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SHOT2048信仰

承前


敬愛するゲームクリエイターである中裕司氏から下賜された「SHOT2048」、リリースから4ヵ月程経った。
吹けば飛ぶ様な木っ端ゲーマーがこれを評価するのは烏滸がましいとは思うが、自分の中でこのゲームに対する感想がある程度定まったので記録して置く。

概要


不要かもしれないが先にゲームの概要を列挙する、プレイした事が有れば読み飛ばして頂きたい。

・タイトル通り、このゲームは数年前に流行った「2048」と言うパズルゲームのオマージュである。(「2048」自体も「Threes!」のオマージュだが)

「2048」シンプルでルールも分かりやすい



・一手ずつターンでゲームが進行する「2048」とは違い、リアルタイムで3次元の盤上に12面体状のボール(以下ボールと呼称)を投げ込んで行く事で進行する。

・「2048」同様ボールには数字が振ってあり、同じ数字が振ってあるボール同士が接触すると1つのボールに合体し数字は合計された物になる。
(振ってある数は必ず2の乗数)

・合体した際に出来た数字がスコアに加わり、また一回の投擲で複数回合体した場合はコンボ数×数字がスコアに加わる。

・蓋の無い直方体状の盤面はやや奥側に傾斜しており、転がったボールは自然と奥から密集し合体が発生し易くなっている。

・ボールが手前に引いてあるラインを越えて静止したらゲームオーバーとなる。


shot2048、2048とはかなり雰囲気が違う
赤い部分より手前にボールが停止するとゲームオーバーだ


ハイパーカジュアルゲームとは何か

この様なゲームを殆どの場合パズルゲームと呼称するのが一般的だが、中裕司氏はこのゲームを「ハイパーカジュアルゲーム」と呼称している。あまり聞き慣れない言葉、と言うか氏の造語だろう。
なぜ従来のパズルジャンルでは無いのか。

結論から書くと、パズルゲームとは程遠いからだ(※個人の感想です)。

一般にパズルゲームと言われているゲームは、入力に対する結果がある程度予測出来、再現性が高いと言える。
同一の状況であれば、同じ連鎖が起き、同量のおじゃまぷよが降ってくる。

しかし「SHOT2048」はプレイヤーが結果を完全に予測する事は極めて難しい。
予測を阻害する要素が3つある。

1、物理演算で動作している
マス目状に仕切られた4×4のフィールドで平面のコマをターンベースで動作させる「2048」とは大きく違い、各ボールがリアルタイムの物理演算で動作し立体的なフィールド内で各々が干渉し合う「SHOT2048」は感覚的にピンボールに近く、1〜2クッション程度なら予想は付くがそれ以降となると人間の能力だとぼんやりとしか予想が付かない。

2、ボール投入速度がかなり速い
ボールの投入速度はコントロール出来ず一定で速過ぎる、制動距離は長く従って1の要素をさらに加速させる。

3、ボールが合体した際の挙動が恐らくランダム
同じ状況で繰り返し確認して見ると、接触時のボール同士のベクトルをある程度引き継ぎつつ全く新しいベクトルを与えている様に見える。
分かり易く書くと合体した瞬間にそれまでの弾道を半ば無視して真横に曲がったり、垂直に跳ねたり、減速したりもする。

この部分だけ見るとただの運ゲーに見えるが、そうでは無い。多分に属人的要素はある。

「SHOT2048」における最も重要なプレイヤースキルは「ミスをしない」だ。
上記の非予測性はボールが投入から何かに接触するまでは発揮されず、また投入する度に合体する事が出来ればそうそうボール群のラインは上がらない為、どこにどう投入するかは非常に重要だ(唯一の操作出来る要素なので当然と言えば当然だが)。
従って最も影響が大きいミスとは狙った様にボールを投入出来ない事だ。そして最も多いミスでもある。

この「ミスをしない」を阻害する要素がある。

このゲームの操作自体は至ってシンプルで、投入前のボールをタップしながら左右に平行移動をし、離す事で投入する。
速度や角度は一切変更出来無い、この為時間を掛ければミスをする事はほぼ無い。

だが盤面は待ってくれない、前のボールを投入してすぐに次のボールが投入できる様になる為、ピンボールしている盤面に直接ボールで干渉する事が可能だ。

リアルタイムで変化する盤面に対応して操作すれば当然ミスの恐れがある、しかしぐずぐずしていれば最善手のルートは塞がれるかもしれない。
待って居れば動いているボールが他と合体するかもしれない、しかしボールの勢いは途中で止まるかもしれない。

そして、この選択の連続がこのゲームの肝だと確信している。
自分の選択がダイナミックに良くも悪くも状況を変動させて行く様、それがこのゲームそのものと言って良いだろう。

結果は予想出来ない、しかし真摯に取り組めば最悪の結果を回避出来る事もあるし、稀に祝福を齎す事もある。
思考を止め、手を止める事こそが冒涜だ。

恐らく氏はこのゲームをパズルと呼ぶには予測不能要素が多くアクションが求められる部分も大きく、あまり先を考えず表層的な盤面に対応して行く事を求められる為、これを「ハイパーカジュアルゲーム」と呼称したのでは無いだろうか。

あと何だか照れも感じる。

現実と向き合う

カジュアルに遊ぶ分にはこのゲームはとても楽しい時間を与えてくれる。
しかし我々はカジュアルゲーマーでは無い。

ハイスコアを競う遊びとして捉えた場合、ハイパーカジュアルゲームは違う一面を見せる。
兎に角時間が掛かるのだ、私のハイスコアは200万程度だが、それでもこの時は少なく見積もって3時間は掛かった。

先の予想が付かない状況下で出来るだけ良い盤面を保てる様に何とか処理する作業を何時間も重ねなければならない。

気を抜いてはいけない、手を抜いてはいけない。
丁寧に、ミス無く、盤面を読んで、タイミングを掴んで、操作を繰り返す。

灯の油を切らせてはいけない。
丹念に、正確に。

それでも突然乱数が牙を剝いて死ぬ事もある、突然混沌とした盤面がガラ空きになる事もある。

嵐が来ないように祈りながら大波を越え続ける。 
まだ見た事の無い景色がその先にある事を信じて。


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