見出し画像

蜜蜂と遠雷/恩田 陸 読書徒然vol.15

2017.12.15
(本文より)
『推薦状  皆さんに、カザマ・ジンを
お送りする。  
文字通り、彼は『ギフト』である。 
(中略)  彼を本物の『ギフト』とするか、  
それとも『災厄』にしてしまうのかは、  
皆さん、いや、我々にかかっている。』 


ピアノコンクールを舞台に描かれる物語
音楽が好きな人にもぜひ読んで欲しい
読み終えた後
コンテストの出場者、1人1人の名前に
すごく意味が込められてるんだなあと感じた
出場者だけでなく、その周りにいる人達のことも
すごく丁寧に描かれている


出場者はそれぞれ孤独なんだけど、
それを支えてくれる存在がいて救われる
自分にとって音楽とは何かをコンテストの中で
探し続けていて
出場者との心の交流や他の出場者の演奏に
触れる中でみつかるものもあって 
特に明夜ちゃんと明石(あかし)さんとの場面に
グッときた
2人の名前に同じ漢字がつかわれていること
明石さんの名前の読み方にもすごく意味が
込められてるんじゃないかなあと思った
ピアノを打楽器と表現するのも
なるほど!と感嘆


こんなにも音楽を言葉で表現できるなんてすごい
演奏には演奏する人の心の内が出る
だから同じ楽器でも
演奏する人によって音色が変わる

演奏を聴いた時に自分自身の中の大切な記憶が
浮かんでくること 
音楽に触れる時に感じる
『この気持ちってどう言葉にすれば
いいんだろう』の答えに沢山沢山気付けた
音が、映像が浮かんでくるような小説
カバーをはずすとピアノを彷彿とさせる黒と白
推薦状やカバーの中、
文章中の細やかな仕掛けにことごとくやられて
読み応えがすごかった!

---------------------
(本文より)
『コンテスタントの身体を通して
出てくる音楽は、彼らが育った土地、
授かった身体とは無縁ではないのだ。
音楽っていいな。
明石はふと素直にそう思った。
真の世界言語だ。』

『音楽家とは、なんという仕事なのだろう
-なんという生業なのだろう。
なりわい、とはうまく言ったものだ。
まさに業(ごう)、生きている業だ。』

『誰かに聞いてほしかったこと。
決して誰にも言えなかったこと。
日々の生活のうちに押し殺してきたこと。
漠然と感じていながらも、
言葉にできなかったことー
彼女は粛々と、だが正確にそれらを語る』

「活け花って音楽と似てますね」
「再現性という点では、
活け花と同じでほんの一瞬。
ずっとこの世にとどめておくことはできない。
いつもその一瞬だけで、すぐに消えてしまう。
でも、その一瞬は永遠で、再現している時には
永遠の一瞬を生きることができる」

『どんなに汚くおぞましい部分が
人間にあるとしても、そのすべてを
ひっくるめた人間というどろどろした沼から、
いや、その混沌とした沼だからこそ、
音楽という美しい蓮の花が咲く。』

---------------------

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?