オススメする高校数学の教材

一応、基礎から標準、応用とステップアップできるように調整しています

追記:この記事は前に自分が執筆した4本の記事の内容をまとめ、適宜修正を施したものになります。オススメのものとその代わりとなるものを途中途中で紹介しているので、かなり長い記事になっていますがご容赦ください。


1.インプットに向いている教材


入門問題精講

 分野それぞれに数学的に正しい内容を理解させる為の丁寧な記述が書かれていて、そのあとに基礎的な問題の演習をすることができます。解説が他と比べて丁寧でセンスがあるものになっているので、初学で使う本に最適です。
 
 証明も現実に応用できる様に(イメージは共通テストに近い)書かれているので、進めていく中で興味が出るような工夫がされています。

  ''特性方程式'' による解法についての解説が「不思議と上手くいけました」みたいなノリで書かれているという欠点はありますが、それ以外は教科書と合わせて使えば理解できるようになっていると思います。特に数IIIの完成度が高いです。
 そのため、新高3や既卒生で「IAIIBは共通テスト対策で割とやったけど、数IIIは出来ない」という人には「IIIだけ」入門問題精講という使い方もできます。このとき、IAIIBの受験勉強は基礎的な問題の演習から始めることができます。


入試数学の基礎徹底/数学ⅢCの入試基礎

 大学への数学で有名な東京出版が作っている問題集。大数の中で最も基礎の問題集。ただし、既に全範囲を習っていて、復習として使うのがおすすめ。

 分野別に分かれていて、各章のはじめに公式の証明とそれに関連する例題とその解説が書かれており、演習の部分も別で用意されています。証明に関しては、教科書よりも高度な書き方をしているので、より理解が深まると思います。

 先ほどの入門に比べて、質の良い問題が多く載っている(特にⅢC)ので、時間のある高1・高2生は2つともやってガッチリと基礎を固めるというのもお勧めです。


白チャート

 個人的に馬鹿にされることが非常に多い教材だと思っています。ですが、ポテンシャルはかなり高いと思っています。
 そもそも論、チャートって例題だけ比較すると、青/黄色/白でそこまで大きな差があるわけではありません。演習や章末問題、巻末問題のレベルが離れているので難しく感じるだけです。
 でも、ほとんどの人が例題しかやりませんよね? だったら、一番問題数の少ない白をやるべきだと個人的には思います。

 解説に関してはシンプルさと解り易さが両立していて、とても良いものになっています。漸化式が解ける仕組みとか、内積の意味といった、初学では躓きそうなところの説明が充実しています。

 例題も最低限のものは揃っています。ただし、ⅢCは一段階レベルが低くなっているので計算練習にしか使えないと思います(ただ、こういう計算を正確にできるかで大きな差がつく)。
 章末問題は例題の繰り返しがほとんど解かなくて良いです。例題だけだと次解けるか不安だと感じるなら、下の演習もやったほうがいいですが。

 前述の入門と比べると、演習量を増やしたい!!と思っている人は、この本をメインにして勉強するといいと思います(特に基礎がまずいと感じている高1生にオススメ)。


文系の数学/数学Ⅲ 重要事項完全習得編

 白チャートやこれから紹介する問題量の多い教材で消化不良を起こしそうな人、現在進行形で起こしている人にオススメ。

 解説パートの講義で周辺知識を得ることができる点,必勝のポイントとして要点がまとめられている点が特徴。
 ほかの基礎的な教材に比べて問題数が少ない分,1題1題重要なポイントを意識しながら進めていくのが必要になっています。

https://www.amazon.co.jp//dp/4777213617/

https://www.amazon.co.jp/dp/4777223523/

NEW ACTION LEGEND

 現状の網羅系参考書の中では1番完成度が高いと思っています。概念の説明や定理の証明が良くまとまっているからです。コラムとして帰納法のアルゴリズムの変更や``逆像法''、外積・正射影ベクトルについてなど、高度な知識もまとまっています。

