青海野灰

メディアワークス文庫で『逢う日、花咲く。』『明けない夜のフラグメンツ』が発売中です。 …

青海野灰

メディアワークス文庫で『逢う日、花咲く。』『明けない夜のフラグメンツ』が発売中です。 2021/02/25 に新作『世界の終わりとヒマワリとゼファー』が発売予定。 宜しくお願いします。

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  • 雑記

  • 三題噺

  • 過去掌編

    「時空モノガタリ」というサイトで、一つの主題をもとに執筆した、最大2000文字の掌編です。

最近の記事

「 MEGALOMANIA 」

高架橋の夕暮れ 今日の終わりは世界の終わり 腕時計を線路に捨てれば もう羽を隠さなくていい 僕の方を見もしない 君の碧のその髪を 撫でる風にも嫉妬する 涙のルーペで君を覗けば 鍵穴が見えるのだろうか 君の遺伝子の罪を 僕ならば許せるよ その壊れた心の間隙に 壊れた僕の心はいかが 君の染色体の孤独を 僕ならば愛せるよ

    • 「 ドレミディア・ドラマディウム 」

      「 Amoris vulnus idem sanat, qui facit. 」 どうしてあの日、あの時、あなたは、 劣情の片鱗を見せつけて隠したの。 身をよじってあなたを見上げた瞬間、 不安に震える私の肩を強く掴んだあなたの、 そっと重ねられた唇に、タバコの香り。 ライラックの花びらが瞼の奥で舞い散って、 幸せは近くにあると錯覚させたあなたの、罪。 どこに向ければいいのかもう分からない心。 零落した枯葉のように打ち震えても、 身を寄せる温もりのないことの寂しさに、 ファ

      • 「 ドレミの唄 」

        どうなるかなんて分からない  レールの消えた荒野の中   みんな孤独を抱えながら    不安に掻き乱されながらも     それでも僕らは生きていく      楽園なんてこの世になくても       死に物狂いで掴み取ろう        どこかにあるはずのその収束点を どうなったって構わないよ  歴史も現在もかなぐり捨てて   未知なる未来を歩き出そう    ファンタスティックな夢を抱いて     そこに道なんてないとしても      ラララと口ずさみながら       しっ

        • 「 ドレミの詩 」

          どんなにこの胸が叫びを上げても  冷静を装うしかない残酷な日常   惨めに泣き喚く心を抱えて    ファインダーで今日も君を探す     そこを楽しむなんて言ったって      楽観視なんて出来やしない       死ねば救いはあるんだろうか どうやったって満たされなくて  霊魂のように彷徨っては   満たされたくて手を伸ばす    ファウストの嘆きは掻き消えても     そんな君がいいんだ      落胆の果てに赦されるなら       死んでも愛させてくれないか どう

        「 MEGALOMANIA 」

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        • 過去掌編
          14本

        記事

          「 深海のラブソング 」

          この深く沈みゆくような感覚は何だろう とても悲しく寂しいのに どこか甘く愛おしい 柔らかく刺々しくこの体を取り巻いて縛りつけ 抵抗もできないままに 暗く深い海の底へ ゆっくりと ゆっくりと あなたの手を取りたいのに 助けて欲しいと手を伸ばすのに そこにあるのは遠く揺らめく水面だけ 自分の涙さえ見えやしない 言葉なんて伝わらないよ そんな言葉で こんな言葉で 想いなんて正しく伝わるわけがないよ どれだけ飾り付けても 文字に置き換えた瞬間に 想いは形骸化されて霧散していく

          「 深海のラブソング 」

          「 祈り 」

          君が笑顔でいるための 静寂のような祈りを 君が前に歩き出すための そよ風のような祈りを 君が幸せになるための 囁きのような祈りを 君の涙を止めるための 叫びのような祈りを 孤独がこの胸を引き裂いて 肋骨を突き破って 欲望が君に向けて伸ばす腕を 涙を噛みしめて両手で押さえつけながら 君が歌い続けるための 詩のような祈りを 君が安らぐための 静かな歌のような祈りを 闇は全部飲み込んで 光を放つふりをして もう痛くないよとうそぶいて 大丈夫だよと笑いながら 君が明日

          「 祈り 」

          「 引き金 」

          暖かさに潜む影 幸福の中の孤独 それに気付いてしまった時 僕の心は安らぎを忘れた 温もりを掻き抱いても 指先から冷たくなっていく 消える手段ならいくらでもあるよ でも引き金は動かない 寂しがる人 膝を抱えて泣く君よ ベルベットの舌で この危うさを舐めてよ 見下げてよ 落ちぶれた僕を その分君が浮上するだろう そこからこの手を取ってよ 僕の心を置き去りに 幸福になっていくこの体 痛みに咽び泣いても まだ引き金は動かない 首に這わせた両の手に 絡みつくあたたかなもの 僕

          「 引き金 」

          「 i love you 」

          激しい雨の夜の下 傘をさして独り立つ i love you i love you 言い続けていないと 取り込まれそうになるんだ i love you i love you 僕の愚かさも弱さも危うさも 全部認めるから傍にいてよ i love you i love you 僕の言葉を信じちゃいけない でも信じていて欲しい i love you i love you (寂しいんだ  穴が痛むんだ) i love you i love you 君が何者か 僕は知っ

          「 i love you 」