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6年ぶりにデザインフェスタに参加したワケ

(見出しの写真は友人が撮ってくれたやつ。アオリめっちゃかっこよい)
デザフェス55にライブペインティングで参加してきた。前回参加したのは6年前。まだCalligraffitiを始めた最初の頃で、とにかくでかい壁面に「書きたい!」という気持ちだけで参加した。今回は6年の歳月を経て、自分の文字がどれくらい変わったのか。壁面の使い方や書くときの気持ちに変化があるのか。そして何よりも、しばらく自分のために文字を書くということをしていなかったので、原点回帰の意味もあって参加を決めた。

そもそものはじまりのはなし

十数年前に「文字を書こう」と思ったのは、世界平和のためだった。ある人が「世界中の人々が創造者になったら、世界から戦争がなくなる」と話してくれたのがとても印象的で。でも「創造する」って誰にでもできることではないから、誰にでもできる「創造」ってなんだろうなぁと考えていたときに思いついたのが「文字」だったのだ。
書き文字は100人いたら100通り。間違いなく自分だけのオリジナルだ。きれいな文字も悪筆も、等しく創造物として面白い。あとは自分が自分の文字を「創造物です!」自分を「創造者です!」と思えるかどうかが問題だ。ならばまずは僕が文字を書いて創造物として発表しよう。
そんな気持ちだった。

文字を書いて、より面白い表現をネットで探した結果出会ったのが「カリグラフィティー」だった。アムステルダムのアーティスト、ニールス ”shoe” ミュルマンの作品がある日目に飛び込んできて、ハマった。伝統的なカリグラフィーの文字で、壁にグラフィティする。めっちゃかっこいいと思った。僕も書いてみたい!と思った。このへんから「みんなが創造者になれる文字」という当初の目的はだんだん薄れてしまった(だめじゃん)

毎日ネットを徘徊して、カリグラフィティーの作品を見まくった。
この世にはパラレルペンというものがあるらしい!と知って、世界堂まで買いに行った。平筆で文字を書く練習をめっちゃした。そうしているうちに「やっぱり大きな壁面に書きたい!」という気持ちは高まっていった。

たまたま友人がデザフェスに出ようと企画していて、僕もそれでデザフェスの存在を知った。3.6m x 8m のパネルにライブペインティングできるらしい。やばい、出たい。すぐに応募要項を調べて応募した。
6年くらい前、カリグラフィティー界隈では文章を円形に書くというのが流行っていた。ポクラス・ランパスというアーティストがビルの屋上いっぱいに円形の作品を書いてドローンで空撮した動画をYoutubeにあげていた。

El Seedがチュニジアの50の建物の壁面の文字を書くプロジェクトをしていたのも5、6年前だったかな。

「時代は円形だよね!」と単細胞に考えた僕は、6年前のデザフェスに円形のカリグラフィティーで挑んだ。見ている人にもわかりやすいだろうと思ったし。結果的にたくさんの人に足を止めていただいて、僕自身も楽しく2日の行程を過ごすことができた。よい経験だった。

6年前のデザフェス参加作品「静寂と祈り」

6年たって気負うのをやめた

自分で言うのもなんだけど、前回は色々めっちゃがんばったと思う。名刺を作って、友達に動画の撮影を頼んで、動画はちゃんと編集もしてYoutubeで公開もした。その動画や作品の写真が、現在仕事で壁画を書かせてもらうときの宣伝材料になったりもしている。
だから今回もデザフェス参加が決まった半年くらい前は、またいろいろ頑張るつもりでいたのだ。名刺を作って、手元にある在庫のTシャツを物販したり、新作も作ろうかな?とか。

ところがデザフェスが近づけば近づくほど、反比例するようにやる気はどんどんなくなっていくw デザフェスのために色々と準備をするのが億劫になっていく。6年の間にあちこちで壁に文字を書く仕事をいただいて書きまくっているうちに、6年前の「壁面に立ち向かう!」的な初々しいモチベーションはどこかへ行ってしまったらしい。デザフェスで書くモチーフは3月くらいに決まっていたのだが、どう書くかは「億劫」が先にたってなかなか決まらずにいた。

デザフェス10日前くらいになって「ああ、もう見てもらうために書くのはやめよう」と思った。ライブペインティングなので、やっぱり制作過程を見てもらう中で、足を止めてくれる人が時間経過で変化していく壁面を楽しめるようにデザインを考えようと最初は思っていたのだ。6年前の同心円で広がる文字なんてのは、やっぱり見ていて面白かったと思う。でも今回は僕が変化を楽しめればいいや。僕が僕の中で作品がどう変化していくかを楽しむために書こう。そう考えたら気が楽になった。名刺を作るのをやめて、物販もやめて、予定していた散髪や髪の毛の色を変えるのもやめて、筆と絵の具と必要な道具だけコンパクトにまとめてデザフェスに向かうことにした。

今回の作品のはなし

デザフェス55作品「無限の記憶を得るために」

会場についてふと「さすがに書いている人が何者なのかわからないのは不親切か?と思って、まずはお知らせを書いたw

割付考えずに書いたので歪んでいる…
やっぱり怖かったのか、話しかける人は少なかった。

お知らせは書いたけど、作品の文字の内容については知らせず仕舞いだった。何人か声をかけていただいた方にはお話しした。デザフェス終わった今、書いた文字の内容も記しておこうと思う。