 問題の解答解説については別解が割と多い点が特徴です。数学をほんのちょっとだけ高度な視点で見ることができていると「こっちで解いたほうがよさそう!!」と言いたくなる解法がよく載っています(”大数”に似ている)。「定義に戻る」みたいな、本当に大切なこともしっかりと書かれています。

 例題がチャートやフォーカスゴールドと比べて簡単である、ことを弱点として主張する人もいますが、Let’s try と呼ばれる章末問題までやることでほとんどの頻出問題をカバーできています(章末のレベルも抑えめになっているのでやりやすい)。

下記参照: ニューグローバル×LEGEND の1章と合わせれば、過去問に入る前の基礎固めはほぼ完璧です。

追記:既に学校でチャート式やフォーカスゴールドが配られている人は買い替える必要はありません。


ニューグローバル×LEGEND プレミアム版

 先ほどのLEGENDは解き方についての説明に重きが置かれていて、基本となる知識を整理する手助けはほぼありませんでした。しかし、この本も併用することで基本知識の整理・定着と解き方の選択に関する解説の区別をしっかりとできるようになります。

 ⅢCは未対応ですが、LEGENDでほとんどの前提知識をカバーできているので他の本で補う必要はありません。

 ただ、レジェンドを使っていない受験生は使わなくていいです。


入試数学「実力強化」問題集

 学校専用教材であったが、最近になり市販されるようになった良書。問題がぎっしりと書かれていて、後ろに解答がまとめて書かれている形式です。

 解答がかなり簡潔で、基礎が固まっていると読み易いと感じる人が多いと思います(大数や天空への理系数学に近い)。各問題の解答の後に一言二言の解説が書かれていて、かなりのハイクオリティになっています。高度なテクニックも漏れ無く書かれています。

 後、この本の特徴として、問題とその解答とは別に、「要項集」というまとめがあります。これも教科書学習が一通り済んでいる学生には役立つものになると思います。「内積の意味」「斜交座標」のような知識も含めてまとまっています。個人的に帰納法の説明が良いと思いました。

 基本的にイメージに訴えて印象付ける事を主眼に置いた説明になっているので、数学科向きの細々した事を気にしてしまう学生は、少し注意が必要です。

 問題の内容については、「定石習得」という意味での網羅性は完璧です。問題数は1292題で、本のサイズ感もあって相当重そうに見えますが、1/3~1/2は’’軽い問題’’になっているので、実際には1000題強くらいの分量だと思って良いです。

 この’’軽い問題’’というのは、「色んな問題でよく使うテクニックの部分」のことで、これだけを上手く単体の問題として取り出し「1問」として扱っています。これのおかげで重要なテクニックを印象付けて、定着させることができるようになっています。

 ほかの本に比べて説明が長くなりましたが、まとめると簡潔に高校数学全体を見渡すことができる本になっています。ただ、注意点も多く、

・チャートなどの基礎的なものを1つやらないと十分な効力が出にくいが、そこまでの時間的余裕がある人は少ない

・確率の問題で数列の知識を前提にしているような、つながりのある問題がある

といったものがあります。

 そのため、中高一貫で高2前期くらいまでに数ⅢCまで終わる高校だったり、既にチャートなどで基礎知識は十分定着している浪人生が使うのが良いと思います(ターゲット層がかなり狭い)。


1対1対応の演習

 例題と演習問題が1対1になっている参考書寄りの問題集。基礎的な問題を高度な考え方で解いた場合の解説が多いので、問題を解くだけならそこまで難しくありません(解説を理解するために必要な難易度が相当高いということです)。

 ただ、確率漸化式のような頻出な問題であっても例題と類題の2題しか載っていないので演習不足になりやすい点に注意です。また、例題と類題で覚えなければいけない解法が少し違う(一対一ではない)ので、例題だけ学習して、そのあとは姉妹本のスタンダード演習につなげるのがおすすめです。


新数学/数学IIIスタンダード演習

 載っている問題は標準レベルがメインなもののやや基礎側が手厚くなっています(特に数Ⅲの積分)。選ばれている問題もあまり頻出ではないが、典型的なものまで載っているのでかなりの大学に対応することができます。

