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運送業界及びその周辺業界における日本人の残業についての間違った考え方

最近、色々な国の色々な仕事についての考え方を知るにつけ、都市部でない日本人は間違った考え方が多いんだなぁと気づくようになりました。
今回は、まもなく運送業界としては深刻な問題である「2024年問題」のもとである「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が施行されます。
ですが、間違った考え方をしているところもあるので、実際非正規ではありますがドライバーとして勤務している私から、物流業界の面でのお話を書いていきます。

https://jp.indeed.com/career-advice/career-development/what-2024-logistics-problem-easytounderstand-introduction-law?aceid=&gad_source=1&gclid=CjwKCAiAkp6tBhB5EiwANTCx1F2HS4joC_Iwlb0F1X_guWCIoe0qLb7v9oEKLSr6k9rcr5lhBeVb_xoClWQQAvD_BwE&gclsrc=aw.ds

正社員の給料は基本的に「運んだ量」

どこのトラック会社でも、基本的に
給料=基本給+能力給
です。
また軽自動車宅配などの完全能力給(基本給がない)パターンだと、1件あたりいくら、っていう形になっていて、そこから車のランニングコスト(保険代、燃料代)を差し引いて給料になる、というパターンも。

前者だと勤務時間での残業代も当然ありますが、通常の一般社会人よりは低めに設定されてることが多いです(完全能力給を導入している会社だと残業代そのものの概念がない会社もあります)。
ではその能力給とはなにかと言いますと、基本は
荷物を運んだ量
です。
ここの計算式は会社によってまちまちです。実際に頂いた運賃の30~40%前後だったり、運んだ量でランク分けしてたり、一定のノルマ+インセンティブだったり。

運んだ量、というのは、体積及び重量です。大体両方を取っているケースが多いですが、重ければ重い物を運ぶほどそれに対する運賃は上がりますし、体積が大きければ大きいほど勿論運賃は上がりますから、給与にもそれが反映されます。

残業代が上がるけど・・・

たしかに、残業代がかなりの割増になるようになってるので、残業したら給料上がるじゃん?って人は多いと思います。
でも考えてみてくださいね。

先程も申し上げたように、給料の一部、ある意味重要なファクターを占める部分に「荷物を運んだ量」が関係していると言いました。
逆に言うと、会社によっては残業代はかなり小さいファクターです。普通のサラリーマンの感覚で見ると「なんじゃそれ!」っていうぐらい安いです。
つまり残業するだけ割に合わなくなってくる可能性があります。
それを50%割増されてもねぇ・・・・ということです。

仮に残業代が比較的高い値に設定されていると(後述しますが)残業削減となれば結局給料も下がることになるわけです。

残業は会社にもデメリットです。
法律的にも、(休日出勤は別で)年720時間以下、休日出勤を含めて月80時間以下の残業に抑えなければなりません(これについても後述します)。休日出勤が入る場合更に減らさないとこれは守れません。
(実際は祝日などや有給消化などがあればそれで回避できることが多いですが・・・)
ちなみに、これは罰則があり、違反すると「6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金」となります。
また、そうなると会社名が公表されるため、社会的にも悪印象になってしまい、評判が悪くなり、業績も悪化する可能性があります。
実際以下のサイトで検索すると、業務停止を食らったり、事業者許可を取り消される場合もあったりするようです。

そして、これは非正規社員にも当然適用されます。
こと派遣社員はその会社以上に厳しい残業規定があったりすることもあるので(ドライバー系は特にそうです)、無理に残業させると突然ブッチされる(いわゆる「飛ぶ」)とか、会社側が悪質と判断した場合派遣会社側で派遣社員を引き揚げる可能性もあります(実際にありますし私も経験しています)。

また、実は会社の一番お金のかかるところは、人件費です。
人件費で多くの人に残業払ったら、純利益は減ります。
あと後述の問題もあって人が減ります。
そうすると一人あたりのやらなきゃいけない「ノルマ」が増えてしまうのです。それできつすぎて辞める・・・となるともう悪循環です。
また、外注、つまり傭車や非正規(派遣社員)を頼むにしても、当然お金はかかります(実はむしろそっちのほうがお金がかかる)。
直接非正規のパートって手もなくはないですが、そうなると頼める量は決まってきます。

傭車の恐ろしさ

じゃあ単純に傭車に頼めば・・・という人がいると思いますが、そこも厳しい問題があります。
というのも、この業界、傭車はすなわち下請けですから、そこでさばききれないとなるとそこから更にそこが傭車を頼むことになります。さらにそこから・・・が続くと、(当然上位の下請けから孫請、ひ孫請・・・となると)その貰える金額から親請けがピンハネするわけです。

