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日曜市

秋田の祖母は,毎週日曜日に「市」に行っていた。出店者として。

自宅から10キロほど離れた隣町(自宅は町,隣町は市の中心部)の公園のようなところで,地面にシートを敷き,フリーマーケットのように店を広げる。

お店を広げていたのは30年程前は10数店ほどだったと記憶している。そこそこにぎわっていた。その後,大人になってから訪れたが,お店の数も減って,淋しくなっていた。

私は夏休みにしか訪れたことがなかったけど,お盆の中日じゃなければ市は立っていた。

祖母が夏に売っていたのは,自家製の梅漬け(梅干しじゃない),しみもちなど,農作物の自家加工品。他のお店は農作物も売っていたかなあ。祖父が車を出して,市まで運ぶ。祖母の作る加工品にはお得意さんもいるらしかった。

しみもちは,乾燥させたお餅。のしもちを角切りにして,わらに結んで,軒下に干して作る。干し柿の風景と一緒。わらは,その後ビニール紐になった。風情がないと思ったけど,祖母は「こっちのほうが扱いやすい」というようなことを秋田弁で言っていた。

祖母は白いしみもちしか作らなかったけど,ピンクや緑,黄色など,着色したものもあった。

梅漬けは,梅干しを作って,干さないもの。しっとりしていて,塩味よりも梅の果実の甘さと酸っぱさがある。子どもの頃,梅干し全般が苦手だったので食べたことはなかった。大人になって食べたが,梅干しよりみずみずしくて不思議な感じだった。

「道の駅」とか農協の「産直センター」とかで自家製加工品が売られるようになってきて,市はさびれたのかもしれない。市で見たことがあるものが,産直センターにはたくさんあった。自家製リンゴジュース,いぶりがっこ,バター餅なんかも。

子どもの頃には別にたいしたことがないと思っていた市だけど,いま,産直センターや道の駅に行くのは私の楽しみの一つになっている。

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