「認知」→「判断」→「実行」のプロセスで考える作戦とその元となるものは? ~先ずはざっくりと考える+3つの優位性についてのお話~
0.内容まとめ
1.みんなが思う作戦のイメージ → 2.「認知」→「判断」→「実行」のプロセスについて → 3.ルール設定とその強度 → 4.作戦の策定と質的・位置的・数的優位性 → 5.プロセスは誰にでも働く → 6.あとがき
自身のスタンスとそのルーツに関しては
前回の記事(上のやつです)で説明させていただいたので
今回からは早速、実践的なお話をしていきたと思います。
なお今回は、具体的な作戦のお話の前段階のものとなっています。
(詳しくはまた今後書いていきたいと思います。)
1.作戦について持っているイメージ
サッカーやFPSに問わず「作戦」と聞くと
皆さんはどのようなイメージを抱かれるでしょうか?
・トップの人が決めたやり方
であるとか
・決められた型通りに動く
といったことを想像された方もいらっしゃるのではないでしょうか。
さく‐せん【作戦/策戦】
1 戦いや試合をうまく運ぶ方法や策略。転じて、物事を進めていくうえでのはかりごと。「―を練る」「―を立てる」
2 歩兵・砲兵・騎兵などの、ある期間にわたる一連の対敵戦闘行動。「水際―」「陽動―」
Weblio辞典
2.「認知」→「判断」→「実行」のプロセス
(以前所属していたチームでブリーフィングに使用したスライド)
一般的に我々が、何かアクションを起こすというときに、
身体のなかでは「認知」→「判断」→「実行」
というプロセスが発生しています。
これはFPSやサッカーのプレーに対しても同様であり、
プレーに対してできるだけ正確に実行しようとすると
「認知」と「判断」にいくらかの「時間」を必ず消費します。
常に流れの中で正しいプレーをしよう、と心がけたら
頭を使って考える瞬間が必ずあるということは
実際にプレイされたことがない方でも想像していただけると思います。
当たり前なことではありますが、
この「時間」というものは非常に重要です。
サッカーやFPSには、大体制限時間が設けられていますが、
そういった大きな単位の「時間」だけでなく、
判断に迷うような一瞬の「時間」であっても大切であり、
そういった瞬間は、相対するプレイヤーのレベルが
上がれば上がるほど見逃してもらえません。
気づいた瞬間にはやられている・詰められている
といったシーンは競技を問わず
様々な場面で見ることができると思います。
なので、作戦というものは
このプロセスを踏まえ、
いかに管理するかというものであると言えると思います。
そして、チーム全体の意思をルールによって方向づける---
---つまりはシステムを構築することによるオートメーション化
を図ることによって
プレーヤーにかかる認知や判断、実行といった部分の
負担を一部を担保することができる
というものでもあります。
サッカーを例に出して例えると、
自分がボールを持ったときに、チームとして
「必ず右と左に位置する仲間が寄ってきてパスコースをつくる」
というシステムが構築(ルール決め)がされているとしたら
もし、「仮に自分がボールを持ち、敵が近くに来て
味方にパスができない!」
という状況になったとしても
(気持ち的にも時間的にも)比較的余裕を持ちながら
「寄ってきてくれた仲間にボールを出す」
というプレーを選択することができると思います。
このようなルールが設定されているチームと
そうでない場合とを比べると、
いちいち(ピッチ上の)状況を正しく「認知」し
「判断」して「実行」する必要がないので、
要する「時間」が圧倒的に少なく済む
ということは
何となくでも理解してもらえるのではないかと思います。
そして、選手は余計な部分にパワーを割かなくてよくなるので、
自分のパフォーマンスに精一杯集中することができます。
(このことはまた次回以降に詳しく書いていきたいと思います。)
3.ルール設定とその強度
ここまでで、「認知」→「判断」→「実行」という3つのワードを用いて
作戦とは、ということについてザックリとお話してきました。
その中で、もしかしたら今ご紹介してきた考え方に関して
驚かれたり、疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。
なぜなら私も以前までの認識として、
作戦とは、監督やコーチ(FPSならIGLなど)のトップの人が
示すざっくりとした方向性(次回あたりで書くコンセプト)
のようなものであるか、
逆に、細部にまで細かくキッチリと決められた
ギチギチのルールの集まりが
作戦というものである、と思っていたからです。
もちろん作戦には方向性(コンセプト)やルールは必要です。
しかし、その元になっているものが一体何であるか、
何を元にしているのか、ということが
今回の記事でお伝えしたいことなのです。
(次回以降で書きますがガジェットの位置や人の配置を決めただけのものは作戦ではないと考えています。)
また実際にシステムを構築する上で作成するルールの強度
(どのくらいのレベルでチームのために選手を縛る)については、
そのチームの方向性によって変わってくるものでもある、と思います。
例えばサッカーのレアル・マドリードのような、
世界のトッププレーヤーのさらに一握りしか
所属できないようなチームであれば、
細かく定めたルールの集まりによってチームを運用するよりも
その選手個人の持つ圧倒的なポテンシャルにある程度まかせて
それら個々人の個性が損なわれないように
チームを大きな方向付けしてあげる程度で
済ませることが必要な場合もあると考えられます。
また一方で、ボールをゴールキーパーから前線まで
緻密に繋いでいくようなスタイルを志向するのであれば、
チーム全体の大きなルールだけでなく
選手個人や選手間(コンビネーション)、
選手のいる位置からくるルールなどを
