『最後の講義〜大林宣彦〜』

 2018年にBSで放送されたものを、1月3日、NHKで深夜に再放送してくれました。
  50分程度の番組でしたが、講義は3時間を超えたとナレが入ったので、本放送ではもう少し長かったのかもしれませんね。
  BSでの放送当時に気付けなかったのが残念だけれど、何はともあれ深夜枠のTV欄に「大林宣彦」という文字を見つけた自分を褒めることにします。

 私が初めて大林宣彦さんの名前を意識したのは中学生の頃だったでしょうか。
 大林監督は私が創作活動をしたいと思うようになるきっかけを作ってくださった、私にとって、大きな大きな存在です。
 当時、邦画は基本的に2本立てで上映されていて、友人と『雪の断章』と『姉妹坂』を映画館で鑑賞。
 その時に購入したパンフレットに書かれた監督のプロフィールに、それまでなんとなく見ていた尾道三部作のタイトルを見つけたのが、最初だったと思います。
 尾道三部作はどれも大好きな映画だったのですが、『姉妹坂』という毛色の違う作品を扱われたことに興味を覚えたのが最初だったと記憶しています。

 とはいえ、です。
 ネットも活発ではなかった時代の田舎の中学生が映画を見る手段なんて限られています。
 映画館では限られた作品の最新作しか上映していませんし、レンタルショップも近くになかったので、テレビでのロードショーでの放送があれば、それを見るというのが唯一の手段でした。

 高校を卒業してやっと、自由にレンタルを利用出来る環境になって初めて、古い作品を見られるようになり、さらに書店に就職したことでシナリオ雑誌などを手に取るようになり、さらに大林監督の世界を知りたくなって、エッセイや作品を解説した書籍などを古本屋で見つけては読み漁り、その世界観にどっぷりと浸かりました。

 今回の番組で大林さんはご自分の肩書きを“映画監督”ではなく、“映画作家”である、とされていました。
 製作者というよりも表現者という立ち位置で、戦時と戦後の日本を見てきたからこその視点、映画をたくさん見てきたから培われた視点や考え方、名だたる先輩方からの教え、それらを次世を担う若者たちに伝えたいという強い想いが大林さんご自身の言葉で語られている、とても貴重な映像。
 優しく温かい語り口なのに、揺るぎのない意志と力強さを感じさせてくれる講義になっていて、かなり前のめりになり、時には涙しながら拝見しました。

 講義の全容は書籍化もされていて、電子書籍にもなっていたので、番組視聴後に購入してしまいました。
 少しずつ読み進めて、いろいろと学んでいきたいと思います。

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