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位牌堂の話

夏になったけど,今年も秋田に帰れない。

といっても私の実家ではなく母の実家だけど。2016年に帰ったきり。

私は秋田の祖父母の家が大好きで,どんなに好きだったかというと,親の帰省で連れて行かれた幼少期から,大学生,社会人になっても一人で(もしくは母や家族と)帰省していたくらい。結婚して子供が生まれてから頻度は減ったけど,祖母が生きているときは2年に1度はひ孫を連れて帰省していた。祖母も10年近く前に亡くなり,伯父夫婦も高齢になり,なかなか気軽に行けなくなった。

北秋田のその集落には,曹洞宗のお寺が一つだけあって,集落の住人は全員檀家さん。お寺の脇にはお墓がある。お寺の地下には「位牌堂」がある。本堂の地下ではなくて,別棟でちょっと下がった半地下にある。位牌堂は,文字通り位牌をまつった仏壇のようなもの。大きさは全部同じ。ちょっと豪華さの差があって,それは寄附の差なのか。

毎年お盆に帰省してお参りするときは,お墓にお参りして,位牌堂にもお参りする。

なんで2箇所もお参りするの?と幼い頃は思っていたけど,それは夏ではわからない理由だった。

雪である。

冬場,長期間にわたって,お墓は雪に埋まってしまってお参りができないので考え出されたのが位牌堂なのではないか。

と,青森出身の元同僚と話したことがあった。彼女の実家のお寺にも位牌堂があって,でも東京の人に話しても「何それ」と全く理解されなかったとのこと。

写真の位牌堂は,2016年に撮影した。建て替えられてまだ数年のピカピカなもの。幼少時の位牌堂は,古ーい学校の薄暗い講堂のようで,夏の昼間なのにオバケが出そうにひんやりしていて(寺だから霊はいるだろうが),一人で歩けなかった。

怖がりの長女は,写真の蛍光灯で明るく照らされた位牌堂でも一人になるのが怖いらしかった。

東北の葬儀の風習で謎なことがもう一つ。お通夜がなくて,いきなり焼く。

お通夜と告別式で十分故人の顔を味わってから,焼き場に行く東京との違いよ。これも,土葬がかなり最近まで残っていたせいなのかな。おかげで,一つひとつの墓地が広い。

来年,帰省できたらもう少し葬儀の実態について調べてみたい。

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