今回書いたのは虚空蔵菩薩真言である。「ノウボウアキャシャキャラバヤオンアリキャマリボリソワカ」をローマ字にして「noboakyashacarabayaonaricamarivorisowaka」と書いてある。
虚空蔵菩薩真言は100日で100万回となえると無限の記憶力を得ることができると言われている。弘法大師空海がこの苦行を収めて無限の記憶力を得たというのだが、100日で100万回、1日で1万回。寝食を惜しんで行えばできそうだけど、ぶっちゃけムリゲーだ。だからチベットの、1回まわすと経典を唱えたことにしてくれるマニ車のように、壁面に触ると僕が書いた分だけ真言を唱えたことにしていいよ、というコンセプトで作品を作った。
もちろん、上に書いたように、そのことはほとんど誰にも話さなかったし、文面でお知らせもしなかったので完全裏設定である。お話しをした何人かのお客様が壁面に触れていかれたので、その人達は残りの99万9千9百回くらいがんばって唱えていただきたい。
ちなみに無限の記憶力を得るのも苦行だと思うので(きっと何も忘れることができないので)心してほしい。無限の記憶力とかやばすぎるよな。

脱線した
作品の話である。
虚空蔵菩薩真言を書くことは数ヶ月前には決めていた。どう書くかはなかなか決まらなかった。久しぶりの大きな壁面を埋め尽くすのか、ヌケ感を作るのか。文字だけにするのか、なにか他のモチーフを絡めて書いていくのか。
でも、デザフェス10日くらい前になって、「もうどうにでもなーれ」モードに突入してしまった。大雑把な作業手順だけ決めてあとはその場のノリのまかせよう!という気になってしまったのである。当日の自分に丸投げである。
壁面は黒だから、使う色は黒、白、金にしようと決めた。といっても黒い壁面に黒だと見えないから、黒に紺色を混ぜて、すこし浮き上がるようにして…

デザフェス1日目

黒い面に黒で書き始める

書いてみたら、思ったほど浮き上がらなかったw
予想外に黒絵の具が浮き上がらなかったことで、作品全体が当初のプランから少しずつ外れてゆく。
本当は黒で書いた後に金で書く予定だったのだけども、もうすこしキャンバスにテクスチャ感を出したくて、青でレイヤーを重ねていく

2レイヤー目、青

これが意外と面白かった。
足を止めてくれた人たちも、このへんから何が起きているか見えてきて楽しくなってきたのではないかと思う。
実は書いているとよくわからなかったのだけど、写真に撮るとすごく青く光るのだこれ。

写真にすると、目立つ青

青の上から銀色を重ねることにする。
真ん中から放射状に文字が広がってきたので、その流れだけは守ることにして、あとは筆の進むままに重ねていく

銀をかさねて、白色のマーカーで盤面をよごしていく

銀色を重ねていたら、上下を二分する線が欲しくなったので、白マーカーで細かく文字を入れる。そうしたら、細い踊るような文字も散らしたくなったので、落書きをどんどん入れていく。
ここで1日目が終了

デザフェス2日目

1200mmの水準器

どうでも良い話なのだけど、壁画書きの相棒、1200mmの水準器は、なんか中二心をくすぐられるアイテムだ

1日目の最後のほう、実は作品の着地点がわからなくなっていた。
あのまま終わりにしちゃっても良いくらいだなぁ〜という気分だった。ホテルでひと晩作品の写真を眺めてどうしようかなーと考えていた。
決めきれないまま迎えた2日目。壁の前に立って、とりあえずまた黒で重ねよう!という気になった。

真ん中には金を置くと決めていたので真ん中を塗りつぶして、あちこち黒でヌケをつくっていく。書いているうちに、次のレイヤーのプランがなんとなく頭に浮かんできた。次は白(と薄い水色)だ!

壁面がキレイになりすぎたのが気に入らなくて、絵の具を放り込んで飛沫をちらす。

ここで、ようやく自分の中で今回の作品がストンと収まった気がした。
後は画面を金で締めて終了!

できあがり

で、最終的にこうなった。
当初の予定では、黒い文字の上に金色が中心に集まるように配置されて、最後に白でカタカナをリボンのように入れる予定だったのだけど、自分で勝手に成長していったこの作品は、自らここをゴールとしたようである。

デザフェス終わって思ったこと

改めて、大きな壁に書くのは楽しかった。
仕事がからんでいないとなおさら楽しいw
そして、文字だけでできる表現がまだまだあるなぁと感じた。
作品に関して言うと、まだまだ気にいらない部分もあるし、改めてみると、ああすればよかった、こうすればよかったと思うところもいっぱいある。
でも全体的には大満足だし、もっと壁画書きたいと思った。
なんでこういうサイズの作品を書こうとするとデザフェスしかないんだろう。残念で仕方ない。
ただ、デザフェス参加はまたしばらくないかなー
ありていに言って出費が激しすぎるのだよ。
今回だって、参加費に宿泊費に食費やらなんやらで10万くらいふっとんでる。当然ここに名刺とかステッカーとか物販の準備とかしたらもっとお金かかってくる(売れればペイできる可能性はもちろんあるけど)。
結論としては、1人で物販もせず、巨大ライブペインティングをデザフェスでやるのは、超贅沢でめっちゃ楽しい遊びである。(宣伝効果はもちろんあるけど)

以上。デザフェス55に参加して、雑感でした。


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