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[NFL]ボー・ニックス_2024シーズン開幕に向けて

毎シーズンそうなのですが、フットボールの数あるポジションのうちクォーターバックというのは少し特別です。
たとえ出場経験に乏しいルーキーであってもクォーターバックというのはチームの顔だと思われていますし、クォーターバックの出来の良し悪しはチームの成績に直結すると考えられています。
そういうこともあり、クォーターバックのニュースは常にフットボールのニュースの中心であり続けます。

2024年シーズン開幕を控え、今年も多くのクォーターバックが注目を集めています。
スーパーボウル3連覇を狙うチーフスのアイコン・パトリック・マホームズ、現役終盤での新たなチャレンジをリスタートするアーロン・ロジャーズ、「オワコン」でないことを証明する旅を始めるラッセル・ウィルソン、CJストラウドの昨年の成績はビギナーズラックだったのか、それとも伝説の始まりだったのかというのも注目すべきポイントです。
そんな中わたしが最も注目するクォーターバックはデンバー・ブロンコズのボー・ニックスです。

デンバーからクォーターバックがいなくなった

デンバー・ブロンコズがスーパーボウルを制したのは2015年シーズンの終わりのことです。
この栄光から数日後、デンバーから「勝てるQB」がいなくなりました。トレバー・シーミアン、ケイス・キーナム、ドリュー・ロックは「勝てるQB」ではないとみなされていましたし、ジョー・フラッコ、ラッセル・ウィルソンのデンバーに来てからのファンからの扱いは「勝てるQB"だったけど"」というものでした。

2024年シーズンイヤーが始まった時点で、デンバーにいたのはジャレット・スティッドハムとベン・ディヌッチという、ちょっと顔が出てこないクラスのQBでした。
当然このふたりで開幕を迎えるはずはないと思われていましたので、デンバーはドラフトで有望QBを指名するのだと思われていました。
デンバーは比較的上位の全体12位という指名権を持っていました。

有望QBが顔をそろえたドラフト

2024年はQBの当たり年と言われ、実際1巡で6人ものQBが指名されました。
ドラフト開幕前のQBのランキングはおおむね次のようなものです

ケイレブ・ウィリアムズ(絶対的No.1)
ジェイデン・ダニエルズ(2番手グループ)
ドレイク・メイ(2番手グループ)
JJマッカーシー(即戦力クラスの4番手)
マイケル・ペニックス(将来性枠の5番手グループ)
ボー・ニックス(将来性枠の5番手グループ)

可能であればウィリアムズ、ダニエルズ、メイを、そうでなくともマッカーシーは指名したいところです。
ところがデンバーが指名権を持つ12位より上位の指名権を持つチームの中でQBを必要とするチームは4つもありました。
このままではデンバーは即戦力というには少し心もとないペニックスを指名するしかありません。
デンバーはトレードアップの必要に迫られていました。

トレードアップせず・・・

迎えたドラフト当日、大方の予想通り全体1位でシカゴに指名されたのはケイレブ・ウィリアムズでした。
その後2位でダニエルズが、3位でメイが指名されてしまいます。
この時点ですでに最良の選択肢は、トレードアップによるJJマッカーシー指名で、即戦力"クラス"をかろうじて確保するしかなかったのです。
しかしデンバーはそれすらも行いませんでした。
全体12位の指名順が回ってきたとき、(予想外のチームがペニックスを指名したこともあって)、デンバーに残されていたのはボー・ニックスしかおらず、彼を指名することになります。

この指名は誰の目にも「仕方なく」「トレードアップ戦略をミスしたことにより追い込まれて」「最悪の形で」指名させられてもののように見えました。
複数のニュースサイトで複数の評論家が、デンバーのこの1巡指名に「32チーム中最悪の指名」という評価を与えました。

上層部による勝利宣言

この世間の声に、デンバー上層部は猛反論を試みました。
ボー・ニックス指名は狙い通りだと。
デンバー上層部のひとりはXで「ケイレブ・ウィリアムズが指名できないのであれば残りのうち最高のQBはボー・ニックスだと考えていた」と語り、トレードアップを行わなかったことは戦略であったと語りました。

このデンバー上層部による「勝利宣言」はデンバーのファンの多くを安堵させ、期待させましたが、それ以外のより多くの人々の目には苦しい言い訳のように映りました。
裏アカウントでライバル芸能人を誹謗中傷していたことがバレたお笑い芸人の謝罪文のように「どう考えてもリアリティのない釈明」のように思えたのです。
この疑いの目の中、デンバーの地元紙はこぞって「ニックス時代到来」とでも言いたげなニックス上げキャンペーンをはじめましたが、これもやはりいわゆる「大本営発表」であると捉えられました。

デプスチャート発表。ニックスの順位は・・・

先ごろ、デンバーは非公式なものとしながらデプスチャートを発表したようです。
そこに載せられたボー・ニックスの名前は「3番手QB」の位置にあります。
現時点でエースQBの欄には5年目のベテランながらさして実績のないジャレット・スティッドハム、バックアップQBの欄にはボー・ニックス指名の直前に価値の高くない条件と引き換えに加入したザック・ウィルソンの名前が載っています。

この発表に、慎重で懐疑的なファンは「思った通りだ」との感想を漏らし、上層部を信じたファンは「なぜ?」という思いを抱いているようです。

しかしながら、このデプスチャートではすべての新人が各ポジションの最下位に並べられており、ボー・ニックスもその例外ではないという見方もあります。

ひと月後の2024年9月8日、デンバーはシアトルの地で開幕戦を迎えます。
そのとき最初のスナップを受け取るのがボー・ニックスではないと決まったわけではありません。
そしてその役割を担うのがニックスだったとしても、それがデンバー・ブロンコズの長年の「勝てるQB」不在の解消を意味するものではありません。

ただ期待と興味は尽きませんよね。



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