「過去」と「現在」と「未来」~インディ・ジョーンズと運命のダイヤル~

6月30日に公開されたインディ・ジョーンズ最新作にして最終作「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」を封切日に見に行った。

私はインディ・ジョーンズの大ファンであり、あの興奮する冒険譚とそれを阻むような罠のギミックに心を惹かれた人間である。「レイダース」の大玉とか、「魔宮の伝説」のトロッコとか、「最後の聖戦」の試練とかは今見てもワクワクする。映画の放送はBSだろうがやっていれば見るし、ディズニーシーのライドは1日で3回乗ったほどだ。あそこはQライン(待機列)を見るだけでも楽しい。

本来なら駅メモ活動をする予定日だったが、その前の休日が体調が優れず、最終日である30日に頑張っても次の報酬が貰えないことが確定したため逆に「大チャンス」と思い見ることが出来た。恐らく「聖櫃」が私を映画に呼んでくれたのだろう。

今回はそのあらすじと感想をネタバレにならない程度に紹介する。

あらすじ

1944年、第二次世界大戦中。インディ・ジョーンズは旧友の考古学者・バズと共にヒトラー率いるナチスドイツが強奪しようとしていた大量の宝物を奪還しようと奮闘していた。ナチス兵の激闘の末、インディは「アンティキティラ」と呼ばれる謎のダイヤルの半分を手に入れる。

それから時が経ち1969年。アメリカはアポロ計画によりアポロ11号が月面着陸に成功。国内だけでなく世界中が新たな時代の到来に期待する一方で考古学に没頭し続けたインディは時代に取り残されていた。

そんな中、自身の講義に1人だけ注目していた生徒…ヘレナから「アンティキティラ」についての話を持ち掛けられる。だが一方でアポロ計画に携わった研究者・ユルゲンも「アンティキティラ」を狙おうと企んでいた…

「過去」と「現在」と「未来」

タイトル通り、今回のお話には「『過去』と『現在』と『未来』」というテーマがあると感じた。

1969年にアポロ11号が月面着陸に成功。月面開発、あるいは火星など他の惑星への探査など宇宙にさらなる可能性がある「未来」に多くの希望を見出した。

一方、インディの専門は考古学。まさに「古」のことについて「考」える「学」問。過去を振り返る事に人々の関心はなく、あれだけ人気だった授業も今では閑古鳥の上アポロ帰還パレードに邪魔される始末。その大学ですら定年退職となり、第4作「クリススタル・スカルの王国」で結婚したはずのマリオンとは離婚と完全に「冴えないおっさん」化してしまった。
それでも頑なにインディは「現在」と「未来」を見る事はしない。それは分かり切った事だ。それがインディという男だ。

一方、今回のヒロインであるヘレナは「現在」を生きる人である。もちろんインディの講義に関心を寄せ話を持ち掛けるなど知識を備える一方、お金に貪欲でそのためなら危ない橋の1つや2つを渡ることも平気。自ら「豪放磊落」と呼ぶほどの度胸の高さを見せる。「今が楽しければそれでいい」と思わせる女性だ。

そんなインディとヘレナ、そして敵であるユルゲンとの交戦。序盤はまるで群像劇みたいに「誰がどうなのか?」「それぞれ何が目的なのか?」といった複雑な展開を見せる。説明が少ないのもあって「この人はこっちなのにそういうこと言うの?」みたいなのもある。が、その答えも少しずつ紐解かれていくので置いて行かれることはない。

シリーズ恒例の「カーチェイス」はもちろん「大量の虫」、そしてインディが大の苦手とする「ヘビ」も登場する(が、今回は普通の「ヘビ」ではなく…?)。こういう所をちゃんと抑えてくれてこそのシリーズだ。

そしてクライマックスでは自分が予想だにしなかった展開を見せた。しかしそれは「伏線」としてさりげなく仕込まれており「なるほど」と思わされた。
インディ・ジョーンズは超常現象的な力を否定しない。その集大成が「こうなるか!!」と驚かせてくれた。

そして最後、私は劇場で泣いてしまった。

「インディ・ジョーンズシリーズを見て泣くことなんてあるんだ」と終わった後に自分でも思ってしまった。
何度見てもワクワクハラハラドキドキ色あせない冒険を楽しむのがインディ・ジョーンズシリーズの楽しみ方と思っている中で、泣いてしまったのは本当に意外だった。

だが、その理由は自分でも分かる。
私もインディと同じ「考古学者」である。最もインディのような本物の考古学ではなく、芸能史やバラエティ史について調べる「芸能考古学」ではあるが。
しかし、インディと同じく「過去」を見る事が好きすぎて「現在」や「未来」を見ることが苦手な人間だ。いつだって「現在」は不安定だし、ましてや「未来」を期待し予測するなんて無理ゲーだからだ。
そんな「過去」が好きすぎる頑固者に対しヘレナがどういう行動をとり「現在」と「未来」に向き合わせたのか。その方法と結末に涙が止まらなかった。

おわりに

演じるハリソン・フォードは御年80歳。流石に過去作のようなキレのあるアクションはできないが、それでもスマートさに老獪味を持ち合わせたアクションとセリフの数々こそが「インディ節」だと実感した。

そしてこれが「最終作」であることに非常に納得した。これ以上綺麗な幕引きはないだろう。

だが、ずっとインディ・ジョーンズの冒険は続いて行くのだろう。
彼の冒険の先にはいつだって決して予測できない「未来」を変える「宝」が待っているのだから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?