雨あがる

丸一日降り続けた雨が上がった。その前から降ったり止んだりを繰り返して人吉や球磨川流域では甚大な被害が出てしまっている。

御船町では被害は出ていないが御船川も警戒水位に達しそうだった。だから雨が降っていいないというだけで肩の力が抜けるような気がする。

私の住んでいる地域は山を登りあがったところにある。山の背に家が並んでいるような里山だ。馬の背(このへんのお年寄りはうまんせと言う)を想像してもらえるとわかりやすいかもしれない。

その地形のためか雨が上がる前には深い霧が立ち込めることが多い。ここに住むまでは霧の中にすっぽり包まれる体験はなかったように思う。前後左右どこを見ても真っ白。その中を歩くとどこか違う世界にいけるようなちょっとわくわく気分がしてくる。ただ車の運転は本当に怖くて、たまたま帰宅時間に重なると左の車線だけを頼りに必死に運転し手のひらにじっとり冷や汗をかくことになるのだが。


自宅の台所は2階にあり、目の前は大きな窓になっている。そこからは山々が見渡せて見下ろす形で棚田や畑や家々が見える。この風景だけでここに住んでる価値があるなあと思うくらい大好きな景色だ。

雨上がりその窓からの景色に何度も驚かされるのだ。          雨あがるかなと思いながら台所に立ち、例えばもやしのナムルを作るくらいの時間。お湯を沸かし、もやしをゆでて塩やごま油でさっと味をつけるくらいの時間手元にあった視線をふと、窓に向けると窓の外は真っ白。    空も山も区別なくただ真っ白になっている。              

思わず「えっ」と声が出て振り向くと後の窓も真っ白。はじめてそうなったときは思わず外に出て確かめた。そういう時はこのあたりはすっぽり霧に包まれているのである。遠くから見たら山に雲がかかっているように見えるのだろう。                              そしてしばらくすると、まず鳥が鳴き始める。鳥の鳴き声を合図にするかのように少しずつ少しずつ霧が晴れ始める。

今朝も雨が上がり同じような景色がみられることにほっとして、鳥の鳴き声を聞いていると下の田んぼでもう草刈り機の音がし始めた。このあたりの人たちは働き者だ。そうやって大切に田畑を守っている人がいるから私の大好きは景色も守られているのだ

さあ、私も自分のするべきことをしよう。店を開け珈琲を入れ、お客様を待つことにしよう。


                   


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