うつ病患者の「大丈夫」は「どうでもいい」かもしれません
皆さんの周りにうつ病を患っている方はいますか?
もしいるなら、その人と会話はできているでしょうか?
身近にうつ病の人がいる場合、その人の将来を心配して
「そろそろ学校に行ったら?」とか
「アルバイトぐらいから始めてみたら?」などの話を切り出すこともあるかもしれません。
その時にぜひ気を付けてもらいたいのが「分かった」「そうするよ」という返事があっさり帰って来た時です。
なぜこれらのポジティブともいえる言葉に気を付けてもらいたいのかというと、それはうつ病の人が言う「大丈夫」は「どうでもいい」を意味しているかもしれないからです。
「嫌だ」は自分の身を案じているからこそ
その人の将来を心配して学校や仕事を勧めているのに「まだちょっと...」とか「うーん...」とか、気乗りしない返事が返ってきたらますます心配ですよね。
でも、否定的な返事というのはその人なりに自分の将来を考えているからこそ出てきた言葉かもしれません。
「今学校で意地悪なことをされたら、次はもう立ち直れないかも」とか「次のステップがいきなり仕事で大丈夫なのだろうか?」など、その判断の正否はさておいて自分の選択によって自分の身にどんなことが起きるかを考えているのだと思います。
では「大丈夫」「分かった」「そうするよ」という返答はどうでしょう?
考えた末にそれらの言葉が出てきたならとても良いことだと思います。
きっと、ご本人に「前に進もう」と思えるほどのエネルギーが回復してきたのでしょう。
しかしその言葉があまりにも力なく、あっさりとした返事だったらなら、ちょっと考えものかもしれません。
上でも書きましたが「嫌だ」という返事は自分のことを考えた結果出てくる言葉でもあります。
ところが自分の将来への無関心さや思考する力や意思を伝える力の低下している場合、NOと言うことができなくなります。
なぜなら、自分の事なんかどうでもいいからYESと言おうがNOと言おうが一緒だし、自分の意思を伝えて衝突するのも面倒という投げやりな状態に陥っているかもしれないからです。
「自分のことなど知るか、どうにでもなれ」
「無理して学校に行って、調子を落ちるところまで落としてやろうじゃないか」
というメンタリティで発した言葉の可能性もあります。
「自分で自分のことを大切だと思えない」というのは、うつ病が悪化しているときによく訪れる思考状態だと、知ってもらえたら嬉しいです。
投げやりな「大丈夫」で行動してしまうと...
もしこの投げやりな大丈夫を信頼して学校やアルバイトに送り出すとして、どんな問題が起きうるでしょうか。
想像しやすい問題としては、本来前に進める体調ではないのに無理に前進してしまい、さらに体調を落ち込ませてしまうことだと思います。
投げやりな状態というのは、うつの症状があまり良くないときにありがちです。
この状態ではストレスを処理する能力も著しく低下し、元気な時では受け流せたようなことにも、致命的なダメージを負いかねません。
例えば
「アルバイト先でキツめの言葉で指導を受けた」
「久しぶりに教室に戻ったら、クラスメイトに嫌みや皮肉を言われた」
などの状況に出くわしてしまったら、それはかろうじて立っているのに”おもり”を乗せられたようなもので、ポキっと脚が折れてしまいかねません。
「どうにでもなれ」とやぶれかぶれに行動した結果状況が好転する、ということもあるかと思いますが、やはりそれは危険な賭けです。
できるなら十分な休養を取って、ある程度のストレスには対応できるようになってから次のステップに進んで欲しいですね。
「大丈夫」と言われたら「本当に大丈夫?」と声掛けを
うつ病でダウンしている人が近くにいると、何もせずまるで怠けているかのように見えて将来が心配ですよね。
でもそれは決して怠けているわけではなく再び前に進むために必要な時間なんです。
脚を骨折して一日中ベッドに寝ている人に「怠けている」とは言いませんよね。
それと同じ感覚で見守ってあげて欲しいです。
うつ病は骨折とは違い症状の改善がわかりづらく、回復までに時間がかかります。
ですが、うつは必ず良くなる病気だとも言われています。
それは「一日中布団から出られなかったけど、今は社会に復帰して活動的に日々を過ごせている」私の経験からも本当にそう思います。
しかしその回復の過程では波があり、その波を安定させるには周囲からの理解とサポートが必須です。
なのでその人のことを考えて次のステップについての話を切り出すとしても、本人からの返事が乗り気でなかったら、その気持ちをまずは尊重して受け容れてあげて欲しいです。
そして、もしもあっさりと「大丈夫」という返事が返ってきたらその時は「本当に大丈夫?」「無理していない?」と、聞き返してみてあげてください。
それはその人の真意を探るだけでなく「自分のことなんかどうでもいい」と思っている人に「あなたのことを心配しているよ」と伝えられるチャンスだからです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?