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クイズ番組の「誤答を楽しむ文化」を考える

5月1日配信のクイズマジックアカデミー 検定アーカイブ「クイズ」検定を初日開店凸で回しに行って1プレー目25問全問正解→2プレー目23問目で全一を獲得した。
まあ、正直これぐらいの問題は「ゆるい」と言えるほうなので多分本気出せば5000点は軽く行くだろう。でもQMA以外もやることがあるのでとりあえずここまで。

さて、音源再現でお馴染みてれすなさんのツイートで見かけたこちら。

例えば以前「私のバカせまい史」で放送された「芸人のクイズ番組でのボケ解答苦悩史」で解説されたように、「原則チーム戦のクイズが多くなり、誤答=チーム全体の足を引っ張る」という形が強くなった。

今回はそれ以外の「なぜ誤答ができなくなったか」史をちょっと考えてみた。

誤答をシステムに組み込むということ

クイズダービー

例えば「クイズダービー」は「誤答」があることが番組として大事になる。
全員が正解で得点が増えてしまっては面白みがない。程よい誤答率があるからこそ「正解率の高いはらたいらさんに賭けて確実に増やすか」「オッズの高い枠に賭けて一発逆転を狙うか」という戦略性が生まれている。

世界ふしぎ発見

こちらも当初はギャンブル方式を取っていたこともあり「誤答」することが大事ではあったが、それが撤廃されてからも「ボッシュート」で寂しく落ちていくヒトシ君人形の画がいかにも「残念」という感じを出すことに成功している。

さんまのSUPERからくりTV

むしろこちらも「誤答」を積極的に取りあげている。
正解だけでなく「ナイスボケ」「おしい」でもポイントを獲得できるシステムは、中村玉緒さんや浅田美代子さん、西村知美さんの天然ボケを場と番組ルールを崩さずに楽しめるルールとして組み込まれていた。

クイズ界の黒船「ミリオネア」

その中でクイズ番組界の潮目が変わったのはやはりクイズ界の黒船「クイズ$ミリオネア」。
これまでのクイズは誤答は当然。早押しクイズでも「お手付き・誤答は減点or1回休み」「失格はあっても2×・3×」という感じ。もちろん優勝者が賞品・賞金を懸けたボーナスクイズは一発勝負が多いが、それでも本編のほうは大分緩かった。

が、そこにミリオネアは「1問間違えたら即終了」という凶器を持ち込んできた。
「誤答による解答者のやりとり」よりも「難問と欲望に対し解答者がどう悩むか」というのに焦点があてられた。

思えば海外製クイズ番組は「誤答で楽しむ」という要素は少ない。というより解答時間やゲーム時間がかなり短い(1分とか2分)なので誤答のいじりしろが無い。
それよりもクイズの合間に解答者とのやりとりやリアクションで魅せている物が多い。

「ファスト社会」におけるクイズ

そして現在。今や動画も倍速視聴やスキップ視聴する人間も珍しくなくなった中、クイズ番組自体もかなりファスト化されている気がする。

例えば「ミラクル9」の「タイムトラベルクイズ」「全国旅行クイズ」は1セット20~30問程度、「東大王」の「難問オセロ」は36マス中、中央の4マスを除く32問用意されている。それを矢継ぎ早に消化していかなければならないのだ。
しかもただ消化するだけではない。
ミラクル9の場合「問題の前振り→解答」という手順が、難問オセロの場合は「難問の解答方法・ヒント→解答→解説」という手順がある。これをダイジェストなしでやっていくといちいち珍回答をイジる暇がない。
しかも各問題に情報が含まれているためそれの解説も含めるとどんどん時間が無くなっていく。

クイズダービーもそうだが、「世界まるごとHOWマッチ」「クイズ世界はSHOW by ショーバイ」「なるほどザワールド」などゆったりと「前振り」として出題VTRに長めに時間を割き、そこからシンキングタイム・解答発表・正解発表とやる時代ではなくなってしまった。というか、これらは全部「世界系クイズ」なので、ネタを考えるのもロケするのも大変だからというのもあるかもしれない。

解答者のふざけしろを無くす構成

例えば「クイズ違和感」では、当初は「一件普通の映像だが実はある違和感が隠されている」「明らかに違和感のある画像だが、なぜこうなったのか?」という早押し問題が出題されていた。
が、こういった早押し問題にレギュラーの大悟さんがふざけて解答することから、次第に誤字があるかどうかを見極める「違和漢字」、激ムズチャレンジに正解するかどうかを当てる「違和感チャレンジ」、商品のバリエーションの中からダミーを避けて本物を当てる「コンプリート違和感」など選択問題が多くなってきた。(上記は大悟本人談)

東大王においても2024年シーズンはこれまで書き問題で出題されていた「テーマ雑学クイズ」が2択で出題され、たまに紛れ込むDJ KOOさんのボケ解答なども出にくくなってしまった。

当然だが選択問題でボケることはほぼできない。
とはいえその代わりに解答者が「どういうふうな思考でこの選択肢を選んだのか」という所でボケ解答成分を補強している気がする。
まともな考え方で「そう考えるよなぁ」と納得できる誤答もあれば「なんでその考えでその選択肢選んだんだよ!」という所にイジリじろが生まれていると思う。

最後の砦「突破ファイル」

そういった中で現状ギリ「誤答も楽しめるクイズ番組」として残っているのが「THE突破ファイル」。

思えば上記の「海外系クイズ」と同様問題数が少ない分、出題&正解VTR(ドラマ)に力を割くという「古のクイズの作り方」をしている。
解答タイムの時も最初のボケ解答の時には内村さんが時に呆れ、時に怒りながらツッコミを入れるが、「違う…けれどそういう感じ」と少し正解に近づいたことを教えたり、ヒントを出しながらどんどん近づいて行って最終的に「突破」する構成。
実はこここそが「誤答を楽しめる最後のフロンティア」なのかもしれない。

まとめ

勿論今のクイズ番組も好きだし、ミリオンスロット回し続けて30年なので「これだから懐古クイズマニアは~」とかいうこともないしてれすなさんのおっしゃることも分かる。

「誤答=笑いものになる」みたいな感じでクレームが入ってきかねない世の中でなるべく「酷いふざけた答え」というのを出さない配慮を番組側が作っている努力も分かる。

とはいえかつての「7千兆ドル(井森美幸)」「赤べこ(ジャイアント馬場)」「吹田ジャンクション(次長課長・井上)」のように、枠にとらわれない問題からこそ「記憶に残る誤答」、そして「その記憶に残る誤答を生んだ問題」も生まれると思う。

「無理に」とは言わないが、たまには「シリアスに殺伐」しないで、でも「フランクにゆるすぎない」、「カジュアル」なクイズ番組が見たい。

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