二次請け(つまり孫請け)ぐらいまでならまだなんとか利益は出なくもなさそうですが、この業界の恐ろしいところは 五次請 六次請 が普通にあるところです。支払われる金額が安くなった上に労働は変わらないとなればモチベは当然ダダ下がり、運送品質にも当然影響します。

また、そういうところに限って業界を分かってない初心者入れてたりする(おまけに教育まともにやってない)ので、更にそこで品質は下がります。現場に合わせた教育もやらないといけないのでその分一時的ですが人手も減る可能性があります。

残業は美徳と考えている人間が未だにいる

トラック業界での一番の問題はこれです。
たしかに残業することで多くの量をやることは可能です。
ですが、量ができずに結局遅くまで・・・とか、後述しますがわがままな客のために残業せざるを得ない人が居ます。
また勤務時間についての定義がない、実質「物量こそ正義」的な中小の運輸会社だと、最悪「24時間働けますか」状態になることもザラ。
配車もそれが当たり前だと思ってるからたちが悪いのです。

残業に適応した人にも悲劇が待っている

更に怖いのは、残業に適応して「残業で飯食ってる」人なんかにとっては、当然残業が減りますから給料減るわけです。
残業金額が安くても、勤務時間が当然制限されますから、配送/集荷できる件数なども制限がかかりますので、そこのボリュームで食えてる人にとっても悲劇というわけです。

実は大きな会社でも派遣社員の扱い方を分かってない上層部、配車担当が多い

派遣社員はいわゆる「テンポラリースタッフ」であり、外注業者と違い「あくまで一時的なスタッフ」です。

例えば、正社員が来るまでの一時的雇用というのがメインですが、正社員になるためのお試し雇用、という応用的な方法もあります。
(まぁもっとも正社員の方が給与は安いのでそれ以上の魅力がないと正社員になることはまず無いですが)

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」、いわゆる派遣法によってその会社に対する契約期間(の最大値)は定められていて、”3年を超えない契約期間”内での契約、となってますので、3年以上維持が必要な配送路線、おまけに重要路線だとかなりリスキーです。
しかも正社員と違って完全時給です。
具体的に書くと、始業時~9時間(うち休憩1時間)を超えたら残業になりますし、当然割増が発生します。会社にもよりますがだいたい25%増しですので、結構痛い話になります。
ところが、それを分かってる配車担当、上層部なら良いんですが、分かってない人が本当に多い。
その癖請求が来ると「なんじゃこれわ――!」で発狂する。
本当に呆れます。

なので、派遣社員にやらせる量というのは、ある程度減らし気味に設定し、それをしっかりやらせることで計算ができます。
ところが、それを分かってないと、無駄に残業を発生させることになります。前述のようなケースになるわけですね。

残業系の協定は36協定といって、一般的には月45時間、年360時間が最大値ですが、運送業界はだいたい複数月平均80時間、年720時間(特別な例)になってたりします。ただし複数月平均80のギリギリでやってたりすると、80✕12=960時間になるため見事に超過します。
ですので、月60時間を厳守してもらう方向(60✕12=720)でやっているはずですが、繁忙月(12月など)で超過するならまだわかりますが、閑散月で超過ペースとなると、繁忙月は更に超過することが容易に予想できます。

例えば週5出勤だと、祝日などを考慮しない場合、最大月に23日出勤となります。そうなると60時間に収めようとすると大体1日あたり2時間半ペースでないと超過する計算になります。

とすると、当然派遣会社側でも警告する(場合によっては社員引き揚げ)か、辻褄合わせで「残業ゼロ勤務」を強制しないと当然法律に引っかかることになります。
残業ゼロ勤務となると給与は当然下がるので、派遣されている人間としても思いっきりデメリットです。また会社にとっても頼める仕事が減ってしまうので、他の社員や傭車への負担が思いっきり増えます。
それで引き揚げられたり、契約終了していなくなったら、運送会社としては元の木阿弥になっちゃうわけですね。

できる人間や言うことを聞く人間ほど負担が大きくなりパンクして辞めていく確率が高い

まぁその時間制限に適応して、化け物的に配送をこなせる人(過去に知ってる人で一人だけいました、他の社員をして”化け物”扱いでしたし、荷台から転落しても「大丈夫です!」でとっとと配送/集荷に行ってるような人でしたのでサイボーグじゃないの?疑惑まで掛けられてました)だったら話は全く別なのですが、だいたい配送をこなせる人や、人の話を素直に聞く人間ほどなし崩し的にガッツリ仕事を振られてストレスためすぎて鬱になったり、体調を崩したり大怪我して辞めていくことになります。