 注意点としては、一対一と同じで解説が少し簡素になっていることです。ただ、各問題の解答の前に書かれている短いコメントも合わせて読むことで理解しやすくなっています。

追記:理系選択で一対一6冊とスタ演2冊やるのは時間的に難しい場合は、一対一はⅢとCだけで、スタ演2冊をやりこむみたいな使い方もいいです。
一対一は完成度が高い分野とそうではない分野が明確なので、参考までに画像を載せておきます。

これに加えて、複素数平面も基礎がまとまっていて使いやすくなっている

※冊数が多いので、Amazonのリンクではなく、東京出版のリンクを添付しておきます。



標準問題精講

 よく「1対1と同レベル」みたいに言われる本です。
 IA IIB IIIで筆者が違うのでレベル感がバラバラですが、IAIIBはほぼ同じ、IIIは標問のほうが問題も解説も難しいといった感じです。

 こちらのほうが癖のないレイアウトになっているので、大数が使いづらいと感じた人にはお勧めです。ただ、初見ではパターン問題に見えないものが少し多いと感じる(特にⅡB)ので、その点には注意です。

余談:標問Ⅲを気に入った受験生は、同じ著者が書かれた’’探求と演習’’というのも見てみることをお勧めします。



2.アウトプットに使える教材


理系数学の良問プラチカ IAIIBC

 パターン問題が多く、レジェンドなどの問題集の例題を学習した後に演習するのがかなりお勧めです。本当に質の良い問題が載っているのですが、解説が一切無く、解答も極めて平凡なものになっています(河合塾の特徴)。
 なので、自力で抽象度の高い理解をすることができる頭の良い人向けの本になっています(あるいは定期的にサポートしてくれる人がいる環境を作れる人向け)。

 また、数Ⅲ版に関しては特徴として、典型問題がほぼなく、背景に大学数学が絡んでいる問題が多いということがあるので、シリーズでそろえることはお勧めしません。(東工大は出題傾向が似ているので除外)

 代用としては、同じく河合から出ている理系272を買って、プラチカは買わないか標準的な問題でまとめられているCanPassⅢCと組み合わせてるのがいいです。特に272は1冊で数ⅢCまでカバーできるので非常にコスパがいいです。



理系数学マスト160

 プラチカや272と比べて、問題数もレベルも抑え気味になっています。載っている問題の質、解答の詳しさ、知識の整理を含んでいる解説など、とにかく使いやすいです。

 コンパクトにまとまっている問題集は今まで、入試の核心標準編しかなくて、こちらは解説が良質なものの、載っている問題のレベル感がかなりバラバラでどんな成績の時期に使うべきなのかが明確になっていなかったことが課題としてありました。マスト160は地方国立のような基礎を重視する大学を志望している受験生でも十分に使いこなすことができるのでお勧めです。

追記:通過領域の問題の解説で「直線が通る⇒解が存在」って書いていますが、ここは「⇔」とすべきです (よく言われる「逆は明らか論争」です)。まぁ、細かい記述が気にならない受験生はスルーで大丈夫です。

追記:東進が問題数を抑えたものを新たに出版した模様。数Ⅲを含めなければ100題でカバーできるのはかなりコスパが良いと思う。


3.自力で解く力を付ける為に使う教材

 高度な問題を解くときに詰まった場合は

  • 基礎知識を実戦で使える様に整理する、

  • 何をすべきかを把握し、整理する、 

の2つのアプローチがあります。
 ここからは、これらを’’知識’’、’’突破’’として、教材を紹介していきます。


入試数学の掌握

 3冊シリーズ。知識・突破ともに詳しく書かれています(突破に関しては、自分で整理する必要があります)。

 凡人が東大や京大、東工大の数学と戦うために必須になる本です(それ以外の上位大学志望でも、数学を高得点で安定させたい場合にはオススメです)。詳しい説明をしてくれている記事があるので、リンクを添付しておきます。