細かく定めるといったことが求められていきます。
リアルのサッカーでもこの部分を監督やコーチが
上手く割り当てることができず
選手のフィーリング頼りとなり、初めは良くても次第に対策されて
上手くいかなくなっていく、というパターンはとてもよくみられます。
作戦とは、結局
選手のポテンシャルを十分に発揮させるための方法の1つであって
その定め方や程度の度合いに関しては
所属する選手(の質や特徴)や
チームの目標や状況(優勝/残留、強豪/中堅/弱小)といった
内的・外的要因を合わせたもの
(少し後に書く予定のプレーモデル・ゲームモデル)
によって左右されていくものだと思います。
そのため、絶対的なものではないですが、
無視してよいものではない、と言えるのではないかと思います。
4.作戦を策定することにより得る3つの優位性
ここまでざっくりと、作戦とはということに関して書いてきましたが、
作戦を決める(デザインする)ことによる具体的な効果として
質的優位・位置的優位・数的優位という3つのものがあげられます。
質的優位とは、
プレーヤーの質(クオリティー)による優位性のことであり
例えばチーム最強の選手をどこに配置するか、
または誰にぶつけるかなどによって
試合の流れを変化させる(主体的に変える)ことができます。
位置的優位とは、
読んで字のごとくポジションによる優位性のことで
FPSにおける強ポジ・有利ポジを取ることの大事さは、
近年のバトロワの流行によって広く認識されていることだと思います。
またそういった場所以外にも、相対的に取れると強いところというのは
様々な場面で存在します。
そして最後の数的優位とは、
クロスを組むことや気を引き付けさせて
ガジェットと合わせるなどといった、
複数対1の状況を作り出すことによる
人数有利のアドバンテージのこと指します。
1人では勝てない相手であっても、
2人、3人がかり行けば(バスケのダブルチーム・トリプルチーム)
何とか抑えられるかもしれません。
強いチームと呼ばれるところは、得てして
これらの優位性を得るために、攻撃や防衛をデザインし
さらに選手間同士でも
それの作戦をしっかりと理解し実行できるように
チームが一体化(オーガナイズ)されています。
(例え控えの選手であっても)
なので試合を見ていて
「なんでこんなに正しく早い判断が可能なのだろう?」
というシチュエーションがあったとして
そこには事前にチームで決め事が決定されていて、
それを元に選手は
「認知」→「判断」→「実行」して動いているため
外から見ていても正しく早い判断を行っているように見えるのです。
そして、これらの決め事が目に見えるほどハッキリと決められているのが
シージではNAのチームであり、
特にSSGやTSMなどは
ラウンドの始めから終わりまでを完全にデザイン
(配置やクロスの位置、選手の移動するタイミングなどが決まっている)
しきって試合に臨んでいるため、
基本的な動きが相手やラウンドの状況によって左右されず
主体的に戦っていると言えます。
(もちろん悪いと思った部分はモディファイで対応します。)
一方、EUのチームなどではEmpireといった一部を除くと、
そのほとんどが相対的に戦っているといえ
相手の薄い部分を突くように動いたり
自分たちで工事した射線であっても時には使わなかったり、
といったシーンを見ることができます。
(どちらが良い悪いということではないです。)
5.プロセスはどんな選手にも働く
そして、少し前に述べたようなプロセス
「認知」→「判断」→「実行」は、
例え、どんなに上手い選手であっても働いています。
サッカーで広く浸透し様々なチームが採用している
ゲーゲンプレス(ストーミング)と言われる
相手を追い回してボールを奪うという作戦があるのですが、
このロジックは
プロセスの「認知」の部分に負担をかけ続け、
それによって相手のミスや対応の遅れを誘発させる
(もちろんガムシャラに追うのではなくチーム一丸となって襲いこむ)
というものとなっています。
なのでたまに「整理(整備)されたカオス(混沌)」といった
ニュアンスで紹介されることもあります。
ヨーロッパ(などのスポーツの先進地域)ではこのように、
盤面のやり繰りといった見える部分の勝負ではなく
もっと大きな(細かい)ディテールでの勝負へと
戦術のフィールドが変化してきています。
また、このようなことから個人的に
自分たちよりレベルの高い相手にどのように勝利を見出していくか
という問題に対しては、
作戦の練度(と選手の作戦認識力を上げる)でもって対応する
しか道はないのではないかと思っています。
選手の質というのは余程のことがないと上げることが難しいです。
であるならば、一番手っ取り早く上へ進んで行くには、
それ以外の部分で何とか勝負をしていくしかないと思います。
この方法では時間がかかってしまう(時間が必要)
ということは重々承知ですが、
選手の質で勝負できないのであれば、
タクティクスを磨いていくのが最善の道なのではないかな、と思います。
(今後戦術的ピリオダイゼーションというトピックスで練習についても書こうと思います。)
6.あとがき&Special Thanks !
今回も長くなってしまいましたが、また次回の記事も読んでいただけたら嬉しいです。
前回の記事でスキやフォローありがとうございました!
初めての投稿にもかかわらず、反応をしていただけて
とても嬉しかったです!!
YouTubeと並行して運営していこうと思うので
不定期な更新になってしまうかと思いますが、
のんびりとまっていただけたら嬉しいです!
読みづらい、わかりにくい、などありましたら気軽にコメントいただけると
次回からの参考になりますので、ぜひお願いいたします!
それではまたお会いしましょう、じゃーに~!
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