そういう管理ができない会社ほど、大体掲示板で叩かれてることが多いですね。

本来は同じ量運ぶなら早く終わらせるほうがいい

当たり前ですが、この手の物量は安定している方が良いに決まっているので、やらせる量を

会社側の管理も根幹から見直す必要がある

前述で「社員管理もできない会社は掲示板で叩かれてることが多い」と書きましたが、そういうところに限って、だいたい
・一部の社員がタコすぎて「(タコな社員)辞めさせろ!なんとかしろ!」
・一部の社員ばっかりに仕事を押し付け責任逃れする
・一部の社員がやたら仕事のテンション高すぎて、あーだこーだうるさい上に一人だけガツガツやってる(社員間の温度差が激しすぎる)
・(誰も教えないので)派遣や傭車(外注)が(本人わかってなくて)ルール違反を平気でやる(その癖本来教えなきゃ行けない人が教えてない)。
ということが多く、それに対して「ルール作りや教えることをしっかりやるべき」突っ込んでも
「それは臨機応変で」
としか答えない実にいい加減なところが多いのです。

臨機応変と答えるということは、すなわち「いつかやる」と言ってることと同じで、「いつかやる=いつまで経ってももやらない」と同義です。

そんなんで会社が良くなるわけがないです。

類友の法則で、レベルの低い事業所にはレベルの低い傭車、派遣が集まりやすい

面白いことに、類友の法則で、レベルの低い会社、及びその事業所には、レベルの低い社員、傭車(外注)、非正規(派遣やアルバイト)が集まることが多いです。仮に高いレベルが来たとしても、(タイミング見計らって)すぐに抜けられるか、逆手に取ってうまく利用されるかのどちらかです。

レベルの高い、分かってる派遣は、アホのふりしてとっとと辞める算段を立て始めます。「なんで辞めるの」と突っ込んでもすっとぼけられるのがオチです。そこはそれ以上突っ込んでも営業と話ししてくれになっちゃうので暖簾に腕押しですし、営業も「本人が希望してるんで」で逃げるので結局うやむやになるのは見えてます。
要改善点を指摘してもろくに改善する姿勢や、改善の方針、時期をしっかり社員に見せないような会社、社員には、どの会社、社員(派遣含む)も改善なんかしてくれないということです。傭車とかは前述のように3次、4次請、あるいはそれよりも高次の請だと改善する気すらないでしょうし。

客(配送先や集荷先)の要求がわがまますぎる場合もある

物流業界では、こんな問題もあります。
例えば、配送先のルールが各所で違いすぎてややこしかったり、それでドライバーが怒鳴られたり、出入り禁止になるケースも多々あります。

また、集荷の場合、荷物ができる時間がめちゃくちゃ遅いパターンもあります。
17時とか、酷いと18時半とかに荷物ができるケースも多々あります。
そうなれば当然残業も増えるわけで、それまで無駄な時間が発生します。
例えば30個口の荷物、29個までは午前中で出来てるのに、最後の1個のできるのが18時とかだったらどうですか?
それを日付指定で次の日、なんて言われた日には・・・・
そして利益のためにそれを容認せざるを得ない運送会社もあるのです。
それで残業減らせって言う方が無理なのです。
もし残業しない方向でやるなら、早番、遅番で出勤を調整するしかなくなりますが、そうなると当然(運ぶ量が減るわけですから)一人ひとりの給料に影響する可能性があります。

あと、月によってとんでもない物量(最小と最大の物量さが酷いものも含む、その割に集荷客のキャパシティが少ないので何回かに分けて集荷しないといけない)場合、当然それで手間は発生しますからそれも考えないといけません。運送の仕事を取ってくる営業もそこを考えてないと結局ドライバーに無茶振りすることになりかねません。
仕事を取ってくることは大切ですが、それがトータルで残業を増やすことにもなりかねないことを計算に入れないといけないのです。

「2024年問題」を取り違えている人間のなんと多いことか

こうやって見てみると、2024年問題は、単純にトラック業界だけではなく、機械や食品の製造業、物流倉庫など、ものが流れるところ全般が総合的に対応しないと根本的には解決しない問題になります。

それは結局我々末端の消費者に大きく影響する話です。
スーパーに行ったら欲しい物がなかった、入荷予定が遅れた、営業時間短縮とか定休日増えた、ということの遠因にもなってることがありますからね。

見えない部分だから、私は関係ないから、とは(国民全員が何らかの形で関わってるので)言えない話ですので、一度調べてみて、考えてみることは大切なことだと思います。

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