注意:1つ前の課程の本なので行列が含まれています。


世界一わかりやすい京大/阪大の理系数学

 この2冊は京大/阪大の過去問を例題とその類題として提示し、解説では、どのように’’突破’’をしていくのかを詳しく書いてくれている。

 突破する方法を提示→それに必要な知識を整理→答案を作成→追加の解説のような構成になっている。いわゆる数弱でも使いこなすことができる。

 問題も分野ごとに分けられていているので、数学を全範囲終わっていない人でも習った範囲だけを進める事ができるのも、良い点です。

https://www.amazon.co.jp/dp/4046056282/

注意:ここから紹介する本はIAIIBの内容だけを取り扱っています。


真・解法への道

 基本的なものを中心に知識に関する説明をかなり丁寧に書いてくれています。特に不等式が良いです。
 分野の分け方が教科書に似ているので、「等面四面体」「完全順列」みたいな、知識を知っていれば解くことが容易にできる問題が取り入れられています。

 先ほどの掌握よりも知っていなければいけない前提知識の敷居がかなり低くなっているので、より多くの受験生が取り組める本になっています。

 レベルについては、例えばレジェンドの例題とLet's Tryをしっかりと取り組んでいれば、無理なく入れる人が多いというイメージです。レジェンドにはこの本がには載っていない’’突破’’に関する記述が多く書かれているので、かなり相性が良いです。

 問題数が多い(100問)ので、時間切れにならないように注意してください(特に現役生)。

https://www.amazon.co.jp/dp/4887422482/


リアル入試数学

 知識に関する解説がかなり載っています。特に整数と図形が素晴らしいです。問題のレベルも今までのものと比べてかなり抑えられているので、万人に受けがいいものになっています。

 ⅢCも必要な人は同じく駿台のハイレベル数学の完全攻略を併せて使うことをお勧めします。
 この科目は知識の量で解くことができる問題の数が変わるので、既存の知識を整理して類題を解けるようになることをコンセプトにしているこの本は科目の性質に合っているのでお勧めです。

https://www.amazon.co.jp/dp/4796113428/

https://www.amazon.co.jp/dp/4796113592/

4.高度な問題集

 今まで紹介した教材だけでもやりこむのに下手したら2年かかる人もいるので、過去問演習もして、時間に余裕がある人だけ取り組むようにしましょう。


Mathematics monster

 問題集じゃなくてすいません。YouTube上で数学の入試問題の解説動画を定期的に挙げていらっしゃるチャンネルです。

 選ばれている問題の意図を明確に伝えてくれるので、自習が非常にしやすいです。問題を解く中でどうしても必要になる途中の処理に関する解説もあるので、分かりやすいです。

 筆者がⅢの微分積分でお世話になったので、紹介させていただきました(これが気に入った人は、荻野先生の天空への理系数学を買うことをお勧めします)。


文系の数学 実戦力向上編

 国立文系志望などあまり難問を出題しない大学志望者,数学に割くことのできる時間の少ない受験生にオススメ。

 姉妹書の重要事項完全習得編と同じで、問題数が少なく、解説が充実しているので、巻末の演習問題までしっかりと取り組めば、数学で周りと大きな差がつくことはないでしょう。

 数ⅢCの内容がない点に注意してください。

https://www.amazon.co.jp/dp/4777213625/


上級問題精講

 高度なパターン問題集としても思考力チェックとしても使えます(後者として使うには教科書的な分野別になっているのが微妙)。
 選ばれている問題もその解答・解説も文句無しの出来です。入試特有のテクニックも数学的な記述もかなりのクオリティです。

※基礎的な問題もやりたいと思う人は、大数のスタンダード演習をお勧めします。

https://www.amazon.co.jp/dp/4010349247/

https://www.amazon.co.jp/dp/4010349255/

終わりに

 最近、高校数学に関連している参考書の数はかなりの数になっています。
そのため、いろいろな問題集に目移りしてしまう人も少なくないでしょう(自分もそうでした)。

 個人的な意見ですが、網羅系が学校で配られた人は配られた教材と過去問は必ずやってほしいですが、他の教材に関しては自分にとって一番いいものに出会うまで乗り換えてもいいと思います。

 最後に、大学への数学で有名な安田亨氏が尊敬しているる一松
信京大名誉教授のお言葉を引用させて頂きます。

 「書籍は三割も読めば読破したことになる」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?