さんを受け入れていて、2、3名のグループで、5日間の実習を行います。 訪問看護ステーションでの実習以外にも、病院での「退院支援」実習もあるとのこと。 ・・・・・・・・・・・・・・ むかしむかし、私が看護学生の頃はまだ、在宅看護実習はありませんでした。 私は、「訪問看護がやりたい!」という一心で病棟勤務を経験した後、この世界に飛び込みましたので、今の学生さんは、学生時代に在宅看護を学問として学び