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1人の男

ここに1人の男が消えた。
彼の肉体は「物」となった。

彼は最後まで彼であった。
何者でもなく、間違いなく彼であった。

彼の中にある「脳」は
彼に考えさせる事を強制した。
それは病であり、才能であった。
それらは常に彼を取り巻き
虚無へと連れさることもできれば
あらゆる先人達との仲立ちもしてくれた。

彼は、王者のように堂々とし
挑み、いらつき、怯え、研ぎ澄まし
目を逸らしては睨みかえし
それらを細いボールペンの先に
書き付けた。

原稿用紙は
彼の居なくなったあとも
あり続ける。
時が彼らを連れさるだろう。
徐々に徐々に。

おれにできることはなにか
彼の伝えたかったことはなにか
本当に汲み取れるものか
言葉を残せるか
伝えられるか
おれとして生きていけ

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