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訪問看護〜回想録〜

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訪問看護歴20年あまり。訪問先での出来事、思い出、学び。訪問看護いまむかし。
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#在宅介護

大切にされていることを、大切にしたい。

Mさんは消化器系のご病気で、病気が分かってから1年以上、ずっと奥様と二人三脚で闘病をされてきました。口からの食事がとれない為、24時間の持続点滴は欠かせません。 先日、知的で穏やかなMさんにしては珍しく、スタッフとの電話の際Mさんが語気を強めたやり取りをされたと聴き、私は少し気になっていました。 抗生物質の点滴の追加指示が出たため、私は久しぶりにMさんのお宅へお伺いしました。 他愛のない話の後、私が抗生物質の点滴の準備をしていると、Mさんがぽつりぽつりとお話ししてくださいま

くやし涙

訪問看護部門の中でも、あまり感情を表に出さず、冷静に淡々と仕事をこなすKさんが事務所に戻ってきたとき、珍しく涙をためていました。 どうやら悲しいのではなく、くやし涙のようです。 主治医の先生とこんなやり取りがあったようです。 彼女の受け持ちの利用者さんは微熱が続いており、経過観察していたのですが、血液検査の結果炎症反応が悪化していました。 ご家族も微熱が続いている事、検査結果が悪くなっている事、 「このままでは身体が弱ってしまうのではないか」と心配をされていました。

ケアマネジャーの必須アイテム電卓?

何を隠そう実はわたくし、ケアマネジャー(介護支援専門員)としても働いていました。 しかも第1回のケアマネジャー実務研修受講者です…。働き方の選択肢の幅を広げたいと思い、長男の育児休業中に準備をし、受験しました。 ・・・・・・・・・・ 忘れもしません。 介護保険がいよいよ4月から開始される寸前の3月。 4月からのサービス提供票(1ヵ月間のサービス利用予定表のようなもの)の作成が必要でした。 国からの通達がぎりぎりだったため、ケアプラン作成ソフトの納品・パソコンへの導入

おみおくりのあとに

Kさん(女性)にお会いしたのは12月の初めでした。 「最期は自宅で過ごしたい」 という思いで退院され、自宅に戻られました。 2回目にお伺いした日、帰り際に私を追ってご主人が玄関先まで出てこられ、 「先生から、妻は余命あと1ヵ月と言われています。年越しはできないかもしれません。どうぞよろしくお願いします。」 そうおっしゃいました。 Kさんはお話を長くされると苦しくなるので、あまりお話はされませんでした。 それでも、 「○○がしたい。」「○○したくない。」 とはっきり意思

一杯の紅茶

私が訪問看護に従事して、数ヶ月たった頃の、訪問看護師としては駆け出しの頃の話です。 Mさんは、自宅で在宅酸素をしながら過ごされていました。 徐々に食事が減り、うとうとされることが多くなり、いよいよ水分も取れなくなりました。 自宅にて点滴をすることになり、お伺いした時のことです。 ご高齢で、しかも数日食事をされていないので、脱水状態。点滴できそうな血管が見つかりません。 (この日、私は自宅での点滴の実施は初めてでした) 1回、2回と試みるも失敗。3回目も・・・すぐに漏れて

怒りの向こう側

Mさん。70代・男性。 呼吸器の病気があり、在宅酸素を使用。奥様が仕事をされているため、日中は1人自宅で過ごされていました。 病気がすすみ、少しの動作で呼吸苦が出現するようになり、今までは何とか1人で出来ていた事が1人で行うのが難しくなりました。 また、奥様の手を借りながらの入浴も、動作に伴う呼吸苦の為に困難となりました。 Mさんは、今まで1人でやってこられた方法や、こだわりが強くありましたので、ヘルパーさんの対応では身体のケアに関する援助は難しく、看護師の対応を希望され