見出し画像

鉄道絵本レビュー(13) すすめ ろめんでんしゃ

鉄道絵本紹介、第13弾はこちらです。

「すすめ ろめんでんしゃ」

作:のさか ゆうさく

福音館


ちょっと間が空いてしまいました。踏切絵本が続いたところで、今回は趣向を変えて、路面電車の日(
6/10)にちなみ、路面電車の本を紹介したいと思います。


路面電車の日!?


ちなみに、路面電車の日は、
1995年(平成7年)に広島市で開かれた第2回路面電車サミットで制定された記念日で、610日という日付から、6(ろく)と10(テン)で「路電」つまり「路面電車」の語呂合わせが由来だそうです。

車両のモデルは


さて、「すすめ ろめんでんしゃ」ですが、最初、表紙にドーンと描かれている真っ赤な路面電車を見て、塗色から、これは名鉄の路面電車、岐阜市内線か美濃町線かな、と思いました。車両は名鉄モ
570形が近い雰囲気ですが、ちょっと違うようです。

絵本の雰囲気からして、広島の路面電車、広島電鉄などの雰囲気も入ってるよな〜、と思って調べてみると、この車両のモデルは、広島電鉄の650形だということがわかりました。

広島電鉄650形について


広島電鉄
650形は、1942年(昭和17年)に5両製造されました。中央の扉が両開きで広いのが特徴的ですね。

当時は同社内ではまだ数少ない半鋼製の大型車両で、最新鋭の車両でしたが、1945年(昭和20年)86日の広島への原爆投下で、全車とも被爆したそうです。

しかし、5両とも修理されて復帰、その後事故廃車で1両が引退、ワンマン化や冷房化などの更新工事を経て、さらに2両が引退しましたが、今も651652号の2両が残り、ラッシュ時の輸送などに活躍しているようです。

また、被曝電車として注目される同形式は、毎年広島の原爆投下の日には、特別運行されているとのこと。

車齢80年を超える車両が、冷房化、シングアームパンタ化されて今も現役、というのは、鉄道車両ではかなり珍しいケースで、それだけ大切にされているということですよね。

国鉄型車両で例えたら、戦前型の旧型国電が、冷房化・シングルアームパンタ化されて残っていたら、かなりインパクトある姿ですよね。実際にはない姿ですが、Nゲージの旧型国電キットを改造して、模型化してみたくなります(笑)

さて、この絵本に登場するのは652号車、ワンマン化・冷房化はされていますが、集電装置はZパンタです。ワンマン化は1975年(昭和40年)、冷房化は1986年(昭和61年)、シングルアームパンタ化は、つい最近の2022年(令和4年)12月ということです。

この絵本の出版が、2017年(平成29年)なので、ざっくり1986年から30年間くらいの間の姿、ということになりますね。

物語について


物語は、赤い路面電車が、街中を走行している姿から始まります。始発から、ではなく、街中の道路の真ん中を走り、ちょうど歩道橋をくぐっているあたりから、というのが面白いですね。歩道橋に書かれている地名は、中島町
1丁目。この後に出てくる電停の名前も中島町2丁目、3丁目と続きます。

実際の広島電鉄には、中島町と付く電停はありませんが、爆心地に近く、現在平和記念公園のあるあたりが中島町という地名なので、そのあたりからとった名前かな、と推察します。

路面電車は、道路の真ん中にある細いホームの電停に停まり、乗り降りする人達が描かれ、乗り遅れた人を停車して待って、また発車する様子などもほのぼのと描かれています。

そして走り始めると、すぐ次の電停へ。そこで前を走る車両に追いつくのですが、こちらは広島電鉄700形そのままの、緑とクリームのツートンカラーの車両、713号車です。

広島電鉄700形も登場


この広島電鉄
700形は、1982年(昭和57年)に製造が開始された車両で、1977年(昭和52年)登場の都電7000形更新車にも通じた、正面窓が大きな一枚窓の、近代的な車両です。このスタイルは、同じアルナ工機という車両メーカーのオリジナルデザインらしいです。

全部で11両あるうち、713号車は、1985年(昭和60年)に4両製造された、駆動方式が吊りかけ式から、平行カルダン式に改められたグループです。この車両は、集電装置は菱形パンタグラフですが、やはり2022年にシングルアームパンタ化されました。

その713号のすぐ後ろに652号がぴったり停まる様子なども、路面電車ならではの楽しい情景です。

海辺の電停へ


その先の交差点で、線路は二手に分かれ、
713号は右へ、652号は左へと分かれて走っていきます。実際に路面電車に乗っていると、こういうところもワクワクするポイントですよね。

そして赤い路面電車652号は、海岸通りを走って、終点の新港電停に着きます。すぐ横には高速船乗り場があり、目の前に浮かぶ島に向かうと思われます。

広島電鉄にも、宇品線の終点に広島港電停があり、瀬戸内の島や松山や呉に行くフェリーや高速船と接続しています。

現在の広島港電停は、新しく、大きく立派な感じで、絵本のようなシンプルな感じではないですが、瀬戸内の穏やかな海と、その向こうに浮かぶ島の光景の絵は、そのエッセンスをうまく取り入れた、素敵な光景です。

月刊予約絵本「こどものとも年少版」として発行されたこの本は、その後単行本化は今のところされていないようで、新刊で手に入れるのは難しいようですが、図書館や古本で見かけたら、ぜひ読んでみてください。

では今日はこの辺で。ありがとうございました。

〜この絵本に登場する車両〜


広島電鉄
650652
700713

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?