幼稚園編

私はお寺が経営する幼稚園に通っていた。1学年が20人弱という比較的規模の小さいところだった。花まつりや涅槃会など、お寺ならではの行事も多くあったと記憶している。園内にある本堂に週一回集められ、全園児が正座でお経を唱えるという光景は今振り返ると少し不気味ではある。

正直、幼稚園時代で1記事書けるほどの記憶が残っていない。唯一強く記憶していることと言えば、片足立ちである。そう、片足立ち。私は片足立ちで歴代の記録を大きく更新しヒーローとなったのだ。

幼稚園のころはとにかく引っ込み思案で、外で遊ぶのがあまり好きではなく、園庭のはじっこでひたすら泥団子を磨いていた。運動神経も悪くて運動会はいつも憂鬱だった。そんな私だが、年に一度の体力測定で思いがけない才能を発見することになる。短距離走や鉄棒、上り棒など様々な種目で案の定撃沈していたわけだが、片足立ち(右足)という種目で、なんと10分越えの大記録を打ち立てたのだ。ほかの園児たちが1分前後で脱落していく中、とんでもない才能を発揮してしまった。しかし、あまりにも地味である。片足立ちが長くできたところで、みじんも役に立たない。記録していた先生はとてもほめてくれたのだが、その言葉がむしろこの虚しさを引き立てていた。先生はみんなの前でも私の大記録を発表してくれたのだが、本当に勘弁してほしかった。ほかの種目は散々なくせに、あいつ片足立ちとかいうわけわかんない競技でイキってやがるぜ、というみんなの心の声が聞こえてくるようだった。この時はじめて、善意は意図せず人を傷つけうるということを学んだ。

片足立ちが、私を一つ成長させてくれたというお話でした。

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